進撃の「なにくそラン」
ずっと「ランニング」が苦手だった。
というか、嫌いに近い。
特に長距離。
親しい友人や奥さん(いまやランを趣味としている)に何度誘われても断ってきた。
わりと体育会系人生なので、スポーツの楽しさはよく知ってる。
でも、長距離ランとか意味わからん。何が楽しいの、って今でも思う。
そう公言してきたので、ボクの周りの人たちはボクの「ラン嫌い」をよく知っている。
そのボクが、毎日走っている。
まだ始めて1ヶ月だが、毎日3キロ走っている。
30日で通算90キロ。
なんとか続いた。そしてこれからも続くだろう。
なぜこんなに嫌いなのに続いているのか。
これからも続くと思うのか。
それは、趣味のためでも、健康のためでもないからだ。
怒りのためだ。
憤怒と言ってもいい。
もし早朝にボクが走っている姿を目撃したら、さりげなく近寄って耳をそばだててみてほしい。
「なにくそ、なにくそ」って言いながら走ってる。
そうやって、毎朝「自分の中の憤怒」を再確認する。
「負けてたまるか」と奮い立たせる。
そして前を向く。前に向かって進撃する。
ボクにとって、ランとはそういう「儀式」だ。
そして、その儀式を朝やらないと、その日いち日、ココロが持たないのである。
読んでくださっている方の中に、「なによりも食べることが好き」という方がいらっしゃると思う。
でも、確実に「ボクには負ける」と思う。
そのくらい、人生において、食は楽しみの源泉だったし、マニアックに凝っていた。
好きが高じて、食を中心とするサイトを24年やってきたし、レストランや食のガイド本も複数だしてきた。食エッセイも多く書いてきた。
特に30代40代のころの熱意は異様だったと思う。
周りの食べ好きからも呆れられるレベルだった。
そのくらい食に傾倒し、食の楽しさに頼って生きていた。
それが、去年の3月のある夜を境に奪われた(57歳9ヶ月)。
イタリアンレストランで食べた鯖が原因で、突然アニサキス・アレルギーになり、アナフィラキシーで救命病棟に緊急入院。つまり死にかけた。
それ以来、寄生虫アニサキスがいる可能性がある魚介類(ほぼ全部)が食べられなくなった。次に当たったら20分で死ぬ可能性がある、と脅された。
このことは人生の楽しみの大半を奪った。
「肉や野菜があるからいいじゃん」と慰めてくれる人もいる。
それは、足を失った人に「まだ手があるからいいじゃん」と言うようなもの。比較できるものでもないのである。
当然のようにウツの崖を落ちていく。
人生の楽しみの大半が奪われたのだ。仕方ない。
いろんな手は打ったが、崖から這い上がれない日々が続いた。
ただ、そんな中でも救いはあって、数ヶ月前、「そのアレルギー、いっしょに治してみませんか」と言ってくれる専門医に出会い、その指導のもと「ダシやエキスも含めて魚介類完全除去」にチャレンジしてみることにした。
始めてみてびっくりした。
ダシやエキスもNGとすると、日本の場合、「外食がほとんど無理になる」ということに近い。特に和食は無理である(その辺のことは闘アレ生活で書いています)。
つらい。
つらすぎる。
というか、ランチやディナーが制限されすぎて、人生がちっとも面白くない。
でも仕方ない。
アレルギーに負け続けるのではなくて、勝つためのチャレンジである。
前を向いて闘おう!
ということで、「1000日チャレンジ」と名付けてゲームっぽくし、とりあえず1000日完全除去をやってみる、ということを始めている(くわしくはこちら)。
実は、毎日のランニングもその一環なのである。
なにくそ、なにくそ、なにくそ、なにくそ。
今日も明日も、なにくそ走る。
ランニングはやっぱり嫌いだ。
ただ、嫌いだからこそ、「なにくそ!」ってなる。
嫌いなことを無理矢理続けようとするからこそ、なにくそ感が強くなる。
それが、いまのところ、効いている。
友人に「願掛けやお百度参りみたいなものですね」と言われたが、それともちょっと違う。どっちかというと、修行、苦行に近い。自分をいささか痛めつけることで、心をなんとか整えて、一日を始めることができる。
20分以上走ると飽きるので、20分以上は走らない。
ぴったり3キロのコースを見つけたので、毎朝そのルートを走ってる。
雨の日だけ休んでいいことにして、二日酔いの日も調子悪い日もとにかく走ることにしている。
いま一番怖いのはケガである。
ケガして走れなくなったら、すぐウツに落ちてしまいそうな気がする。
そのくらい、最近のボクは、朝のこの「儀式」に頼っている。
・・・こんなにランが嫌いなのに、いまやランに頼って生きている。
面白いね、人生って。
そのうちランが好きになることもあるのかな。
(このチャレンジが終わる頃には、ランに感謝し、ランを愛するようになるかもしれないな)
ということで、明日も走る。
なにくそ、なにくそ、なにくそと呟きながら、3キロ走る。
※
とても助かっているのは、1000日チャレンジで「いっしょに毎日ランをしている仲間たち」の存在。
走ったら、フェイスブックの「1000日チャレンジ」のラン・グループに投稿する(4thコミュニティ限定です。すいません)。
それがとても励みになっている。
みんな、ありがとう。
※※
こちらでRUNログをまとめています。