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そっちの方がいい人生


2月1日の朝は、毎年、なんだかせつない気持ちになる。

この日、特に首都圏では、多くの中学や高校で「入試テスト」が行われる。

子どもたちが、「この学校に行けたらいいな、行きたいな」という強い希望と、「でも……ダメかもしれないな、ダメだったらどうしよう……」という大きな不安をもって、とぼとぼと受験会場に向かう朝だ。

その小さな胸の内を想像するだけで、せつなくてたまらなくなる。


10年ちょっと前。
ボクも受験生の親だった。

娘の中学受験の朝、ボクは彼女にこう言って送り出した。

もし受かったら「そっちの方がいい人生」。もし落ちたら「そっちの方がいい人生」。


その瞬間は「大きな大きな人生の節目」と思うと思う。
今日のテストで、大きく人生が変わってしまう、と思うと思う。

でも、この歳になり、遠く振り返ってわかるのは、「実はあまり関係ないよ」ということ。

いや、合格不合格で人生自体は物理的に変わるのだけど、でも、「どっちがいい人生か」には、あまり関係がない。

行きたかった学校。
通らなかった会社。
叶わなかった恋愛。

あの時、あっち側にもし行けてたら……
と、今でも引きずっている大人は多い。

ボクも、あの時もし、と思うことがないわけではない。

ただ、あの時もしあっちに行っていたら、会えなかった人、できなかったことが本当にたくさんある。

あっちに行かなかったおかげで出会えたヒトやコトが、本当にいっぱいある。

今はつくづく思うんだ。
こっちで良かったな、って。


だからこそ思う。

神様がいるとしたら、神様は、必ず、キミの人生にとっての「いい方」を選択してくれる。

そっちの方向に、楽しく面白い人生が、必ず待っている。

それだけは確かなので、とりあえず、キミの全力を神様に届けてくるといいよ。


どうか、気をつけて。
いってらっしゃい。


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さとなお(佐藤尚之)
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。