年金の話は難しいというけれど
はじめまして。
年金のことを書いたり広報誌や本を作ったりする仕事をしているんですが、年金の話って難しいんでしょ、もらえるかどうかわからないんでしょってよく言われます。
年金は国がやってる制度なので、なんとなく自分にも関係あるお金の話なんだろうなとは思いつつ、なんかモヤモヤしますよね。
これからここで年金の話を書いていこうと思いますがそんなモヤモヤを少しずつスッキリさせていけたらいいなと思っています。
年金はその人の生きたあかし
「年金はその人の生きたあかし」というとおおげさに聞こえますが、これは真実。
わたしは自分の年金請求の手続きをしたときに、そう思いました。
そのわけは年金額の決まり方にあります。
少し長くなりますが、おおまかにご説明しますね。
わたしたち会社員の年金額(報酬比例部分)は、この式にあるとおり平均標準報酬月額、平均標準報酬額と加入月数を使って計算されます。加入月数は会社員として働いた期間の長さ、つまり給料から年金保険料を払った月数ですね。原則、働いた期間が長いほど受け取る年金額も多くなるってことです。
それでは平均標準報酬月額や平均標準報酬額は?
実はここが日本の厚生年金保険制度のすごいところだと思うのですが、たいへん緻密に加入者の現役時代の給料額を年金額に反映させるしかけが仕込んであるのです。
社員の年金のために会社が毎年・毎月コツコツやっていること
日本の会社では毎年1回、社員一人ひとりの給料をもとに「標準報酬月額」を計算し年金事務所に届け出ています。標準報酬月額は保険料計算に用いるみなし給与で、税込み月収を区切りのよい幅で区分したものです。
標準報酬月額に保険料率をかけたものが厚生年金保険料です。会社は毎月、社員の給料から保険料を天引きし会社負担分の保険料と合わせて国に支払います。
年金額の計算はそうとうややこしい
標準報酬月額に応じた額の保険料を支払うのだから将来受け取る年金額も標準報酬月額に比例した額にしようということになっています。
で、どうするかというと加入した月の標準報酬月額を足し上げてそれを加入月数で割って平均したものを平均標準報酬月額として年金の計算に用います。しかも過去の低い標準報酬月額には賃金上昇率に応じた再評価率を乗じたうえで計算されます。
経済の変動によって年金の価値が下がったりするのを防ぐためです。
なお、2003年4月以降は賞与からも年金保険料を引かれることになったので、年金額も賞与額を含めて計算されるようになりました。年金額の計算式が2003年4月前と後に分かれているのはそのためです。
こんなふうに加入者の会社員時代の報酬を国のほうでコツコツと記録して、それをもとにかなりややこしい計算をして年金額を決めてくれているというわけです。
ひとつとして同じ年金はない
ですから年金は一人ひとりみんな違います。ひとつとして同じ年金はありません。
どうですか。
少し年金が愛しく思えてきませんか?
わたしは年金事務所の窓口で自分の年金請求の手続きをしたときに、会社員として働いた37年間で得た何か尊いものを受け取ったような気持ちになりました。
そして「年金はその人の生きたあかし」
と言ってもいいような気がしたのです。