【アート&イート #4】 「奇想のモード展」からの、目黒『BONDS』で赤ワイン(からの、ピンクレディ) @東京都庭園美術館
さて、「アート&イート」の4回目。
今回は、目黒にある東京都庭園美術館の「奇想のモード」だ。
「奇想」って言葉、一般的にはあまり使わないよね。
でもアート界隈ではこの言葉、わりと普通に使う。
その理由は、1970年に発売されたこの『奇想の系譜』という本がきっかけだと思う。
上記リンク先、アマゾンの内容紹介にはこう書いてある。
つまり、「奇想」って、"絵画史を書き換える" インパクトがある切り口だったということですね。この本によって、それまで無名だった伊藤若冲とか有名になった。
それ以来、アート界隈では「奇想」は共通言語になった、ということだと思う。
で、上にあるように、「奇矯(エキセントリック)で幻想的(ファンタスティック)なイメージの表出を特徴とする彼らを『奇想』という言葉で定義して、"異端"ではなく"主流"の中での前衛と再評価」しているわけだ。
そう、"主流"の中での前衛。
この意識をもって、この「奇想のモード展」を見ることが、スタンスとしてとても大事だなぁ、と、展示を見ながら思った。
そうしないと、単に「奇抜」「奇矯」「突飛」「目立ちたがり」的な方向に意識が行ってしまう。
いや、異端でも傍流でもなく、"主流"の中での前衛なのだ、と意識することで、ヘンテコに見えるファッションも意味が違って見えてくると思う。
しかもこの展示、シュルレアリスムと並列して展示していっている。
ポイントポイントで、ダリやらマン・レイやらキリコやらデュシャンやらの展示がある。
シュルレアリスムはもちろん当時のアートの"主流"であり"前衛"だ。
並列した展示にすることで、ボクみたいなファッションにそれほど興味ない人でもシュルレアリスムの文脈で楽しめたし、それぞれの服や小物などが、きちんと意志と意図をもった前衛として心に届いたなぁ。
いい企画展だなぁ、と思う。
ファッション好きにはお馴染みのブランドもたくさん出てくる。
いやぁぜひ撮影OKにしてほしかったなぁ。
いろいろ写したかった。
仕方ないから、まずは公式ページで雰囲気を知ってください。
さて、開催されたのは、東京都庭園美術館。
JR目黒駅から10分くらい歩くだろうか。
街には美術展のフラッグがはためいている。
歩きながら、そういえばボクは20代とか、ずいぶんと「奇想」っぽいファッションで歩いていたなぁ、と思い出していた。
広告会社のクリエイティブ局でプランナーをしていたので(コピーライターとかCMプランナーとか。若い人は想像つかないかもだけど、まだインターネット以前の時代だった)、なんか「クリエイターっぽい格好」を自分に課している時期があった。
今思えば、単なる見栄とハッタリだ。
自分を「ネクタイした人たちとは違う人種」と見せたいだけのお恥ずかしくもちっぽけなアピールだった。中身に自信がある人はわざわざそんなことはしない。
というか「奇想」ですら、ない。
だって、"主流"の中での前衛みたいな文脈も意志も意図もなかった。つまり、"異端"ですらない。
単なる奇抜で突飛な目立ちたがりだったんだなぁ。
若気の至りとはこのことだ・・・。
とかとか、当時を恥ずかしく思い出しながら歩いているうちに着いた。
緑豊かな一角にある、素敵な美術館。
今回で10回目くらいだろうか。
この表示板に、正面のガラス扉はルネ・ラリックって書いてある。
扉以外も、たくさん素晴らしい意匠が施されていたなぁ。
↓このページとか見ると解説が書いてある。
入口から数分、林の中を歩いて本館に着く。
この日は雲が美しかった〜。
ということで中に入ろう。
撮影NGなので、この動画で雰囲気を掴んでください。
ボクは今はファッションにそれほどの興味はない。
イッセイやヨージやギャルソンなどを着てた時期もあったけど、いまはもうほぼ一年中「Tシャツにデニムにスニーカー」で過ごしている。
ファッションとアートの境目がないのはわかっているつもりだし、ファッションで自分を表現して自分を作品化する歓びもそれなりにわかるつもりだけど、なんかそこにわくわくするよりも、もっと別のものにそのわくわくエネルギーを使いたいと思うことが増えたということかと思う。
でも、この美術展は、そんなボクでもちょっとわくわくしたなぁ。
「あ〜、オシャレする表現の楽しさってこうだったよなぁ」的な。
もうオシャレしなくなった人の単なる感慨だけど。でも、"主流"の中での前衛なファッションの、そのイキイキした主張に直に触れられたのは本当に楽しかった。
見に来ていた客層は、「ファッション学んでます」「ファッションが生き甲斐です」的な方が多く、その中にTシャツ&デニムで紛れ込んでいたわけだけど、久しぶりに「こんな格好ですいません」的な気分になった。
でも、そういうお客さんたち自体もちょっと「作品」ぽくて、展示以外もキョロキョロと「お客さんのファッション・ウォッチ」して楽しかったな。
うん、この美術展は、ちょっとだけオシャレをしてきたほうが楽しいかも。
展示の後半は、新館で撮影OKだったので、それを少し載せていこう。
江戸の花魁の意匠って「奇想」そのものだよねー、という展示から始まって、レディ・ガガが履いたことで有名な館鼻則孝さんのハイヒール。
串野真也さんの鳥や動物や虫をモチーフにしたハイヒールはなかなか衝撃的だった
ということで、1時間半ほどだったか、展示室を2周くらい堪能して終了。
建物の雰囲気と「奇想のモード」たちが溶け込んで違和感ないのがとてもとてもよかったな。美術展の空間がこれだけ活かされた展示も珍しい。
ファッション好きには特にお勧めな美術展だと思う。
さて。
アートが終わったら、いつものように「イート」。
目黒駅至近なので食べるところはいろいろある。
ただ、その夜は18時から目黒「BLUES ALLEY JAPAN」でピンクレディの未唯(ミー)の「新春!Pink Lady Night" 2022」を見に行く予定だったので、カフェで軽く赤ワインを飲むことにした。
え?
あ、気になりますよね、ピンクレディw
これ、毎年お正月にやっているライブで、和楽器・洋楽器・韓楽器などが入り乱れての凄まじいライブなのです。いやホント、すごいクオリティ。
お馴染みのヒット曲が、それこそ「奇想」なアレンジと演奏で蘇る。
ちなみに、2016年の映像がYouTubeに上がってたので共有しますね。
ほぼ毎年行っているライブなので、この現場にもボクいたのではないかなぁ。
ね、S.O.Sがこれ。「奇想」でしょ?w
とても前衛だと思う。
映像では生前の村上“ポンタ”秀一さんの姿も見えますね(今年のライブではポンタさんのパネルも貼られ、曲に生前のビデオをシンクロさせて、Eternal Drummerとして出演されていた)。
話が前後したけど、ライブ前でもあったので、「イート」は、目黒駅近くの『BONDS』で赤ワインと食事を少しで済ませることにした。
この近くには『キッチン・セロ』をはじめ、いいカフェやワインバーがたくさんあって迷うのだけど、以前この『BONDS』で飲んだときのアレルギー対応がとても気持ち良く、また来たいなぁ、と思っていたのだった。
「こんにちはー」と入っていくと、(特殊なアレルギー持ちだからということもあるけど)前に来たことを覚えていてくれて、気持ちよく迎えてくれた。
特殊なアレルギー持ちは、こういうとき有利だねw
図録をつらつら読んでたら、扉にジャン・デュビュッフェのこんな言葉が掲げられていた。
「創造とはすでにあるものやみなが満足しているものに満足しないということであり、したがって反逆や衝突の状態を包合しているのである」
いやぁ、もうもうその通りだなぁ。
これこそが"主流"の中での前衛を表しているし、それはビジネスにおける創造においても一緒だよなあ、と思った。
でも、みな反逆や衝突を避けた上での創造を望むけどね。
仕方ないことではあるけれど、本当の創造(イノベーションと言ってもいい)は、反逆や衝突の状態を包含しているよなぁ。
とか思いながら、パテ(おいしい)、トリッパ(これもおいしい)などももらいつつ、ページを進める至福の時間。
で、至福の時間を1時間ほどゆっくり過ごしてからの、ピンクレディw
うむ、なかなか「奇想」な一日だったなぁ。
そう、とてもいい「アート&イート」な日なのでした。
「奇想のモード展」は、2022年4月10日までっすよ。
ということで、今回も終了。
次回は、東京国立近代美術館での『民藝の100年展』を書くと思います。
※書きました。↓
※アート&イートをまとめたマガジンはこちらから。