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「(障害)福祉やってます」に「おじいちゃんおばあちゃんの介護大変ね」って返されたときに、ぼくがちゃんと否定するわけ


福祉やってます。

と言うと、おじいちゃんおばあちゃんの支援大変だねぇ。
と、必ずと言っていいほど高齢者介護をやっていると思われる。

これは結構福祉従事者あるあるなんじゃないかな。

「福祉」というと、=高齢者介護の数式が出来ていて、老人ホームで仕事してるんだよね?
となる感じ。

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なんだかやきもきする。

ひとくちに福祉と言っても、高齢者、精神障害者、知的障害者、身体障害者、発達障害者、子供、引きこもり、病気などなどなど、それら複合的な属性を持つ人たちに対して、支援内容も生活、学習、仕事、居場所、住居などなどなどものすごくたくさんのバリエーションがある。

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高齢者介護は福祉の中の一つのジャンルにすぎない。

福祉には本当にいろいろな形があるのに、福祉=高齢者介護と思われちゃうのはなんでだろう。

ちなみに私はいまは障碍者向けグループホームの世話人をしています。
身体障害、知的障害、精神障害の1つ以上を持っている、20代~60代の年齢の方が入居しています。

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その前は困窮者の就労準備支援をしていました。困窮者とはそのものズバリ「困っている人」のこと。障害者でなくても、お金があっても、家族がいても、困っている主観があれば支援の対象になる。

そうです。事業によっては、福祉の対象は、こんなにも広い。

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じゃあなんで福祉=高齢者になるのかって話なんだけど、これは単に福祉対象者の中で高齢者が一番身近にいる存在だからだと思う。

早くに亡くならなければ、誰でも高齢者になる。親や祖父祖母がいれば、必ずと言っていいほど、高齢者が身近にいることになる。

これに障害者を比較すると、障害者はそうじゃない。
誰もが障害を持つ可能性はあるけど、誰もが障害者になるわけじゃないから。
人によっては1度も意識的に障害者に関わらないまま人生を終えることもあるだろうな。

だから、知らない。

いわゆる健常者用に作られた社会の中で、彼らが自分の抱える困難をどんなふうに補って生きているか、どんな仕事をして、どんな人間関係で、どんな世界で生きているか。知らない。

どんな喜びを持って、どんなことでどんな顔で笑うのか知らない。

同じ社会で生きている人達のことがこんなに分からない構造になってる。

家族や友人にいない限り、社会で障害者と関わる機会はじつはほぼ無い。

社会に生きる健常者は、障害者と出会わずにすむ世界で生きてる。障害者には、支援者以外の健常者と出会わずに生きられる世界がある。


じゃあなんで分断しちゃうのかっていうと、健常者の社会にはルールが多すぎて、障害者が参加するのがとても難しいからじゃないかと、僕は思ってる。

挨拶をすること。会社に自分で行くこと。休まないこと。上下関係を守ること。人の言葉を邪魔しないこと。

こんなに簡単に思える、僕らが当たり前に受けいれている常識が、人によっては大きなハードルになる。

そして、圧倒的多数の「健常者」たちは、自分たちの世界と社会と常識こそが主流であると信じ込んでいる。

二つの世界は隣合ってるのに分断されて、どちらかがどちらかに関わり合うことはほとんどない。

それで「健常者」の社会は回ってる。その結果の分断、価値観の違い、違いによる更なる分断。

負のループ。
広い視野を持てば、上手く回ってるとは言い難い社会。

でもそういう構造になってる。価値観が違う人達は混ざり合わずに違う世界を用意されている。

そんな構造は不健全だと思う。だから、いろんな福祉の世界があるんだって、いろんな人に知って欲しい。

社会福祉士には「ソーシャルアクション」というミッションがあります。それはね、社会への働きかけという意味。知識の伝達もそれに含まれます。

だから、知って欲しいということにこだわるのは、社会福祉士のひとつの役割でもある。

だけどそれよりも何よりも、僕は彼ら障害者のこと、素晴らしいって思ってるから伝えたい。

だって素晴らしいもの。
困難を持ちながら生きる彼らは。
優しくて強くてわがままで賢くて、とても人間らしいもの。

社会の常識や価値観なんか飛び越えて、むしろそれを超えたところに、彼らの生きる世界がある。
健常者の社会と価値観に慣れきった僕には予想もしないことを思う。言う。行動する。

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それに合わせて自分の価値観が更新される感じは、何度体験しても本当に面白い。

この感じをもっとたくさんの人に味わって欲しい。それで、例えばたとえば身体の部位が欠損している人。常に寂しい人。子供のままの脳で大人になる人。気分が落ち込んで死にたくなる人。幻聴や幻覚がある人。そんな人達の価値観をもっと社会が共有できれば、面白くて、みんなに優しい世界になるだろうな、と思ってる。


だからぼくは言います。
福祉やってますって。
「おじいちゃんおばあちゃんのお世話大変だねえ」
という人には
僕が関わってるのは、高齢者じゃなくて、障害者向けのグループホームですよ
って。

そしてこう続けます。

そこでは色んな人が暮らしていて、例えばね・・・

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おわり

注釈
人の支援に関わるひとには「秘密保持」という義務があります。個人が特定できる情報などは第三者に話さないということです。だから、それを超えては伝えません。伝えられる範囲でお話ししています。

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