ファッションに、こだわりがありすぎて、ないのと同じ状態になっている
美と個性を表現する、生きた芸術としてのファッションに、自分は接続する回路がない……という話を先日書きました。
それでも私は着る物に対して、ストレスフリーな訳ではなく、むしろ悩みだらけです。
しかし、ファッションに対して関心も低ければ注ぐエネルギーも少ないという状態で、ただ漫然と「満足はしてないなぁ」と思っているだけだったので、一体これは何なのだろう……と思っていました。
で、自問自答ファッションやムーンプランナーを通じて、あるいはその他の色々な思考実験を通じて、あれやこれや考えて出た結論があります。
私は、着たい服がわからなくて悩んでいるのではない。
シンプルに、「着たいと思える服に滅多にめぐりあわない」というだけなのだと。
★★★
というのも、私は「最高の品質」を求める人間ではないのですが、複数の極端な価値観を並立させた内部構造を持っていて、それらが折り合える場所が極めて少ないために、納得できるポイントが単純にとても狭いのです。
↑これは、自分では完全に盲点になっていて、長らく気付かないところでした……。ムーンプランナーさんでパーソナルウィッシュリストサービスを受けた時に指摘されて、すごく驚きました。(その話はまた別に書こうかな)(このパターン多すぎる)
私が服に求める条件は、
「エシカル性を明示、もしくは意識していること」
「天然素材で肌触りがよく、柔らかいこと」
「自分が好きな色であること(グレイッシュなグリーン系、生成り色、ペールブルーや青みがかったペールピンク)」
「自宅で洗濯できてノーアイロンで着られること」
「雑に着ていてもだらしなく見えないこと(着方に神経を遣わないといけなかったり、袖や裾のロールアップが必要だったりするものは厳しい)」
「締めつけがないこと」
「作業しやすく、動いている時に周囲のモノにひっかからないこと」
「意図しないで発してしまう強い主張や、ノイズがないこと」
……です。
書いてみて驚きましたが、条件多いな!
そしてこの条件を満たした服、あまりないことにお気付きでしょうか。
まず「エシカルに作られているとある程度自分で納得できる」という条件だけで、ふつうに手に取れるブランドの9割はアウトオブ眼中になります。大抵のブランドは、エシカルポリシーが明示されていない(というかそもそもそこを考慮するという概念自体がない)ですからね。
別に他人が着る分にはそれをどうこうというのはないのですが、自分が着るとなるとそこに意識が集中してしまうくらい、私にとって非常に重い条件なのです。
加えて、合成繊維の服がNGです。
肌触りも苦手だし、衣擦れの音も苦手。さらにマイクロプラスチックの放出を招くことを常に考えてしまって、洗濯する度に神経を遣うし気が滅入ります。これも、「他人が着る分には別に気にしないが、自分が着るとなると意識が向いてしまう」部分です。
縫い糸やゴム部分はもうどうしようもないのであきらめますが、メイン布地部分は混紡されてないものを必死に探しています。
ちなみにこのNG項目で一番キツくなるのが、靴下やインナーだったりします。オーガニックコットンを使用しているアイテムでさえも、伸縮性の確保のために大半はポリエステルかナイロンが混紡されているので、選べるアイテムはものすごく少ないです。
……と、このような、他人から見たら神経症を疑われそうな複雑な条件ゆえ、私が着る服は、フェアトレードやエシカルファッションやオーガニック・ナチュラル原料を基本にしたブランドがメインで、そういうところは通販が主戦場になっており、試着をするのがかなり大変です。
試着をするのが大変だと、ご存知の通りジャストサイズの服を見つけるのにお金のかかる試行錯誤(笑)が必要になります。
加えてフェアトレード系の服は、当然ながら現地の技術や文化をリスペクトしたデザインになっていることが多く、形もいわゆる骨格ナチュラルな人向けのものが多いので、強い主張がない服を求める骨格ウェーヴ系の私が着ると、かなり違和感が出てしまいます。美しくてなくてもいいのですが、違和感があっては困ります。
それならばミニマリストご用達の最終兵器デニムパンツと白シャツ(ブラウス)で行けばよい……!と言われそうですが、そしてエシカルデニムも一応存在はするのですが、デニムは生地が固くて肌触りがダメなのです……。
若い頃はそれでも無理矢理着れましたが(若いってそれだけで押し通せる生命力がありますよね)、今はもう無理。着ている姿に違和感があるし、着ている自分も快適さがない。結構締めつけ感も強いし。
加えて、私が起きてる時にしている活動は、家では書くことと家事とパソコンの前の作業と読書とお茶を淹れて飲むこと、外では街歩きと周遊型謎解きと買い物ときちんとしたお茶を出すカフェやレストランで食事すること……なのですが、デニムという主張が強い衣服は、このシチュエーションにあまりなじんでくれません。
周遊型謎解きや街歩きではまぁいけるかなと思いますが、その足でそのままコース料理を出すレストランに行ったりもするので、何か違う……と思ってしまいます。まぁ日本のレストランは、よっぽどでない限り、服装で断られたりはしないけど、自分の気持ち的にね。
カジュアル!職人性!アクティブ!シンプル!あるいは逆方向の「こだわらないというこだわり」!(笑) その全てが、自分にない要素で、持て余します。
★★★
……こんな感じで、現実の私の服の選択は、消去法で始まることがほとんどです。
消えなかった数少ない選択肢の中から、必死に探しているのが、私のワードローブです。
なので私の服の悩みというのは、ファッションを知ろうとかいう話よりも、
「妥協せずに探し続ける」
というシンプルだけど途方もない忍耐でしか、解決できないのかも知れないなぁ……という結論になりつつあります。
★★★
ここ数年は、リネンの服のみを展開するという、かなり変わったブランドのwafuさんの服をヘビーローテーションしています。
wafuさんは正面切ってエシカル消費を第一目標にしているブランドではないのですが、実際には非常にエシカルな試みをたくさんされています。
また、リネンはコットンよりも環境負荷の低い繊維なので、そこも嬉しい。(コットンは水消費が多いので栽培できる場所が限られ、無農薬栽培も手間がかかります、それだけの価値のある素晴らしい天然繊維ですけど)
加えて、色々なデザインの服(外出着から部屋着、ガチの下着になるインナーまで)を展開されているので、消去法に消去法を重ねる私でも(笑)選べる服が結構あるのがありがたいのです。
あとは、オーガニックコットンのウェアの老舗、PRISTINEさん。
コットンの服・インナーについては申し分のない品質と美しいデザインのアイテムを展開していて、たぶん創立のかなり早い頃から買っています。
ただ、PRISTINEさんの服は、たぶん骨格ストレート向きのデザインで、スカートやワンピースの丈がすごく長くてストンとしていて、私が着ると最悪お引き摺りになってしまうので、実はボトムスが全然着れません……。
インナーやトップスはそれなりに着れるので救われた。よかった。
その他にも、群言堂さんやPeople Treeさん、ネパリ・パザーロさんなどで、ぽつぽつ服を見つけております。何とか、やっております。
★★★
……自問自答ファッションらしく、自分のコンセプトの話とかしたかったのに、単に自分の鬱陶しいこだわりと消去法を並べる話になってしまいました。
この全部のこだわりを満たすのはあまりにも難しいので、私は服という物を、基本全て妥協して買って着ておりました。もうそれが当然すぎて、妥協とすら思っていませんでした。
そして妥協しているという意味ではあらゆる服が同じレベルなので、私は「服にこだわりがない」人間だと自分で思い込んでいました。
こういう「こだわりがありすぎて、逆にこだわりがないように感じられる」ことって、意外と存在している心理現象じゃないかなぁと思います。
自分では、案外気付かないものですよね。
それでもまぁ、気付いてしまった以上は、心安らかにやっていけるように、妥協しないで服を探していくつもりでおります。