【❁和歌・短歌❁】1.花ぞこの世のほだしなりける(和泉式部)
春になると、ふわぁと頭を漂う和歌がある。
あぢきなく春は命の惜しきかな花ぞこの世のほだしなりける 【和泉式部】
どうしようもなく春は命が惜しいと思うものだ。(いつ死んでもいいと思っているけれど、)花こそがこの世に私を留め置くものである、
というのがおおよその訳でしょうか。
冬の寒さの中でモノクロになりがちな世界から色があふれだす春へ。
花のあざやかさや優美さに心がときめく。
その「ときめき」という心が動くこと、感情がわき上がることこそが「生きている」ことそのものであり、だからこそ「花」は「この世のほだし」なのである。
「花」という何ということのないモノが「命」「惜しき」「ほだし」という言葉と結びつくとき、「花」が強大なエネルギーを持っていることに気付かされる。
花が持つエネルギーを捉えた和泉式部の感性にうなる一句である。
※和歌や古文で「花」と言えば「桜」ですが、現代的に「花」一般と見ても成り立つように思います。
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