NHKで秀逸な「バレエ学校ドキュメンタリー」を観て、またぞろバレエにハマりそうな予感
実はバレエが好きでして。
バレーボールのバレー(volley)じゃなくて、踊るほうのバレエ(ballet)ね。
たとえば、「バレエを観るためだけにモスクワに行く」なんてことを過去に3回くらいはやっている(ん?4回かな)。
そして、ボリショイ・バレエ団の日本公演時にはパンフレットにコラムを寄稿したこともある。
あ、ジャパン・アーツのFBページに「さとなおの『バレクラ』」と題してバレエ連載していたこともある。
観る専門だけど、そのくらいはバレエ好きだし、わりと凝った。
で、バレエ観劇の魅力について、個人サイトにくり返し書いてきたこともあって、「バレエの男性観客を多少は増やしたかも」なんて自負も少しある。
そこまで好きだった大きな理由は、親友の岩田守弘くんがロシアのボリショイ・バレエ団の第一ソリストとして現役で踊っていたこと。
岩田くんとのことは、そのうちnoteにも書いていきたいと思っているけど、野球で言ったら大リーグに孤独に挑戦したヒーロー、野茂英雄みたいな人。
彼の本場ロシアでの挑戦を追っているうちに、本場のバレエに触れまくり、圧倒されてどんどんハマっていった、というのが好きになった理由だった。
ただ、岩田くんがボリショイを卒業して、ロシアのバレエ団の芸術監督になったころから、追っかける対象がなくなったこともあり、(バレエ自体は相変わらず大好きなんだけど)少しずつバレエ観劇頻度が下がっていった。
※ 岩田くんのストーリーは是非こちらを(↓)
いまでは、年に1〜2回、ボリショイやらマリインスキーやらオペラ座やらロイヤルやらが来日したときだけ、ちらりと観に行く、という程度になってしまった。
大好きだったグラチョーワとかアナニアシヴィリとかロパートキナとかギエムとかが出なくなったのも大きいかな・・・
相変わらずチャイコフスキーのバレエ音楽とかはスマホで聴いてたりするんだけど、でも、頻度減っちゃったなぁ、とは寂しがっていたのである。
そんな先週、岩田くんとも一緒に会ったことがある友人からこんなメッセージが来た。
さとなおさーん、先週の9/7(土)に放送されたコレ、もしご覧になってなかったら9/16に再放送あるのでぜひ見てください!
岩田さんから伺ったお話をすごーく思い出しました。
その番組がこれ。
動画の予告編や視聴者からの感想も載ってるので、リンク先を見てみて。
(再放送が明日、9/16(祝)の午後3時!)
「おお、そんなのやってたのか!」って思った。
教えてくれてありがとう!
こんな見逃しもあろうかと、パナソニックの全録機を買っておいた我が家である。見逃した放映も2週間分はすべて自動に録ってある。
で、さっそくそれを、妻とふたりで観たですよ。
いやぁ・・・これがなんと面白かったことか!
この番組、題して『BS1スペシャル▽バレエの王子になる!“世界最高峰”ロシア・バレエ学校の青春』。
ロシアの最高峰のバレエ学校のひとつ、サンクトペテルブルグにある「ワガノワ・バレエアカデミー」の生徒たちが、苦しみながら国家試験を受け(ロシアではバレエダンサーは国家公務員である)、苦しみながら就職オーディションを受け(ボリショイに入るにもマリインスキーに入るにもオーディションの一発勝負)、苦しみながら卒業公演をする様子を描いたもの。
ボクは2003年に、岩田くんといっしょに彼の母校、モスクワの「ボリショイ・バレエアカデミー」に見学に行ったことがある。
そしてレッスンの一部始終とか見せてもらい、しかも学校での毎日の楽しさとか厳しさや孤独さとかも岩田くんから直に聞いていたこともあり、自分のことのようにのめり込んで観てしまった。
※
ここからの3枚はそのとき撮った写真。
これは中学生くらいのクラスだろうか。
岩田くんの恩師でもあるボンダレンコ先生も写ってる(アレクサンドル・イヴァーノヴィチ・ボンダレンコ。Aleksandr Ivanovich Bondarenko)。
ボンダレンコ先生とは来日時にも何度かお会いしたりしたのだけど、残念ながらこの6年後、2009年5月13日にお亡くなりになってしまった。
で、番組の話の戻ると、なんとあのツィスカリーゼがワガノワの校長をやっていることにまず驚いた。
ボリショイ・バレエアカデミー出身なんだけどな。
それなのに、そうか、ワガノワ・バレエアカデミーの校長か・・・なんかもっと派閥っぽく、ワガノワ出身者しかなれないと思っていたけど、そうでもなくなったのかな・・・
なんかちょっと意外だったのだ。
※※
次の4枚も2003年に撮ったもの。
ボリショイ・バレエアカデミー出身のスターたちのパネルが学校の廊下に飾ってあり、1枚目がツィスカリーゼ。
そう、ボリショイ学校出身で、つまりワガノワ出身じゃないのです。
2枚目は言わずと知れたアナニアシヴィリ。3枚目はなんか好きだったグラチョーワ。
で、4枚目は戯れに撮ったもの。岩田さんを先駆者として、その後日本人も多く通っていて、こんな掲示もされていたよ、という資料として。
で、番組に戻ると、そのツィスカリーゼ(現校長)が、相変わらずのプライドの高さで、
「背が低い人はダメ」(まぁ岩田くんもそれで悩んだからなぁ)
「ボリショイとマリインスキーとオペラ座以外はバレエの裏街道」(え? ロイヤルは?)
「彼はものにならない」
「怠け者め」
とか、ちょっとオバチャンみたいな雰囲気で次々と高飛車なことを言いまくるのが、ツィスカリーゼ現役時代の超カッコイイ舞台を何度か観たボクにはなんか面白くて面白くて。
もちろん彼も、そんな嫌みなことしか言わないわけじゃない。
次のような名言も残す。
「この世界で奇跡は起きない!
才能もコネクションも何の意味もない。
努力しか踊り続ける術はない」
「観客が舞台で見るのは光り輝く泡
ダンサーはその泡しか見せてはいけない
泡の中には血と汗と涙が浮かぶ
努力 努力 努力
努力せねば、踊り続けることはできない」
あの、才能と容姿だけでやっていたように見えていたツィスカリーゼも、その背景にはすごい努力があったんだなぁ、と、今更ながらに思ったり。
そして、ドキュメンタリーとしてカメラに追われる4人の男子生徒。
彼ら4人の誰かはそのうちスターになるかもしれないので、備忘録として名前とかその後のことを書きとめておこう。
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ここからはネタバレになるので、再放送を観ようと思っている人は、見終わってから読んでください。
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マイケル・バルキジヤ(愛称ミーシャ) Michael Barkidjija(Misha)
アメリカ出身で、成績はトップ。
ツィスカリーゼお気に入りで、彼をして「10年に1人の逸材」と言わしめている。最後にはマリインスキー・バレエ団に受かる。
この子は数年で出てくるかもね・・・
大澤・ホロウィッツ・有論(アロン) Aaron Osawa-Horowitz
父はアメリカ人で母は日本人。イギリス育ち。
背が低いのでプリンシパルにはなれないかもしれない中、努力で勝ち残る苦労人キャラ。日本人の血を引いているだけに、番組でもわりと前のめりに紹介されている。叔父さんが第46代横綱朝潮太郎。彼もマリインスキー・バレエ団に受かる。
キリル・ソコロフスキー Kirill Sokolovski
アルバイトにモデルをやるくらいスタイルも顔も理想的。
そして圧倒的に努力不足の甘えちゃんなんだけど、たぶんそのスタイルのおかげで、なんと大方の予想を覆し、すんなりボリショイ・バレエ団に受かっちゃう。
いやー、この子はダメなんだけど(ツィスカリーゼにも卒業公演から外され、「怠け者め」と言い捨てられる)、ボリショイで大化けしないとも限らない。でもきっとダメなんだろうな・・・
マルコ・ユーセラ Marko Juusela
フィンランド出身で、ツィスカリーゼに「フィンランドのバレエ団から問い合わせが来ているが、そんなとこ行ったらバレエ界の裏街道だ」と言われる感じの役w
学校での成績はミーシャに次ぐ二番なんだけど、就職オーディションでは苦戦する。でも、なんとか、マリインスキーに入団できた。パチパチ。
この4人の奮闘を描いていくドキュメンタリーなんだけど、さすがNHKだけあって上手に構成されているし、イギリスやモスクワにも丁寧にロケしているし、とてもいい出来だった。
というか、青田刈りみたいに「この中からスターが出てくるかもしれない」って思いながら見るのっておもしろいね。
ミーシャ(マイケル・バルキジア)はなんとなく数年で頭角を現しそうだけど、アロンも楽しみだなぁ・・・
別の意味で、キリルやマルコも楽しみ。
なんかキリルが大化けしたら、すごいドラマだなぁ、と思う。
彼も最後には「必死にやる」と言っていた。
ツィスカリーゼがあからさまに冷たくした意図が伝わったのだと思う。意識を変えたらあの容姿だ、きっと成功するだろう。
それにしても。
ぶっちゃけちゃうと、結局、トップのほうに行くと、あとは「容姿」なんだよね。バレエの世界。夢を見せる仕事だからな。
そういう中で、身長166cmという圧倒的な小ささ、そして圧倒的に不利な東洋人な風貌なのに、バレエ界のトップに君臨するボリショイで第一ソリストとして活躍していた「岩田守弘」という男。
改めて、すごいなぁ、と。
しかもいまほど東洋人がバレエ界で活躍していないころにトライしてたから、東洋人差別も酷かったころだ。
本当にパイオニアだったのだなぁ、と、その生徒だったころを想像して泣きそうになりながら、この秀逸なドキュメンタリーを見終わったのでした。
みなさん、明日16日午後3時、BS1で再放送ありますよ!
録画必!
※
ちなみに、モスクワにバレエを観に通ったころの貴重な写真とか山ほどあるので、またnoteに書きますね。