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『鉄道探偵と氷点下2℃の幻影』 クリアしました

 最後に見えるものに一点賭けした感があります。

 毎年やっている、京王線・都営線(順不同)の周遊謎解き「鉄道探偵シリーズ」の2023年版新作をプレイしてきました。

 鉄道にまつわる事件や謎を解決する「鉄道探偵」、様々な変遷や代替わりを経て、今はKと助手のJの二人体制となっております。二人がそれぞれ別の事件に遭遇し、それが実は関わりが……という「待ってました!」のストーリーです。

 周遊型謎解きの雄と言っても過言ではないタカラッシュさんの製作なので、手堅い作りのプログラムでしたが、正直これまでの鉄道探偵やタカラッシュさんのプログラムと比べると、素晴らしい出来!とは言いにくい気もします。いえ、十分すぎる面白さはあるんですけど。タカラッシュさんのウデを以てすればもっとできたはず、という思いは拭えない。
 とはいえ、遊んでいる最中は楽しめましたので、「遊んで損はない」と言えます。なんて言うか、私の要望が贅沢過ぎるのかなとは思う(笑)。


全体的に移動がメインなのが、良くもあり残念でもあり

  • 今回は、全ての手がかりやヒントが駅の改札近辺に掲示されており、駅から離れて歩くことは、プログラムに従う限りほとんどありません。
    周遊というよりも、スタンプラリーみたいな感じがあります。駅やその周辺のことを知るチャンスは全然ないので、「土地の空気を活かす」場面が少ないのは残念だったところです。

  • 逆に寒空の中えんえん歩かされる心配はないので、あまり天候に左右されないで遊べるとも言えます。

  • また、移動距離が少ないとはいえ、ヒントを掲示する場所はなかなかに工夫されていて、「こんなところかー!」と思う場所も結構あったので、そこは楽しめました。

  • 「座って平たい場所を確保しつつじっくり取り組まないと絶対ムリ」な謎はあまりないので、最悪立ったままでも何とかなります。ただ、それと表裏一体というか、駅周辺に座って謎解きできるお店やスペースがほとんどないケースも多く、私のようにすぐ座って解きたくなるヘタレにはしんどいものがありました(笑)。

  • また、立ったままでも何とか解ける程度の謎、がずっと同じペースでポンポンポンと出されるので、休憩のタイミングをどこで見つけるのかが悩ましかったです。自分のやりたいところで休んで大丈夫なのか、この直後にもっとややこしい謎が来てまた座らないといけないのか……と悩むあまり、先の問題をフライングで確認することもしばしばでした。

「解けない」より「間違える」ことが多い

  • 謎の難易度は、鉄道探偵シリーズとしては平均的……な気がしますが、今回は「全然わからない」というよりも「ミスリードに引っかかる」「勘違いする」という場面が結構発生しました。
    わざとそういう傾向の謎を集めたのか、たまたまそうなったのか、他の人はそうではなくて私との相性の問題なのか、その辺はよくわかりませんが。

  • 勘違いして考えていった結果、「辻褄が合わなくなって詰まる」というのなら悩むだけなのですが、妙な整合性が取れて答えらしきものが見つかった挙げ句勘違いした駅に向かってしまう場面があり、そうすると移動距離が長いプログラムなのでなかなかしんどいことになります(苦笑)。

  • 最後のエクストラ編は、恒例の大工作が始まるのですが、こちらの指示についてはちょっと「え……これはおかしくない?」と思う場面も正直ありました。この辺も、工作モノでうまく雰囲気を作りながら誘導するタカラッシュさんにしては、珍しいなと感じました。
    解説を見ても、「いや今までの説明だとこの単語が示してるものはコレのことなんだからコレを持ってこようと四苦八苦するのが当然で、アレをここに持ってこいって意味にはならんでしょう?」という感想です。

  • ただ、最後の工作で見えるものは綺麗です。これを見せたかったんだなというのはとてもよくわかりました。

  • あ、あと都営編謎6も、「やりたいこと、ハマった時の気持ちよさを体験させたいのはわかるんだけど、実行するのは結構しんどい作業で、時間がかかるから、絶対ここで詰まった人が続出して人が溜まるな……」という感想です。気持ちは分かるがだがしかし、という感じ(笑)。

ストーリーはオーソドックスだけど素敵です

  • 背景ストーリーは、鉄道探偵シリーズの伝統にのっとって、謎をちりばめつつ最後はハートウォーミングで終わります。その点は安心して遊べます。最後にしみじみと「よかったね……」と言える。

  • 登場人物たちが、みんなどこか不器用で意地っ張りで、何かが足りなくて、そのために右往左往しています。鉄道探偵たちも含めてね。
    最後にそれらが集まっていって大きな大団円に向かっていく流れは、小さな謎のパーツを集めて結末を見つけていく周遊型謎解きという遊びそのものでもあるし、同時に「人間、ひとりじゃ大したこと出来ないけど、協力するとできることがあるよね」というちょっと大きな話にも通じる気がします。

 という訳で、楽しめる謎解きなのですが、個人的にはあと一押し魅力が欲しかったかなと思います。
 途中で行った某駅(ネタバレになるので名前が出せないのがもどかしい)で、休憩しようと正直全然期待していなかった平凡な住宅街に出てみたら、意外にも個性的なお店が色々並んでいる侮れないところだったのが、今回の発見でした。こういうことがあるから周遊型謎解きは楽しいですね。

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