露草の花がしぼむ頃には かならず帰ってくるからね 母さんはそう言って出かけていきました 朝露を縁取った、まだ開いたばかりの青い露草の花のまえで 母さんの帰りを待ったあの日のことを ふと思い出していました #22匹の猫 #保護猫 #猫の絵 #猫の絵本 #ねこのいる生活
その猫は、いつからか庭に現れるようになった。 体を覆う、長い毛はオレンジ色に光り、胸のあたりからうねるように柔らかな胸毛を蓄えている 見据えたような眼差しで、もの言わぬ姿はなんとも言えない美しさと、風格があった。 猫は、私に何を訴えるわけでもなく、 金木犀の木の根元で、一日のほとんどを過ごしていた 互いに距離を保ったまま、私は庭の手入れをしたり、猫は猫で、毛づくろいをしたりゆっくりとした時間を過ごした 猫は、前足が悪かった 内に折れ曲がった右手は細く固まったままだ
アタイの話をするワ アタイの父さんは近所じゃ有名な悪ドラ 母さんは真っ黒の毛がツヤツヤしたとびきりの美猫だったワ。 アタイたち兄妹は、近くの公園の右手にある林の奥に住んでた ここなら安全だからって、母さんはよく言ってたっけ アタイは7匹兄妹の末っ子産まれ 三毛猫はアタイだけ アタイはこの毛皮が嫌いだった 女のコだし、なんだか変な柄だったしネ 毎日の毛づくろいの練習も、アタイだけいつもふて寝してたっけ アタイの毛皮をキレイにしてくれたのはいつも母さん ア
猫は、母猫と暮らしていた。 工場の資材置き場の隅に、センダングサに隠れた住処があった。 大きな車が行き来する工場があり、母猫はいつも注意深く猫に言って聞かせた。 「センダングサを抜けて外には出てはいけないよ」 センダングサの種は猫にとってやっかいだったが、母猫はそのそばには人間は近づかないと思ったからだ 母猫は、毛皮に刺さる種を念入りにとる作業で忙しかった 鼻の上に皺を寄せ、毛先を噛みながら種を削ぎ落としていく 「あなたみたいにくっついて離れないから大変よ」優しい