「遅すぎる『大好きだった』」に胸が苦しくなる話(*ネタバレ注意)
気の合う異性は、同性の友達よりも居心地が良い場合がある。
そしてその彼、または彼女が、実は自分にとって「最高の相手」であったと、後から気が付いてしまうことは割とよくある話である。
持田あきさんの「初めて恋をした日に読む話(はじ恋)」が好きで、最新刊の発売を心待ちにしていた。
最新刊は「届くはずだった恋」に、少し自分を重ねて、ひたすら切なくなった。
私にとって、主人公の春見順子先生は憧れ。
美人なのに飾らない性格、かつて東大を目指していた頭脳、そしておしゃれ。
元ガリ勉のダメダメアラサー塾講師が、1人の不良少年を東大に入学させるための突然熱血講師になったと同時に、生徒、元不良の同級生、エリート幼馴染から同時に好意を寄せられるというなんとも羨ましい展開。
話を重ねるごとに、あのダメ塾講師はどこに行った?、というくらいの変貌ぶりに、10年以上前に受験生だった読者としては、「順子先生とだったらもっと勉強できたかも」と、過去に受験に苦しんだ自分に思いを馳せてしまう。
ドラマにもなった本作の中で、順子先生に思いを寄せるメンズの中では、元不良のクラスメイトで、順子が担当する不良生徒の担任をしている「山下君」をずっと応援している。(山下君役の中村倫也さん素敵でした……)
最新刊は至る所にその山下君と順子の高校時代のエピソードが織り交ぜられている。
親にも言えない本音や疑問を何故か言えてしまったり、辛くなったら呼んでしまったり......
お互いカッコつけなくても良い存在であったのに、タイミングや勝手な思い込みが邪魔をして、「彼/彼女の相手は自分じゃない」と何も言わずに勝手に諦める。
そして結局大人になってから諦められない、やっぱり大好きだったと気がつくのは、かなりの確率でタイミングを逃している。
そんな私も、学生時代の同級生に対して、同じ気持ちになったことがある。
楽しかったことも、仕事の愚痴も何でも言えて、食べたい物や行きたいところ、観たい映画もピッタリ合ったのに、
お互いにお互いのことを勝手な思いこみで「脈なし」と判断してしまって結局すれ違って、もう人生が交差することもないだろう。
「はじ恋」の話に戻ろう
順子は前を向き始めた。恋愛音痴でグズグズしてた姿を見てきたので拍手を送りたくなる。
でも山下君の諦められない気持ちも痛いほどよくわかる。
ようやく言えた「諦められない」「大好きだった」「一生大事にしたかった」。
もう届かないとわかっているからこそ過去形でしか言えない山下君の気持ちが、切なくて切なくて、読み返すたびに胸を締め付けてくる。
山下君も彼なりの結論で幸せになってほしいと、初登場からずっと山下君を推してきた一読者は願うばかりです。