目から鱗のハウツー営業㊼【訪問頻度の決め方とその考え方[前編]】
「A社に毎週訪問しているのに全然注文が増えない」
「B社ってどれくらいの頻度で顔を出せばいいんだろう?」
こんな風に悩んだり、疑問を持ったことはありませんか?
恐らく、こうしたことは多くの営業職にとって永遠の課題だと思います。
そこで、今回は訪問頻度の決め方と考え方を
前編と後編に分けて、2週に渡って解説したいと思います。
お客様が営業職に求めているモノ
私が繰り返し主張している事ですが、
お客様にとって最適な提案を作ることが出来れば、
その事だけで契約が増える訳でも近付く訳でもありません。
何故なら、お客様があなたの提案に耳を傾ける、
あなたの提案を聞く場を設けるには、
お客様から好かれ信頼関係を構築する必要があるからです。
そして、そのステップ抜きに提案内容だけで契約に至るケースが少数だからです。
逆に、最適な提案が自力で用意できなくても、
お客様から好かれていれば、
提案作成に有利な情報がお客様から提供されます。
こうしたことを他力本願だと否定的に捉える必要などなく、
お客様に優しく接していただき、
それに甘えるのも立派な営業活動です。
たとえこうした部分がある事をあなたが認めたくないとしても、
我々営業職の結果がこうしたお客様の優しさによって
成り立っているのは事実です。
そうであるにも関わらず、
こうしたお客様の気遣いやお膳立てに目を向けることなく、
自身の提案やプレゼンによって契約を手繰り寄せたと思い込んでいる、
これは営業職の勘違いであり、幻想です。
それ故、【営業職は常にお客様の手の平で転がされている】
というのが営業職の知られざる実像であるとも再三言ってきました。
こうしたことから導かれる結論は、いたってシンプルなモノです。
全てはお客様に好かれ、
信頼関係を構築する事にこそ営業活動の主眼があり、
そのことが営業活動のほぼ全ての成否を決めているという事です。
そして、[対1お客様]に場面を限定すれば、
その信頼関係構築の全ての基本はそのお客様に対して、
地道に積極的にアプローチ数を重ねることです。
(アプローチ:手紙、メール、電話、オンラインミーティング、訪問等、
営業職がお客様に対して行うやり取り・コミュニケーションの全て)
どれほどメールを送り、どれほど電話をかけ、
どれほど訪問したか、どれほど言葉を交わしたか、
その蓄積と継続によって、
お客様からいかに好かれ、信頼されるのかが決まり、
その会社からの注文数・契約額を決めます。
俗にいう、「あの人、マメですよね」といかに思われるか、
という戦いです。
お客様が感じるマメさというのは、
営業職の人間としての誠実さ、
契約獲得への熱意、
自分たちがその営業職から特別大切に扱われているか否か、
などお客様が営業職に求めるモノそのものと思っていいです。
「自分たちをいかに特別に扱ってくれているのか?」
「今の一生懸命さは契約をもらうための一時的なモノではないのか?」
「トラブルが発生しても誠実に対応してくれるのか?」
こうしたお客様の不安や問いかけの参考指標がマメさ、です。
勿論アプローチ数を重ねても、その間不誠実さが垣間見えるのは論外です。
アプローチ数を重ねる目的はあくまでお客様からの信頼獲得なのですから。
このように一つ一つ見つめていくと、
アプローチ数を重ね、自身のマメさをお客様に実感していただき、
契約へのハードルを徐々に下げていく事が営業活動の根幹だという事が分かると思います。
お客様訪問の意味と訪問頻度の意義
その中でも最も中心となるのは、
やはりお客様訪問であり、
お客様と会って話すことです。
この訪問をどのような間隔で行うか、つまり訪問頻度は
お客様と信頼関係を構築するスピードと直結します。
同じお客様相手に
訪問頻度を高めに設定すればするほど、
短期間でお客様との人間関係を構築できる可能性が上がります。
ただ多くの営業職が体験しているように、
どんなに訪問頻度だけを上げても効果が出ない場合はあります。
この理由と背景は後編で解説します。
そして、実は訪問頻度は一回一回の訪問・商談の効果をも左右しています。
同じ商談内容をこなしても
次回訪問が1か月後よりも、
1週間後の方がお客様はその内容を記憶していますし、
良い意味での緊張感も双方に生まれます。
そこで何となく交わした口約束も重みが増してきます。
つまり訪問頻度を高めに設定することで
一回あたりの商談の実効性も高まるという相乗効果もあります。
このように見ていくと、
営業活動の目的はより多くの契約を獲得すること、
契約獲得にはお客様との信頼関係構築が必要、
信頼関係構築にはアプローチ数を重ねることが必要、
アプローチ数を重ねることの中心はお客様訪問、
お客様訪問の効果を握っているのは訪問頻度の設定、
ということになります。
ここまでは[対お客様1社]という場合に限定した話です。
一人の営業職の営業活動における訪問頻度の意義と位置づけ
一方で、もう少し俯瞰しその営業職の営業活動全体を見た場合は、
それぞれのお客様にかける時間とエネルギーの分配をどう行っていくかが
一人の営業職の生産性を決め、結果として全体売上を決めます。
すなわち、それぞれのお客様への訪問頻度の設定・割り振りは
あなたの意志に関係なく、営業方針そのものとなります。
『特定の1社だけの攻略⇒目標達成』
こういうことが実現可能ならば1社にとことん訪問する、
で問題ありませんが、
多くの営業職は複数のお客様を攻略することではじめて自らの目標を達成できるはずです。
つまり、それぞれのお客様への訪問頻度の決定が
それぞれのお客様への時間の分配を決め、
一人の営業職の営業活動全体の生産性を決定し、
当然の結果として、彼の、または彼女の全体売上をも決めるのです。
あるお客様への訪問頻度が適切でない、
つまり訪問を重ね時間をかけた割には売上が伸びていない状態は
時間を無駄に使っているだけでなく、
本来その時間を使って他のお客様に訪問していれば
もっと売上を伸ばせていたかもしれないという全体売上のマイナス要因でもあることを忘れてはいけません。
一営業職が担当しているお客様の中でこうした事例が散見される場合は
それぞれの訪問頻度を見直し、全体像を再構築する必要があるでしょう。
チェックするポイントは訪問頻度そのものでなく、
お客様からの注文や売上がその訪問頻度によって増えたのか、減ったのか、
この一点だけです。
ここまででそれぞれのお客様への訪問頻度の設定が
一人の営業職の全体売上を決める、という話をじっくり解説しました。
さてここでよく聞かれる質問にも触れたいと思います。
疑問:オンラインツールは訪問の代替たり得るのか?
企業経営者や営業責任者の方から今でもよく聞かれることです。
特にコロナ禍の時はよく聞かれました。
それは、
【ZOOM等のオンラインツールで訪問[会って話す]の代替が可能なのか】ということです。
結論から申し上げますと、
現時点で代替は不可能です。
確かに、コロナ禍において
会って話すという行動は大変な制限を課せられました。
様々な事情で会うことが出来ないため、
オンラインで話す、メールや電話でコミュニケーションを取るというのが通常の営業活動になっていた方が大半だったと思います。
これは営業活動だけでなく、あらゆる場面でそうでしたね。
その時点で、
『コロナ禍が終息した後も営業活動の基本スタイルは訪問からオンラインに切り替わるだろう』と予想した方も数多くいました。
私はそうはならないだろうと予想していました。
その一方で、そうなってもらった方が弊所には有利な展開だと思っていました。
私はコロナ禍においても極力会って話すことにこだわり続けましたし、
毎月開催のセミナーもオンライン開催は検討すらしませんでした。
色んな方から
「続けたいなら今のうちにオンラインセミナーに切り替えた方がいい」
「オンラインの方が参加しやすい」
「これからはセミナーもオンラインが主流になる」と言われましたが、
全て会場で集まり、参加者の皆さんと顔を合わせる形にこだわりました。
この事の意味は後編にもう一度解説したいと思います。
【会って話す事がベストの営業活動である】
このことは営業活動の本質を少なからず理解している人たちにとっては
造作もなくたどり着けた結論だったと思います。
会って話す、このことを上回る営業活動は現時点では存在していません。
理由は実に簡単です。
営業活動でやり取りされているのは、
お客様からの質問や営業職からの提案という情報だけではないからです。
もしこうしたモノだけのやり取りで済むのなら、
お問合せ窓口とチャットがあれば十分です。
既にこうした企業も多数ありますので、運用可能であることは実証済です。
しかしそうであるにも関わらず、
何故、未だ多くの企業が多大なコストを払って
営業職を採用しているのかを考えてみるべきです。
お客様は情報のやり取りだけを求めているのではない、
このことを企業が実感しているから、ではないでしょうか?
そして、
ライバル会社がそれに気づき営業職を採用したならば、
自社も営業職を採用する事でしか対抗できないことを知っているからではないでしょうか?
勿論、
全てのお客様が全ての買い物や契約に関してそうである訳ではありません。
私自身も多くのモノを誰とも会うことなく、ネットで次々と買っています。
しかし、お客様が情報のやり取りだけでなく、
営業職の一生懸命さや熱意を通して企業の姿を推し量って決めたい、
そんな場面はまだまだ大いに健在なのです。
オンラインではこうした情報以外の部分を感じることが互いに難しいです。
正確に言うと、会って話しても全ては伝わらないのに、
オンラインでは尚更難しいというべきでしょうね。
更に言うなら、
もし営業活動が単なる情報のやり取りであるなら、
コロナ禍の随分前に訪問よりもオンラインが主流になっていたはずです。
何故なら、コロナ禍に入る前から、
オンラインミーティングは可能だったからです。
移動もなく、その時間やコストも低減できるのですから、
営業職からしても企業からしても願ったり叶ったりのはずです。
しかし、多くの企業ではそうはならなかったですし、
コロナ禍というオンライン化最大のビッグチャンスも
実りませんでした。
そして、
コロナ禍の制限から解き放たれた今、
多くの営業職はお客様訪問という基本に一目散に戻っています。
オンラインは会って話すことの代替たり得ない。
電話やメールやオンライン面談は便利なモノですが、
あくまで訪問の補完であり、フォローであり、お膳立てです。
こうした事からコロナ禍の状況に関わりなく、
やはりお客様訪問は営業活動の中心であり、基本です。
これが私のこの質問への答えであり、現時点での結論です。
ここまでが前編です。
後編では、前編を踏まえて
訪問頻度をどのように決めればよいのか、
その具体策について解説します。
次週までご期待ください。
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございました。