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ルー・ロウルズ 『アト・ラスト』

人生に欠かせないオールタイムベスト音楽をいろいろと紹介していきたいと思います。ジャズ、クラシック、ロック、ポップス、歌謡曲、フォーク、J-Popなど、脈絡なくいろいろと。


本当にこのアルバムが好きで好きで。
とにかくこればっかり聴いていた日々がボクにはあった。

初めてこれと出会ったのは何年くらい前かなぁ。
かれこれ30年くらい前だろうか。

友人からこのCDを教えてもらい、格好いいジャケットも相まってすぐ買って、一聴すぐ気に入った。

本当に気に入って、しばらくは車の中でも家の中でもこればっかり聴いていたなぁ。

当時の超行きつけのBARだった苦楽園口(西宮)の「THE BARNS」にも、このCDを録音したテープを渡して、「ボクが来たらこのテープをかけてね」なんてワガママを言ったりしていた。


そのくらい好きだったんだけど、周りの人たちは意外と冷淡だった。

「ルー・ロウルズ? 誰よそれ」って感じ。

というか!
ルー・ロウルズ、日本で無名すぎ!

いいですか?
1967年の「ダウン・ビート」読者人気投票で、フランク・シナトラを抜いて第1位だったんだよ! すごくない?

そのうえ、1966年と1971年にはグラミー賞の最優秀R&B男性歌唱賞をとっている!



・・・まぁいいや。

そんな、有名とか無名とかどうでもいいから、タイトル曲の「At Last」だけでもとりあえず聴いてみて。お願いだから。

名曲「At Last」はいろんな歌手が録音してるけど、ボクは、ルー・ロウルズのこのバージョンが、アレンジも含めて一番好き。
ダイアン・リーヴスもいい感じに絡んでる。


・・・ね? 良いでしょ?
(もうここまで来ると完全に押しつけw)

憂いを秘めたリチャード・ティーのピアノに、ルー・ロウルズの低音が渋くかぶさってくる冒頭部だけで、ボクなんかバーボン5杯くらい飲めるw


つか、とにかく声がいい。

このアルバムを出したのは1989年だから、そのときすでに彼は56歳。
渋みを増して、実に味わい深いいい声になっている。
若いときの数倍好きな声。

特に、圧倒的声量に裏打ちされた余裕ある低音。
張り上げても輪郭がまったくボケないその低音。

丸いのに角がある。
たとえばビリー・エクスタインの低音は丸すぎる。
それに比べると、彼の低音は角がある。そしてとても柔らかい。

一方の高音は、ちょっとカーメン・マクレエにあるような金属の響き。
でも、イヤな金属質ではなくて、これまた丸みを基調とする柔らかい響き。

なんだろう、このバランス。
彼の高音を聴き慣れると、フランク・シナトラやナット・キング・コールが砂糖菓子のように甘く感じられてしまう。

そういう低音域と高音域を持ちながら、4オクターブ自由に飛び回るんだから、聴いていてひたすら圧倒されるわけですね。

いやぁ、ほんと、素晴らしいな。。。


この歌唱力・表現力に加えて、このアルバムではゲスト陣がまた豪華なんだ。

ざっと紹介すると。

1曲目の「At Last」には、ダイアン・リーヴスがデュエットとして参加し、ピアノがスタッフのリチャード・ティー、テナーがスタンリー・タレンタイン

5曲目の「That's Where It's At」には、レイ・チャールズがソロで参加する豪華さ。

6曲目の「If I Were A Magician」(これ、大好き!)には、ボビー・ハッチャーソンがヴァイブ・ソロで参加している。

7曲目の「You Can't Go Home」は、ジョージ・ベンソンのギターがむちゃくちゃムーディでよい。

8曲目の「Room With A View」では、コーネル・デュプリーのギターソロ(ピアノはリチャード・ティー)

そして!
全曲を通じて、矢野顕子トリオに毎夏来ることで一部のファンに超有名な、あのクリス・パーカーがドラムを叩いてる!!



選曲も、スタンダードと新曲を混ぜ合わせたセンスいいラインナップ。
奇跡的なほど名曲揃いだと思うなぁ。

バラエティに富んでいて、ほんと聴き飽きない。


あぁ、かれこれ30年も聴いてて聴き飽きないアルバムがあるなんて、ボクは本当に幸せだと思う。


このアルバムをいい音で聴きたいがためにオーディオを調整したりもするからなぁ(平面スピーカーにまたとてもよく合ういい録音)。


・・・ということで。

なんか一方的に褒めてばかりだけど、あんまり知られていないからこそ、強く強く推したい名盤なのでした。

今日はこの辺で。



このアルバム、ブルーノート・レーベルから出ていることもあって、一応ジャズに位置づけられるんだけど、彼自身はもともとゴスペル出身で、R&Bでヒットしてそっちに分類されてもいる。ついでに言うと、イージーリスニング的な歌も歌っていたりする。
つまり、ゴスペルシンガーであり、R&Bシンガーであり、ジャズシンガーであり、ポップスシンガーであり、と、なんとも分類しにくい歌手だったりする。
そういうところも、日本人から見たらわかりにくく、人気が出なかったのかもな、とも思う。

※※
5曲目の、レイ・チャールズが参加している「That's Where It's At」は、サム・クックの代表曲のひとつ。
で、なんとルー・ロウルズとサム・クックは高校の同級生だったらしい!


※※※
この名盤、もう日本では絶版になっているようで、CD自体は手に入らないかもしれない。
ストリーミングか、MP3なら手に入るので、ぜひ。
(とはいえ、ジャケットもいいのだけど)


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さとなお(佐藤尚之)
古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。