闘アレ生活(20) 〜1年やって数値は下がらなかったけど、まだまだ闘うことに決めた
57歳のある日、いままでアレルギーなどひとつもなかったボクが、突然アニサキス・アレルギーになった。そして、ほとんどすべての魚介類が食べられなくなった。いまは魚系のダシやエキスまで避けている。
そういう生活とはいったいどういう感じなのか、ちょっとだけリアルに知ってもらうために、ちょぼちょぼ書いてくシリーズです。
暗くなる話も多いけど、リアルに知ってもらうのが目的なので、申し訳ありませんがご理解ください。
「闘アレ生活」の過去ログや他記事はこちら。
もう散々落ちこんだ上で、ようやく少し前を向けるようになったので書いてみる。
7月17日の検査で、アレルギー値が下がらなかった。
魚介類完全除去を始めて1年。苦しみながらかなり厳密にやったのに、元の数値から下がらなかった。いやむしろ微増した。
この1年の苦闘と努力は実らなかった。
さすがに落ちこんで無気力になり、連休は寝込んでいた。
何をやってるかざっくり書くと、1年〜3年かけてアレルギー値(IgE抗体検査値)を下げて、アナフィラキシーショックの確率を下げ、その後、少しずつアレルゲンを体内に入れていって(減感作療法)、いっそ食物アレルギーを治しちまおう、という野望なのだ。
珍しいアレルギーなこともあって、症例は少ない。
仮に治るとしても10年近くかかる長い道のりだ。
だから、まだ序盤だ。
いまはアレルゲン(魚介類)を完全除去してアレルギー値を下げている段階。
ただ、序盤ではあるのだけど、普通はこれだけ完全除去していると1年目でもわりと大きく下がるものらしいのだ(主治医曰く)。
それが下がらない。
結果が出ない努力はつらい。
ゴールが延びるマラソンはつらい。
ひとくちに1年っていうけど、本当につらく、ひたすら長いのだ。
「いや、まぁ成人食物アレルギー治すなんていう超難しい野望を抱かなくても、適当につきあって生きていけばいいんじゃない?」
そういう意見ももちろんあるし、耳を傾けている。
実際、治すのを諦めるのであれば、ダシくらいは食べられると思う。魚も内臓から遠い尻尾の部分とかを注意深く食べるならなんとかなるかもしれない。
ただ、ごめん、食への偏愛が、たぶん読んでくださっている誰よりも強い。
好きが高じてレストランガイドや食紀行の本を何冊も出すのって、やっぱり一億人に数十人だろう。
ここ25年は毎年200軒は新規の店を開拓していたし、一日5ハシゴするとかも苦にならなかった。かなりの偏愛だったのだと思う。
だから、なんというか、「適当に少し食べて、withアレルギーで生きていく」というのは自分的には相当つらいと、あらためて思う。
つか、考えてもみてくださいよ。
この年齢(59歳)で、自分のソウルフードである和食が不自由になる厳しい後半生を。
鮨が奪われ、焼き魚が奪われ、天ぷらやうなぎを奪われ、アジフライを奪われ、味噌汁を奪われ、ダシを使うすべての和食を奪われ、鍋やおでんも奪われ、そばやうどんやラーメンまで奪われる。
いったいこれ以降どう生きていけばいいのか、絶望しつつ酒を飲むしかない。
いや、百歩譲って完全に奪われたわけじゃないとしても、毎回発作の恐怖と闘いながら食べないといけないし、もし発作になったらお店に多大な迷惑をかけるからそんな賭けはできない。
ま、そんなわけで、治したい。
できれば治したい。
でも、まったく数値は動かない。
下がっている人は多いのに、下がらない。
思えばいまから半年前、6ヶ月目の検査のときも下がらなかった。
読み返すと、不憫だな。
「あぁ、助けて。負けそうだ。」と嘆いている。
それから半年。
いろいろ工夫してなんとか再度立ち上がり、気持ちの上がり下がりと上手に付き合いながら、より一層の除去に取り組んだ。
コロナ禍と重なり、外出自粛の毎日だったので、除去はかなり順調だったけど、逆に変化のない毎日で食だけがアクセントになったりもするので、精神的にはかなりつらかった。
でも、この毎日も報われなかった。
さすがに堪えた。
あぁもうダメなのかな、と思った。
このことに関して、主治医でありアニサキス・アレルギーの専門医である鈴木慎太郎先生(昭和大学病院)の見解は3つ。
【医師の見解1】ざっくり言うと敵(アレルゲン)を完全除去して細胞が忘れるように持って行っているのだけど、ごく稀に、敵を忘れないタイプの細胞をもつ人がいる。佐藤はそれである可能性。つまりボクは、半永久的に数値が下がらないタイプかもしれない。
これだったら・・・仕方ないよね。
もしこれだったら、「withアレルギー」で後半生を生きていくしかない。
食が生き甲斐だったのでクオリティー・オブ・ライフ(QOL)は下がりまくるけど、諦めて生きていくしかない。
ただね、いったん「治すのは無理だった」という納得は欲しい。
だから1000日チャレンジをしているわけだ。そして1年くらい経てば数値が下がるのではないか、と、希望をもっていたわけだ。
1年では無理だったけど、あと2年やったら急に下がるかもしれない(現に1年目は下がらず2年目から下がったという人が1人いる)。
うん、まだ納得までは行ってない。
もうちょっと闘う必要がある。
【医師の見解2】他のアレルゲンの影響で下がらない可能性がある。たとえばボクに、気がつかない違うアレルギーがあって、それを日常的に食べちゃっていることでアニサキス・アレルギーの抗体も下がらない、みたいなことがよく起こるらしい。
いろんなアレルギー値(IgE値)は調べていて、スギ花粉と蛾とハウスダストが多少高いことはわかった(ちなみに花粉症はない)。
多少だけどね。でも、数値的には高めだ。
これらも含めて、何かのアレルギーがあって、それを気づかずに体内に入れてしまっている可能性がある、ということだ。
ここは可能性をひとつずつ除去していくしかないけど、でも、体内に入れている食物のすべてを調べるのは無理。代表的なアレルゲンは調べているけど、すべては無理だ。
んー、とりあえず、スギ花粉の数値を下げることと(シダキュア)、家を隅々までプロに掃除してもらうことかな。
ホコリとかエアコンの送風口とか網戸とか、蛾やハウスダストの温床になっている部分をちゃんとプロに頼んできれいにしてもらおうと思う。
とにかく可能性をひとつずつ潰していきたい。
【医師の見解3】厳密に避けているとは言え、なにかしら食べちゃっている可能性。気がつかないで魚介エキスなどを食べちゃっている可能性は除去できない。
いやいやそれはない・・・、と最初は思った。
こんだけ意識して除去してるのに?って。
ただ、例えばボクは魚介類が食べられないことでDHA・EPAが足りなくなる。だからそれを錠剤で補っているのだけど、精製が不完全なメーカーのものは数ミクロン単位でアレルゲンが含まれちゃっている可能性があると聞いた。
では、ということで、DHA・EPAは薬として処方してもらうことにした。
これは厳密な精製がされているものだ。
これに類することが他にもないとは限らない。
現に、ボクより徹底して完全除去している人が「アニサキス・アレルギー友の会」にいて、その人の除去ぶりは徹底しているものだった。
そして、実質2年でIgEの数値をレベル0まで下げている。つまり結果を出している。
その人は、ボクが「まぁそこまではいいだろう」と妥協していた部分までちゃんと除去していた。
具体的に言うと、まず、コンタミ(コンタミネーション:混入)を徹底的に避けるため、料理店で「魚に使用したまな板や包丁や油などを他の料理に使っていないかどうかを厳しくチェックする」とかいうことまでしている。
とんかつ屋に行っても、イカやエビを同じ油で揚げている店だとわかったら帰るそうだ。
あー、そこまではしてなかったなぁ。
というか、「アレルギーを理解してくれる信頼できるシェフがいる店しかいかない」そうである。
・・・すごいなぁ。
というか、もう友人とのきまぐれな外食はほぼ無理だな。
また、商品においても、食品表示で「たんぱく加水分解物」「アミノ酸等」の表示がついていたら避けていたそうだ(「アミノ酸等」はNGで、「アミノ酸」はOK)。
ボクは食品表示で魚由来の「だし」や「エキス」は厳密に避けていたけど、「たんぱく加水分解物」「アミノ酸等」は「ま、いっか」と許していた。
うー・・・そうか、その差か。
でも、そうなると、もうコンビニで食べられるものがほとんどないなw
つか、お菓子も相当危なくなる(おせんべいとかね)。
要するにその方は「料理人やメーカーすべてを信用するということをせず、ちゃんと疑った」ということだ。
上には上がいる。
治らないなら仕方ないけど、他の可能性を消すためにも、もうちょっとがんばろう。
うん、コンタミと、「たんぱく加水分解物」「アミノ酸等」ね。
今日から厳密に気をつける。
鈴木先生の見解は以上3つだけど、ボクとしてはあと2つ、疑っている。
【佐藤個人の見解4】大人ぜんそくに引っ張られた可能性。
【佐藤個人の見解5】やけ酒を飲み過ぎている。
5年くらい前から「ぜんそく」になった。
いわゆる「大人ぜんそく」というやつだ。
ま、風邪を引くと咳が1ヶ月くらい止まらなくなる程度のものだけど、ぜんそくとアレルギーは相性がよく、ぜんそくになるとIgE値は上がりがちらしい。これ、まずハウスダストの徹底除去から始めて、治して行こう。
それと、酒。
ま、ひと言でいうと、飲まずにやってられるか! ってくらいはこのアレルギー、つらいのですよ。
最大の趣味と生き甲斐を奪われたからね。
(肉があるじゃん、野菜はどうだ、とか言うなかれ。足を奪われた人に「まだ手があるからいいじゃん」というようなものなのだ)
・・・でも、酒はあかんな。
結局、キーポイントは「体調」なのだ。
体調を整えず、ストレスを減らさず、腸内細菌を整えず、健康状態をキープせずに「アレルギーを治したい」とか、虫の良いこと言ってんじゃねえ、ってことだ。
毎日3キロ、走ってはいるけどね(奇跡的に1年以上続いてる)。
でも、最善の体調にもっていっているか、と言われるとNOである。
ま、ストレスも大きな要因だから、断酒することはしないけど、酒は減らさないと体調は万全にはならないだろう。
しかも、酒を飲むと格段に睡眠の質が落ちることも実感値でよくわかってきている。
外飲みはともかく、家飲みはやめよう。
うん、そうしよう。
コロナ禍のいま、そうするだけで、飲酒は週イチくらいになる。
長々とだらだら書いてきたけど、こうして書いてくるとアタマが多少整理されてくる。
つまりオレはまだ闘いたいんだな。
上でも書いたけど、「適当に食べて、withアレルギーで生きていく」というのは自分的には最後の選択肢、なのだろうと思う。
魚が食べられないこと自体よりも、食の自由度がなくなっている今が死ぬほどイヤなのだ。
自由に食べたい。
自由に食べながら旅したい。
旅しながら本とか書きたい。
鮨紀行の本とか、ポルトガルの食の本とか、南仏の食の本とか、ニューヨークレストランガイドとか、大人の割烹紀行とか、二泊三日食紀行の続編とか、いろんな食紀行を書く60代を夢見ていたくらいだし、わりと適任だったと思うんだけどな。。。
ま、仕方ない。
数値は下がらなかったけど。
1年やってまったく数値が下がらないとは思ってもみなかったので、ゴールがないウルトラマラソンを走っている感じになるけど。
これからも下がらない可能性は残るけど。
でも、治すために闘うならなんとかギリギリ前を向ける。
だからまだ闘います。
ちょっと寝込んだけど、ようやく起きれた。
ということで、ひとまず近況報告でした。
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。