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恥ずかしい卒業式(第26話)

SNSで大反響だった実話
小5と余命宣告」続編(第26話)です。

父ひとり、子ひとりの家庭で育った娘が
小5の時に、その父の余命宣告を受け
その後の覚悟と成長を描いた実話。

脚色は一切なし。
むしろ、各方面に配慮し
わざわざ抑えて書いているくらいです(笑)

ということで、
これは長~く続く連載ものです。

初めての方は、1話からどうぞ。




「いいよなぁ、あんなんで受かって」

「こっちは、やってらんないよな」


誰かが放ったひと言が、

合格の喜びを、完全に打ち消した。


明らかに場違いな、居心地の悪い集会。


早く終わんないかな。。。


他の同級生たちに

負い目を感じていた訳でも

見下していたつもりもない。


ただ、みんなと

違う世界を見てただけ。


だから

ここにいるすべての人が

この場所に、私が居ることを

許してくれていないような

そんな気分だった。


卒業までの過ごし方。

なんて先生たちの

つまんない話もいらない。


早く終われっ!


ただ座っているだけなのに

すごい長い時間を耐えた気がした。


休み時間になって

やっとあの場所から、

あの空気から解放されて

ホッとできた。



でも心には、

ずっと残っている

あの孤独感…



合格発表が終わった後の

中学校生活なんて、遊びに行くようなもの。


部活の仲間だった友達と

気楽に楽しく過ごす中学校生活が続いた。


掃除の時間。

仲の良い友達とおしゃべりしながら、

体育館のトイレ掃除をしていた。


「クランキー(サクサクチョコ)が好きすぎて

 止まらないよーー。どうしよー!」

「一生、食べたい!」


「でも、ニキビ出来ちゃうし」


「あーー、でも食べたい!どうしよう!」


なぁんて、女子トークをしながら

ふと…


このまま時間が止まればいいのに...


もう卒業が間近になっていくと

些細な日常も、大切に思えてきた。



「卒業したくないよー」

「みんな離れちゃうなんてヤだよぉ」


よく半泣きしながら、そんな会話をしていた。


決して数は多くはないけど

私は、友達に恵まれていた。

部活の友達は、特に絆が強かった。



高校以上は、義務教育じゃない。

それぞれの意思と環境の中で

自分たちが決めて、進む路。


1.全日制(普通の)高校に行く子。

2.専門学校や働きながら学ぶ定時制に行く子。

3.進学しない子。


一般家庭のほとんどの子が、

1を選択する。


いや、選択できる と言った方が正しい。


それが、どれだけ恵まれたことなのか

気づいてない人も、ほとんど。


今、在る

「ふつう」は、当たり前ではない。


誰か、何か、によって、

与えてもらったもの。


私は、それを

これから送る高校生活の中で

イヤというほど味わうことになる...


あと〇日かぁ。

卒業式までのカウントダウン。


「寂しいけど、引っ越すわけじゃないから。

 また、いつでも遊べるよ!」


そうやって、

友だち同士で慰め合いながらも

ホントは、薄々感じていた。


いっしょに過ごす時間が

あったからこそ

「いっしょ」を見つけれた友だち。


きっと、これから みんな

離れていっちゃうんだろうな


心がね・・・


寂しいな


居心地の良かった場所を

離れる時の複雑なココロ。



卒業式当日。


呼んでもないのに、来やがった。


ヤツが...



なんでいるんだよ!

今日が卒業式なんて、

誰がアイツに教えたんだ!


しかも

カメラとビデオ

更にはスタンドまで持って...


中学生の卒業式に

そんな大荷物でやってくる父親、

娘からしたら、大迷惑!


保育園のお遊戯会じゃないんだから

ホント恥ずかしい!!


他の、どの親を見ても

そんな大荷物を持って

参列してる親、いないよ!


頼むから、止めてくれよっ!(怒)


はぁ、もうホントイヤだ。。。




式が終わった最後

体育館から、校門までを

親子並んで歩いていく時間があった。



恥ずかしすぎて、

近づきたくない...


「お父さんと歩いてやれよ。」


ものすごい距離を取って歩いていると

中2の時の先生が声を掛けてきた。


「ヤだよ、恥ずかしい...」


「お父さんだって、嬉しいんだよ」


「いや、ムリだよ・・・。」



すぐに、

その先生からも離れた。




涙が、勝手に溢れてきたから



そんなの、ちゃんとわかってるよ。



身体しんどいだろうに

気合い入れて、外出してるのだって

ちゃんとわかってんだよ。


保育園のお遊戯会みたいに

娘が、かわいいと思っていること。


この卒業を、嬉しいと思ってること。


いちいち他人なんかに言われなくても、

そんなん、ちゃんとわかってるよ!



だけど、恥ずかしいんだよ!



生きて、この場に居ること。

これまで、なんだかんだありながらも

死なないで、育ててきてくれたこと。

彼なりに、想ってくれてきたこと。


ありがたいと思ってる。



だけど、そんなこと

もっと恥ずかしくて、

言えないんだよっ!!



その心の機微が

涙となって溢れてきた...



自分では、わかってなかった。

なんで涙が止まらないのか。



ただ、

それを人に見られたくなくて


そして、それを止めるのに必死だった...




→ 一番キツかった入学準備品(第27話)


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