
ニーナ・シモン 『ソウルの世界 〜ニーナとピアノ』
人生に欠かせないオールタイムベスト音楽をいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。
圧倒的名盤としかいいようがない。
声とピアノしかないシンプルなアルバム。
ニーナ・シモンが、ピアノを弾き語りながら、心を突き刺す銛(もり)のような強烈な声で歌いまくるだけ(一部多重録音)。
でも、本当に名盤だ。
この名盤に汚点があるとしたら、このダサイ邦題のみ。
原題は「Nina Simone and Piano!」
そのままでいいじゃん!
ニーナの声とピアノ、それだけで構成されているところが素晴らしいんだから、そのままでいい。
なぜ「ソウルの世界」とか余計な言葉を・・・。
「ソウル」っぽいテイストが溢れているのは確か。
ソウルというか黒人のプロテスト・ソングみたいな力強さで満ちている。
とはいえ、そういう方向にイメージを引っ張るのはやめてほしい。
ニーナ・シモン自身、ソウルなんて方向はひと言も言っていない。
あえていえば「本来の意味のフォーク」だろうか。
結局、私は“ジャズのようなものを歌う歌手”として分類されることになった。私にとって“ジャズ”とは考え方や生き方のことだった。あるいは歩き方、話し方、考え方、行動のとり方など、アメリカの黒人がすることすべてを意味した。つまり“ジャズ”は黒人全体を見渡した場合のある一面であり、その点では黒人である私をジャズ・シンガーと呼んでも問題ないと思う。だが、ほかのあらゆる点で私はジャズ・ミュージシャンではなかった。
(中略)
どうしても何かのジャンルに分けられなければならないのなら、フォーク歌手とされるべきだったと思う。私の音楽にはジャズよりフォークやブルースの要素が多かったからだ。
ーーーー「ニーナ・シモン自伝〜ひとりぼっちの闘い」より
※彼女は“肌が黒い”ということを生涯意識し闘ってきた人なんだけど、ここらへんの話は是非「ニーナ・シモン自伝」を読んでください。
まぁジャンルなんてどうでもいいや。
とにかく彼女の歌は心にストレートに入ってくる。
ボクは英語は不得意なので、何歌っているのかそのままでは聞き取れない。
そんなボクの心にも、そのまんまググっと入ってくる。銛のように突き刺さってくる。
つまり、言葉の力ではなく、「歌のチカラ」で、耳を素通りして心まで届いてくる。
こういうボーカルは他に知らない。
もちろん、たとえば女性ボーカルなら、ダイナ・ワシントンとか、ビリー・ホリデイとか、カーメン・マクレエとか、エラ・フィッツジェラルドとか、すごい歌唱力でぐいぐい来る歌手たちはいる。
でも、彼女らは脳を経由する。
心に銛がズドンと刺さってくるのは、やっぱりニーナだなぁ。
ちなみにこの人、もともとはピアニストである。
ピアノの神童としてクラシックの教育を受け、ジュリアード音楽院にも通っていたらしい。
で、ピアノ弾きに比べて歌手の方が給料が高いのに惹かれ、クラブで歌ってみた。
そしたらいきなり大人気を博し、それ以来基本的にはボーカリストで来た、という人生の流れである。
だから、ピアノの安定感とテクニックがハンパない。
その辺も、このアルバムの名盤度を引き上げているかもしれない。
※
西加奈子の名作『サラバ!』を読んでたら、思いもかけずニーナ・シモンに再会した。
作中で、ニーナの『Feelin' Good』が、かなり重要な場面で、何度も取り上げられているのである(この曲は他のアルバムに収録)。
泣けた。
というか、ニーナ・シモンを出してくる西加奈子に泣けた。
↓ここで試聴できるので、聴いてみて!
(amazon musicのヒトはそのまま聴ける)
※※
このアルバムのジャケットのイラストのピアノをよく見てください。
そしてジャケットのタイトル文字をよく見てください。
文字になっているのですね。
面白いね。
いいなと思ったら応援しよう!
