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Day274:「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか?」

ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか?

著者:ピアーズ・スィール/出版社:CCCメディアハウス

【問題提起】


著者の専攻である人々の仕事の成果を向上させ、幸福感とやる気を増進させる方法を見出すことが産業心理学、組織心理学という学問分野の目的だけれど、一般的に知られていない(先延ばしの研究論文800本以上)

先延ばしの起源は9000年前(9000年前と現代とでは生活環境が異なっているが、脳の反応は変わっていない)・・深刻な現代病(進化のプロセスは、先延ばしという課題を成し遂げる能力を備えてくれなかった)

*脳の回路はいまだに、太古の不確実な世界(食べ物がすぐくさり、天候が変わりやすく、所有権制度が発明されていなかったころ)のまま。目先のことに反応するようにできている脳で未来のチャンスに取り組んでいる。

1つ1つの課題は先延ばしても大きな弊害がないかもしれない。それがいくつも積み重なると、人生が蝕まれ、悲惨な結果に陥る。2050年までには、世界の国の75%が水不足に悩まされる、天然の魚介類を捕る漁業が完全に壊滅する、地球の平均気温が三度上昇し、地球上の3分の1の動物が絶滅、何億人もの人が飢餓に苦しむ。これ以上先延ばしできない。

先延ばしは、遺伝的要因50%(脳の構造)50%は環境要因だから克服できる。

【問い】

Q.集中力がみなぎり、脇目もふらず課題に没頭し、物事を途中で放り出そうなんて微塵も思わない状態をつくりだすには?

Q.自分をかえ、後ろめたさを感じずに自分の欲求に従えるようになり、日々の課題をやり遂げて胸を張ってレジャーを楽しむためにはどうしたら?

Q.なぜ、先延ばしが蔓延しているのか?

【先延ばし(例)】

  • 実行に移されないままの決意

  • 目標を立てたままになっている

  • ダイエットを先送りしている

  • 期日の遅れた公共料金の振り込み

  • 片付けをしないで散らかった家の中

  • 一向に増えない売り上げや貯金

  • 守られない予定

  • いかせなったチャンス

  • 無駄にすぎていく時間

  • つい後回しにする病院

  • キッチンに使ったままの食器が溢れ帰っている

  • 火災検知器の電池が切れている

  • 自動車のバッテリーを交換せずにいる、タイヤの空気圧の点検もしていない

  • 夫や妻の誕生日が近づいているのに、プレゼントが用意できていない

  • 仕事の出来の悪い部下に問題点を指摘するのを後周しにしている

  • 気の進まない打ち合わせの日程を決めるのを先延ばしにしている

  • まだスポーツジムに行っていない

  • 故郷の母親に電話をしていない

※「先延ばし」は、「怠けること」と違う(先延ばしする人は、やる気はある)

【先延ばしが深刻な分野】

健康(42%)、キャリア(56.8%)、教育(32.9%)、お金(35.9%)、自己(29.6%)

【先延ばしとは】

自分にとって好ましくない結果を招くと知りながら、自発的に物事を延期すること

【原因は?】

■基本的要素

「期待」「価値」「時間」

・期待:課題を成し遂げた時にご褒美を与えられる確実性(期待=確実性)
(人は意思決定を行う際、期待と価値を掛け合わせた基準に判断を下す)
・価値:ご褒美の大きさ(価値=インセンティブ)
・時間:ご褒美を手に入れられる時期が遅く、しかも時期の遅れに対する忍耐力が弱いとモチベーション減退

モチベーション=期待✖️価値÷衝動性✖️遅れ(先延ばし方程式)
・・非合理な遅延が起こるメカニズム(行動主義心理学)

例)レポートの課題

レポートを書くのが苦痛(=価値の小ささ)

努力が報われる保証がなく(=期待の低さ)

締め切りは遠い先(=遅れの大きさ)

不安が原因で先延ばしするのではなく、衝動性の強さ、誘惑の多い環境、計画性のなさが先延ばしを引き起こす

■衝動性の強さ

  • せっかちでいますぐ手に入れたい(自制心を発揮したり楽しいことを後に延ばしたりすることが難しい)

  • 将来のために今我慢することができない

  • 規律をもって仕事ができない

  • 計画性がなく、整理整頓が苦手、集中力が乏しい

  • スケジュール管理にも欠ける

  • 衝動性の強い人は、締め切りの不安を感じると、課題を先送りする

  • 計画的に物事を行えない

  • 前もって計画して仕事に取り組むのが苦手。ようやく仕事に着手してもすぐに気が散る

⇄衝動性の弱い人は、不安に背中を押されて早めに課題に取り掛ける

※先延ばしと完璧主義は関係ない

【先延ばし3つのタイプ】

1、どうせ失敗するとき決めつけるタイプ(期待)

結果に対する期待が小さく、目標達成を不能と決めつける→努力をやめる→自信喪失

*自信や前向きな考え方の欠如と先延ばしには関連性がある(マーティン・セグリマン「オプティミストはなぜ成功するか」)学習性無力感(電気ショック実験→何らかの否定的イメージを抱くと、その通りの結果を招きやすくなる、失敗するだろうと思っていると、実際に失敗する確率がいっそう高まる→本腰を入れて、課題に取り組まなくなる)

2、課題が退屈でたまらないタイプ(価値)

価値を感じない課題、不愉快な課題は取り組まない

(友達とのおしゃべりには出かけるのに、納税書類は先延ばしする)

義務や責任を負うことを嫌がる

3、目の前の誘惑に勝てないタイプ(時間:タイミング)

目先の楽しいことにうつつを抜かして、自分の首をしめる

将来の大きな快楽より、目先の小さな快楽を優先させる

衝動に負けやすい人:欲求が強く、警戒心と慎重さにかけ、将来のことを考えるのが苦手

よく考えずに行動、感情をコントロールできない、直感的に行動

衝動性の強さ、根気のなさ、自己コントロール能力の低さ、集中力の乏しさ

【メモ】

未来の目標や未来を抽象的に感じる反面、目先の目標や不安を具体的に感じる傾向がある。

ぼんやりしているものは掴みにくい。

概して長期的目標を抽象的に感じるので、先延ばしにする。

例)今日の買い物は具体的

【前頭前野と辺縁系】

■前頭前野

特徴:遂行、理性

得意:長期にわたる目標の追求、分析、対局的思考、抽象的な概念、遠くの目標

不得意:柔軟に決断を下すが、決断のスピードが遅い

■辺縁系

特徴:本能、目の前の具体的なものに反応

得意:迅速な決断

不得意:五感を通した直接的な刺激で活性化すると衝動的な行動をとりがちになり、今ばかり優先される

(子供と動物は辺縁系の強い影響下にある)

■先延ばしメカニズム

辺縁系が前頭前野の長期計画を覆し、目の前の物事を優先させるとき、先延ばしが起こる。辺縁系は、前頭前野より影響力が強い。辺縁系が活性化すると、目先のことが重要で切実に思えてしまう。将来の課題は後回しに。

【マーケティングと辺縁系】

脳の中では、辺縁系が目先のことに反応し、前頭前野が長期的なことに気を配る

心理学と様々な社会科学の手法を総動員して、人々の無知と非合理性につけ込むためのもっとも有効な方法を見出す

■マーケティングの専門家はどう使う?

  • 辺縁系に訴えかける商品や売り方工夫する

  • 邪魔者の前頭前野を黙らせる

(事例)

栄養スナックより誘惑スナック(ジャンク)

目の前の100万ドル小切手より1週間ずつ5000ドル

クレジットカード:手に取るのは今、支払うのはあと

※癖や習慣は前頭前野の判断抜き、一旦スイッチが入ると、感情を乗っ取られる

【先延ばしの代償】

(先延ばしする人の生活)言い訳、嘘、借金、不名誉、失敗の連続、喫煙、過剰な飲酒、ドラッグ、向こうみずな振る舞い、大食、危険な運転、喧嘩、セックス

■健康

成功の分野で先延ばしする人は、必然的に資産が増えない。自己改善に対して先延ばしする傾向の強い人は、心身の両面で健康がそこわれる

例)ほとんどデンタルフロスの掃除をしない→虫歯を放っておいて歯がなくなる

例)定期検診に行かない→病気に気づかず、末期癌

■キャリア

先延ばしの持ち主の63%は、キャリアにおける成功が平均以下

■資産

資産づくりに成功している人29%

先延しする人は、将来に備えてお金を貯めようと思っても、その計画を実行にうつさない

福利の恩恵を受けられない

※アメリカのクレジットカード会社は、先延ばし人間のおかげで高額の利息を得ている(延滞する人が「お得意様」

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罪悪感と仕事の質の低下

今すぐ満足感を手にしようとすれば、将来のもっと大きなご褒美を手離す羽目になる

私たちは、短期的にはやったことを後悔するが、長い目で見ればやらなかったことを後悔する

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【HOW】

■「どうせ失敗する」の克服

どうせ失敗するという人は、本腰を入れて努力しない

自己イメージが低いと、イメージ通の結果を招く。失敗を予測すると失敗の確率が高まる。

人は、簡単すぎる課題に対して、モチベーションがわかない(たいして努力しなくても成し遂げられるできると楽観してしまう)

*マイナス思考の悲観主義も良くないけれど、楽観主義の適度なバランスが必要

手強いけれど達成可能な目標を設定し、1つずつ突破する

適切な計画→遠くの締切りを日々の小さな締め切り細分化する(衝動性を味方にできる)

→物事を成し遂げる経験を積み重ね、自信を気づいていく「仕組み」を持つ(「成功の螺旋階段」)

※子育てには子供に成功の螺旋階段を教える

*本の中では他にも12の行動プランが紹介されている。

【メッセージ】

  • 私たちは、なすべきことをなさず、成さざるべきことを成している

  • 私たちは、短期的にはやったことを後悔するが、長い目で見ればやらなかったことを後悔する

(~だったかもしれない自分を思い描き、できたはずなのに、できたかもしれないのにやらなかったことを悔やみ続ける)


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