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オフコース『FAIRWAY』

人生に欠かせないオールタイムベストな音楽をいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。


『ワインの匂い』にするか『SELECTION 1973-1978』にするか、それともこの『FAIRWAY』にするか迷ったんだけど、やっぱりこれに。

コースを外れている人(Off Course)がフェアウェイ(ゴルフで言うならコース中央の芝が刈ってある部分のこと)なんていうアルバム出すのってなんか変だよな、というのが第一印象だけど、でもオフコース中期の中では傑作の部類に入ると思う。

『SELECTION 1973-1978』というベストアルバムで初期を締めくくって、その次の『FAIRWAY』から3人(清水仁・大間ジロー・松尾一彦)を表だって演奏者に加えて、この次のアルバム『Three & Two』で正式にオフコースは5人になった。

そういう意味では小田和正と鈴木康博が2人でやっていた最後のアルバムになるんだよね、これ。

なんというか、マイナー臭が抜けてメジャーな感じになってきたのもこの頃から。上昇気流に乗り出した高揚感がOff CourseをしてFAIRWAYという題名をつけさせたのかもしれない。

ボクは高校2年くらいから(「SELECTION 1973-1978」が出た頃から)親しい友達の影響でオフコースを聴き始めたんだけど、どこかで“四畳半哲学”を感じさせた他のフォークやニューミュージックに比べて、透明感というか、生活臭があまりにないそのサウンドにびっくらこき、同時に拒絶感も持ったのを覚えている。

カトンボみたいな歌、歌ってんじゃねぇ!(当時の印象ですw)


でも、親友がひたすらファンでずっと聴き続けているものだから、だんだん影響されて・・・。

聴きこんでいくと、例えばブレッド&バターが持っていた乾いた透明感とはまた違う、彼らのウェットさに気がついていくわけです。

で、そこがだんだん好きになっていく・・・。


誤解を恐れずに言えば、(特にあのころの)小田和正って嫉妬深いよね。

嫉妬の風が胸にザーと吹くときの気持ちを歌わせたら天下一品だ。
その湿気が多い肌触り。
声はさわやかなのに、歌詞はすごく湿っている。

また、大林宣彦監督が描くような「時が過ぎゆくことへの愛しさ」も彼の重要主題で、小田和正はそれを季節で表現するのが本当にうまい。
『僕の贈り物』『夏の終わり』『秋の気配』・・・この辺もまたさわやかなのにじっとりしている。

そんなこんなで、透明感あるサウンドの裏にある「意外なほどのじっとりさ」がわかってきた頃には、ボクも立派なオフコース・ファンになっていたわけです。


で、この『FAIRWAY』がまた本当にいいんだ。

『あなたのすべて』から始まって、『美しい思い出に』『いつもふたり』とマイナーなようなメジャーなような曖昧な魅力を持つ曲が続いて『夢』『この空にはばたく前に』。
そしてB面は名曲『夏の終わり』から『季節は流れて』『失恋のすすめ』、そして名曲『去っていった友へ』。

ラストは『心さみしい人よ』が終わって約15秒間ブレイクがあった後突然始まる『いつもいつも』。
これはクレジットすらされていないから、最初聴いたときはびっくりした。『アビーロード』のラストの『HER MAJESTY』をちょっと思い出す人も多いかもしれない。

次のアルバム『Three & Two』からはちょっとロックが入ってきて透明感が少し濁るんだけど(入ってきた3人がロック畑だったこともある)、ボクはこの『Three & Two』以降のオフコースにあまり馴染めず、『FAIRWAY』以前のアルバム、つまり『JUNKTION』『SONG IS LOVE』『ワインの匂い』『秋ゆく街で』『この道をゆけば』『僕の贈りもの』と、さかのぼって聴いていった。

そういう意味では、ボクにとってオフコースはいつまでも小田&鈴木のデュオなんですね(正確に言うと一番初期は地主道夫という人がいて3人だったけど)。

正式に5人になった『Three & Two』からはなんか違うバンドみたいな感じ。1982年に鈴木康博が脱退した時点で興味を失い、1989年に解散したあとは、ほとんど聴いていない。

小田和正がソロになってからのライブは2回ほど行ったけど(そしてとても楽しかったけど)、でもなんかもう別物というか、ボクの中ではちょっと違うアーティストみたいな位置づけになっているなぁ。

ということで、ボクはいまも「昔のオフコース」ばっかり聴いている。

この『FAIRWAY』はその中でも何回聴いたかわからない座右の1枚、ということです。


さて、最後に、極私的ベストテン。

好きな曲はたくさんあるけれど、やっぱり初期〜中期が多いかな。
いろんな思い出と結びついているしね。

それと、小田和正のものばっかりになってしまった。鈴木康博のも好きなのいろいろあるんだけど。


オフコース・ソングス「極私的」ベストテン

1. 『夏の終わり』
2. 『あなたのすべて』
3. 『やさしさにさようなら』
4. 『こころは気紛れ』
5. 『ワインの匂い』
6. 『秋の気配』
7. 『愛を止めないで』
8. 『いつもいつも』
9. 『めぐる季節』
10. 『Yes-No』

なんというか、マイナーな匂いがしたころのオフコースが好きなんだなぁ、と改めて思う。

曲の出来としては、『Yes-No』や『愛を止めないで』や『秋の気配』が完成度高いと思うんだけど、ちょっと上位には来ない感じ。

わかってくれる人、いますよね? ね?


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