目から鱗のハウツー営業⑳【契約不成立のメカニズム】
私は「営業という仕事の真の姿」をお伝えしたいと思い、このシリーズを続けています。
皆さん、こんにちは。
サトミ営業相談所の川端です。
今回は後半戦初回にして、記念すべき第20回目です。
そこで今回はいつもと少し異なる視点から解説したいと思います。
恐らく多くの営業職は契約をいかにより多く、いかによりスムーズに獲得できるかを知りたいはずです。
しかし、実態に近いか否か、効果があるかどうかは別として、こうした視点から解説されたモノは世の中に溢れています。
そこで今回は
『契約不成立はどのように起きているか?』
『契約が生まれない時、そこで何が起きているのか?』
という視点から分析し、そのメカニズムを解き明かすことで、契約締結のヒントにしていただきたいと思います。
契約不成立の最大の原因はお互いを知らない事
結論から言います。
契約不成立の最も多い原因にして、最も多く見られる共通点は
【お客様側と営業職側のお互いの情報の不開示・非共有】です。
簡単に言うと、お互いの事をよく知らないということです。
そして、この状態を作り出す最も多い要因が、お客様と営業職の人間関係の未構築です。
恐らく、契約に至らないパターンの大半はこの状態であり、契約不成立の場合の共通点だと思います。
営業職側は『売りたい』『買って欲しい』という気持ちが強い分、自らの情報開示、その意欲は十分であると思い込んでいます。
ですので、営業職側は、契約に至らないのはあくまでお客様側の情報開示不足が原因だと思っているはずです。
或いは、自社商品のスペック・魅力が低いことが契約に至らない原因だと思っているのではないでしょうか?
私はいずれも契約不成立の主な原因ではないと思います。
【契約不成立の最も多い原因にして、最も多く見られる共通点は
お客様側と営業職側のお互いの情報の不開示・非共有】
このことは実にシンプルに証明できます。
それは営業職自身が契約を獲得した時を振り返ってみれば簡単に分かることです。
契約締結までに一度は必ず経ている状態とは?
どの契約も必ず
お客様に契約する意志がない状態(契約不成立)
⇒お客様に契約する意志が芽生える(契約締結)
という変化が生まれ、契約締結に至っているはずです。
100%ではありませんが、契約締結に至るまでに、お客様は契約する意思がない状態を必ず経ています。
この当たり前のことを見つめ、少し掘り下げて考えてみると、様々なことが見えてきます。
同じお客様相手に、取扱っている商品やサービスの内容が何も変わっていないのに、契約不成立から契約締結に切り替わるのは何故でしょうか?
確かにお客様側の状況の変化というのも考えられます。
しかし、こうした現象はお客様の状況の変化がそれほどなくとも、起きていることではないでしょうか?
何故、このようなことがしばしば起きるのでしょうか?
実は見落とされている契約締結のパターン
それは営業職が自社商品がお客様に何らかの形で貢献できることに気付くだけでなく、お客様もまた営業職が提案した商品の魅力やメリットに気付くことがあるからです。
更に言うなら、お客様の細かな状況の変化もその情報を営業職側に開示するか否かで、営業職側の提案の精度にも大きな影響を与えますし、それ自体が契約を決定づけるきっかけにもなり得ますよね。
このように考えていくと、お互いの情報開示が進むだけでも実は契約への距離はグッと縮まってくることが分かります。
理想の情報開示の形
そして、こうした展開を生むための、双方の情報の開示は一対となっていることが理想です。
例えば、お客様の状況が分かり具体的な一つの課題に対して、「その課題を解決する弊社のサービスはこちらです」という一つの提案を行う、これが理想です。
しかし、営業活動においてこのような展開が生まれることは非常に稀です。
では現実にはどのような展開が多いのかというと、お客様の状況や要望とは関係なく、営業職側が満遍なく、自分の売りたい商品の説明をしていることです。
では、これは営業職側だけの問題かというと、そうとも言い切れません。
何故なら、お客様の情報が開示されなければ、どんな営業職もこの展開から脱することが難しいからです。
仮にお客様が営業職側に情報開示を積極的に行えば、お客様側から見ても、無意味な商品説明に時間を取られることはありません。
私が『商談とは作業である』と主張しているのは、
もしこのようにお客様と営業職がお客様の課題を共に解決することを共同目標と設定できれば、お客様を説得したり交渉する場にはなり得ないからです。
恐らくそれが最も効率が良く、無駄も少ない、理想の商談の形だと思います。
このように考えてみると、お互いの情報開示がなされれば契約への距離が一気に縮む上に、逆にお互いの情報開示がないまま契約締結に至ることがいかに難しいかは分かると思います。
これが
【契約不成立の最も多い原因にして、最も多く見られる共通点は
お客様側と営業職側のお互いの情報の不開示・非共有】
と私が主張する根拠です。
誰もが抱くであろう違和感と疑問にお答えします。
さて、ここまで読んでいただいて、違和感を覚えた方は多いはずです。
それは
『お客様は契約締結を目標に設定などしてくれない』
『まして、契約締結の為の情報開示などしてくれない』
『お客様が契約締結、情報開示に積極的に向かう動機がないのでは?』
という違和感や疑問を覚えたのではないでしょうか?
しかし、これらは営業職の思い込みであると思います。
確かに容易ではありませんが、実現不可能な課題ではありません。
お客様は『営業職の努力や誠実な態度に報いたい』という気持ちから、契約締結に前向きになるということはよく起きます。
もっと言うなら、こうした気持ちをお客様に抱かれる営業職が契約を手繰り寄せやすいと言えます。
見落とされているポイント
そして、もう一つの反論として、
契約締結で得をしているのは営業職だけではないということです。
契約締結時には、必ず大なり小なりお客様も得をしているということです。
いかに、お客様が営業職の努力や誠実な態度に報いたいという気持ちから、契約や注文を検討し始めたとしても、自社や自身に全く役に立たないモノを買う事は稀です。
そのように考えると、お客様が情報開示を積極的に行う理由は十分にありますし、営業職側の努力や工夫でその雰囲気を盛り上げることも十分に可能であるはずですよね。
契約不成立のパターン
では逆に、何故このような展開がなかなか生まれないのかというと、
1⃣お客様が自社の課題などの情報を開示できるほど営業職を信用していない。
2⃣全ての営業職とそのような関係を築くほど、お客様には時間的な余裕が無い。
1⃣2⃣⇒信頼に足る営業職に対してのみ、情報開示を積極的に行う。
⇒それに選ばれなかった営業職は情報開示がされず、契約不成立となる。
このように、非常にシンプルな構造です。
そして、
「お客様と営業職がお互いの情報開示を積極的に行う」
こうした状態を生む最も確実な方法が
お客様に好かれ、人間関係を構築する事です。
逆に、
「お客様からの情報開示が期待できない」
「お客様と共同目標など非現実的だ」
と営業職側が考えているのはお客様との人間関係が深まっていないからであり、だからこそ、お客様を説得する、NOをYESにする営業テクニックへの需要が高まってしまうのではないでしょうか?
見落とされているポイント⓶
一方で、営業職側が見落としている事実がもう一つあります。
それは、双方の情報が全て開示され、お客様がそれら全てを吟味すれば、たったそれだけで契約が成立してしまう場合は一定数存在するということです。
残念ながら、このことは私が説明しても、大半の営業職は理解できません。
「いやそんなことはないでしょう」「それが事実なら苦労しませんよ。」
こんな反応が返ってきます。
しかし、こうしたこともまた一種の思い込みだと思います。
「お客様にメリットのある提案をしなければ契約は獲得できない」
「お客様の潜在的ニーズを掘り起こさなければならない」
「お客様の課題を解決するソリューションを提示しなければならない」
営業職のあるべき姿をこのように教えられ、それを信じ込んでいるからこそ、こうした事実を素直に受け入れられないのではないでしょうか?
こうしたことは必須条件でなく、契約に至る数多くあるきっかけや原因、パターンの一つに過ぎません。
何より、契約までのプロセスや課題を全て営業職側でクリアすべきだというのは営業職側の思い込みではないでしょうか?
お客様の発見が契約を導くこともある
繰り返し主張していることですが、営業という仕事において、お客様を説得するような話術やソリューションは必須ではありません。
何故なら、互いの情報の開示だけでお客様の要望が満たされたり、あなたの会社との付き合いの中で自社の課題が解決できることをお客様自身が気付く場合もあるからです。
課題を解決するのは営業職側だけの任務でも、特権でもありません。
当然、お客様自身は営業職よりも自身・自社の課題を解決することに積極的かつ意欲的です。
そのことに役立つ商品やサービスを持っているという事実だけで、契約締結が近づき、結果としてあなたの会社はそれに貢献することも可能です。
クロージングが苦手な営業職が契約を獲得できるのも、強力なクロージングをしなくても契約を獲得できることがあるのも、こうしたことが理由として挙げられます。
何も商品の説明から始まって、メリットの打ち出し、お客様の課題解決までの全てを営業職側が成し遂げる必要は元々ないのです。
このことは営業活動を続ければ続けるほど実感できるはずです。
営業活動において、営業職が意図しないタイミングや理由で特にこちらは何もしていないのに契約が転がり込んでくることは一定数起きているはずです。
こうしたことはこれらの一連のプロセスを全て営業職側で担わなくても、契約獲得が実現できる何よりの証拠ではないでしょうか?
営業という仕事の真の姿
では、どうすればこうしたお互いの情報開示が進むのでしょうか?
答えは簡単です。
繰り返しになりますが、お客様に好かれ、仲良くなることです。
このことでお互いの情報開示が深まり、お客様と営業職の2者による課題解決の検証が実現します。
こうした情報提供はお互いの無駄を削り、効率的な意見交換をも可能にします。
あくまで理想ですが、こうした展開に近付けば近づくほど、契約に近付いてきます。
そして、話術やテクニックにこだわることなく、地道に誠実にお客様に接することで、こうした展開を数多く生み出すことこそが営業という仕事の真の姿ではないでしょうか?