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バー開業顛末記④「ライフワーク & DIE WITH ZERO」

※ バー開業顛末記を最初から読みたい方はこちらから。


さて、お金の話である。

考えないといけないのはざっと2種類。

初期費用・・・賃貸の頭金(数百万)と内装工事費用(数百万)。
運営費用・・・家賃(毎月数十万)と諸経費。

これらをどう考えるか、だ。


すでにボクの中でこのバーは「ライフワーク」とか「生き方」くらい大きなことになりつつあった。

まぁ今後バーを死ぬまでやり続けるかどうかは正直わからない。
でも、「ちょっとお店を始めてみましたー」的なノリでは決してない。「生き方」を変えて「ライフワーク」としてしっかり向き合うべきものになっていた。

転職でも副業でも兼業でもない。
セカンドキャリアとかデュアルキャリアとかパラレルキャリア(複業)とかでもない。

というか本業のファンベースはとても大切にしている。
それを脇に置くつもりもまったくない。

何というか、うまく言えないけど、友人と会って話すことを人生の『ド真ん中』に置いていこう、という決意に近い。


そしてそれは前々回の「トーク・ライフ・バランス」で書いたように、「幸せな人生」に直結するとても大切な鍵だ。だからこそ「ライフワーク」や「生き方」になり得る。

ボクは外食や旅を失ってそれができないので、そういう場所を作る。その場所はきっとボクの友人知人同士をもつなぎ、彼ら彼女ら同士が会って話す場所にもなるだろう。

そういう意味でその場所は友人知人の「幸せな人生」にも直結するかもしれない。それはボクにとって大きなやり甲斐と生き甲斐をもたらすだろう

そのような人生的に超重要な場所を作り、そこに立つ。
ビジネス目的でも遊び目的でもなく、人生的に超重要な場所と位置づけて、そこに立つ。
これはもう「ライフワーク」とか「生き方」と呼んでもいいのではないだろうか。

となると。
お金についての考え方も変わってくる

「ライフワーク」とか「生き方」であるなら、そりゃお金はこのためにこそ「活かす」のだ。そういう人生を生きるための対価としてお金を「有効に使う」のである。

たとえば「人道支援」を「ライフワーク」にするならそこでの儲けなんかより支援のためにお金をどう有効に使うかを考えるだろう。たとえば「晴耕雨読」という「生き方」を選ぶならそこでの稼ぎよりそういう環境作りや本代のためにお金をどう有効に使うかを考えるだろう。

もちろん生きていかなければいけないから稼ぐ必要はある。「支援活動のマネタイズ」だったり「晴れたら耕す」だったりは必要だ。そうしないとその「ライフワーク」は実らないし、その「生き方」をキープできない。

だからこのバーも稼がないといけない。
でも、「お店で稼ぐ」のを目的とせず、「ここにこそお金を使うぞ」という発想の転換が必要だ。

そう、このためにお金を稼いできたんだ!
いまこそお金を使うんだ!


折しも『DIE WITH ZERO』という本を読んだばかりだった。

↑ この本のチラシ的なもの


この本を読んでボクはシンプルに「お金を残しても(遺しても)仕方がない。使い切って死のう」という思いを新たにしていた。

もちろん一人娘にはある程度遺すけど、ボクが死ぬころにお金を渡すより(ボクが90歳で死ぬなら娘は57歳だ)、もっと若くて貧乏でお金を必要としているうちに上手に渡していきたい(譲与にならないようにね)。

そういうことも含めて、この本を妻にも渡して読んでもらった。
妻も納得し「使い切って死のう」「使うときは使おう」と賛同してくれた。

※ 妻の人生にとって重要な要素であるチーズ活動やトレラン活動について、彼女はすでにDIE WITH ZERO的にお金を使っていた。そのことも理解をスムーズにした。


たとえば初期費用に多額のお金はかかるだろうが、そこは「必要なお金であるなら迷わず使おう」ということだ。

もちろん初期費用を取り戻せるならそれに越したことはない。
でも、取り戻すために汲々として稼ぐのではなく、「取り戻せなくても、必要なら使っちゃおう!」ということだ。取り戻せたらラッキーくらいに考えよう。



ちなみに、佐藤家の貯金額は決して潤沢ではない。
というか、わりと乏しい。

その理由を少しだけ話すと。
ボクは2011年の東日本大震災時に「震災支援団体『助けあいジャパン』」を立ち上げて支援に動き回っていた。


そのあといろいろあって、団体の支援活動で大きな借金ができ、共同代表として個人的にそれを背負ってしまっていた。
当初は億単位。もうどうにもならないところまで追い詰められた。
↓ここに少しだけ書いている。


まぁ後ろ暗いことが何もない借金だったので、裁判で勝ったりして(←裁判ってしんどかった)ある程度減らせたのだけど、いろんな事情があって最終的にマンションが軽く買えるくらいの金額を個人的に肩代わりしたのだった(命の恩人的な仲間達の協力のおかげで億単位からはかなり減った)。

減ったとはいえ、これは生活に重くのしかかった。
貯金は枯渇。バーの開業資金まで出すと序盤で底をつく。まあ日本政策金融公庫で借りる手もあるとは思っていたけど、馴れない水商売での借金はそこそこ重い。

でも、DIE WITH ZERO。
まずは始めよう。お金を使って突っ走ってみよう。足りなくなったらそのとき考えよう。

というか、厄介な食物アレルギーになってほとんどウツの引きこもり状態だったので、妻も娘もさすがに心配してくれていたのかもしれない。快く「お金を使うこと」に賛成してくれたのであった。


それに加えて。
「バーに立つようになると外食と旅が物理的にできなくなる」というのもお金的には大きなことだった。

一回目の「会いに行けないから、会いに来て」の回で、こんなことを書いた。

カウンターに毎晩のように立てば、外食に行くことが「物理的に無理」になる。店をほったらかしにして旅に行くことも「経営的に暴挙」となる。

外食に行けなくなる。
旅に行かなくなる。
・・・ナイスだなぁ。

あんなに愛した外食にも旅にも行かなくなることが「ナイス」とは、なかなかに悲しい事態だなぁとあらためて思うけど。

とはいえ、つまり、いままで外食や旅に使っていたそれなりの金額を使わなくなるわけだ。その分のお金が浮くわけである。

ここ数年の個人会社の決算書の「交際費」や「交通費」を見てみると、これが意外とバカにならない金額だった。

年齢や立場的に「後輩に奢る」ことが日常だったボクは、アレルギー前(そしてコロナ禍前)、外食やタクシー代にかなりの金額を使っていたのである。まぁ食は人生最大の趣味だったし、いろんな先輩からたくさん奢ってもらった青春時代を過ごしたボクとしては「順ぐり」の役割とも思っていた。

そして頻繁に「食べ旅」にも行っていて、それはそれでかなりお金がかかっていたのである。

そうか、その分のお金を毎月バーに回せると考えると、バーの家賃や諸経費の支払もかなり楽になるのではないだろうか。。。


そんなこんなで、家賃の相場もまだわかっていない段階ではあったが、自分的には「お金問題」は以下のように整理できてきた。

・初期費用は痛いけど、取り返そうと必死になるのはやめて、いま、ここにこそ、お金を活かそう! 使おう!
・貯金は尽きているけどDIE WITH ZEROで行こう!
・外食や旅に行かない分のお金をこちらに回せば、運営資金もわりと楽になるのではないか。
・本業は本業で他にあるので、そちらの収入を生活費などに回して、バーは収支トントンくらいを目指せばいいのではないか。
・ワンオペでやるつもりなので、人件費もかからないし、意外となんとかなるのではないか。


・・・まぁでも、甘いかもなぁ。
飲食店経営はそんなに甘いものではないことはいろいろ読んで知っている。

そのうえ、大阪万博や能登大地震の影響で、資材高騰&人手不足の荒波に飲み込まれることになるのだけど、この時点ではまだそんなことはわかっていない。

だがしかし!
ライフワークであり、生き方であり、DIE WITH ZEROなのだ。
とりあえず進んでみよう。
きっと楽しいこともいっぱいある。


まずは物件だ。
つか、ボクはいったい、どんな店をどういう立地に作りたいのだろう。


(続く)

(次回はこちら↓から)


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さとなお(佐藤尚之)
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。