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働くシニアに立ちはだかる50万円の壁は撤廃されるのか

働くシニアの年金を減額する「50万円の壁」が話題です。いまの日本の年金制度では、厚生年金を受けられる人が就業している場合、厚生年金額と給料の合計が50万円を超えると超えた額に応じて年金額が停止されます。
給与が高い人は容赦なく年金が0円になったりします。
この話をすると「え、停止された年金はいつ返してもらえるんですか? 退職したときですか?」
とよく聞かれます。
残念ながら停止された年金が戻ることはありません。そう言うと
「なんだよ!40年間ずっと厚生年金保険料を毎月何万円も払ってきたんだよ」とキレちゃう人もいます。お気持ちよくわかります。
わたしも会社員時代、年金が一部支給停止されていました。


50万円の壁は撤廃または見直しの方向?

おりしも社会保障審議会年金部会で次期年金制度改正の検討が行われています。
12月24日の部会では23回にわたる議論の取りまとめについて審議され、いよいよ改正案の大枠が明らかになります。
50万円の壁、いわゆる「在職老齢年金」は次期改正でどう変わるのでしょうか。
このテーマを審議した11月25日の第21回年金部会では、在職老齢年金制度の撤廃または基準額の引上げを行うべきとの意見が多く見られました。

・従業員の働く意欲と中小企業の人手不足の双方に負の影響を与えていると考えられる制度は、ぜひ見直すべき(小林委員)
・(この制度は)所得制限のように機能してしまうので、社会保険において所得制限はおかしくて、しっかり支給した上で、必要があれば税で徴収していくという方向性がよい(島村委員)
・在職老齢年金制度に関しては、他国の例を参考に、保険事故が発生したら保険金を支払うという保険の大原則を徹底する観点からは、廃止すべき(駒村委員)

といった意見が出されていました。
また、審議会の事務局からの説明では、スーパーマーケットの事例として

「人手不足の中で高齢者の活躍が期待されており、現時点で停止基準に該当する方は少ないが、特に地方では就労抑制が増え始めていて、年金の支給停止を嫌って就労抑制することは、人材確保にとっては大きな問題である」

という声が紹介されていました。

65歳以上に年金支給停止が適用されたのは平成12年改正

事務局の資料では、もともとこの制度は「現役世代の負担が重くなる中で、報酬のある方に年金制度を支える側に回ってもらうという考え方に基づいて導入」されたとあります。
年金制度の原則は「保険料を拠出した人に対して見合う給付を行うこと」なので、そもそも在職老齢年金はその原則にあってない制度といえるでしょう。これまでの65歳以上の在職者についての制度改正を見てみます。

昭和29年(制度創設)当初
制度創設当初は在職中は年金を支給しない制度。
昭和40年(1965年)改正
65歳以上の年金の支給割合を一律8割とする。
昭和60年(1985年)改正

65歳以上は年金全額支給、就業していても年金停止はなし。
平成12年(2000年)改正
65〜69歳の人に在職老齢年金制度が適用。年金額と給与に応じて年金停止。
平成16年(2004年)改正
70歳以上の人にも在職老齢年金制度を適用。年金額と給与に応じて年金停止。

第21回社会保障審議会年金部会_2024年11月25日_資料2より筆者作成

65歳以上で報酬のある人に「年金制度を支える側に回ってもらうという考え方」がはっきりと反映されたのが2000年の制度改正でした。
その制度が続いていまに至ります。

諸外国にはない在職による年金停止の制度

諸外国の例を見ると、アメリカ、ドイツ、フランスでは、支給開始年齢以降は収入額によって年金を減額する仕組みは存在しません。日本の在職老齢年金制度は特異な制度といえるでしょう。

第21回社会保障審議会年金部会_2024年11月25日_資料2

このように見てみると、次期年金改正で在職老齢年金が見直される可能性はかなり高いと思われます。
はたして50万円の壁は撤廃されるのでしょうか。それとも基準額の引上げを行い支給停止を緩和する改正が行われるのでしょうか。
今後の審議会の動きに注目していきたいです。



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