子どもが認める大人(第9話)
SNSで大反響だった実話
「小5と余命宣告」続編(第9話)です。
父ひとり、子ひとりの家庭で育った娘が
小5の時に、その父の余命宣告を受け
その後の覚悟と成長を描いた実話。
脚色は一切なし。
むしろ、各方面に配慮し
わざわざ抑えて書いているくらいです(笑)
ということで、
これは長~く続く連載ものです。
初めての方は、1話からどうぞ。
ちょっと大きな病院に
診察に行ってみたら
当日入院することになった。
という急展開。
学校も部活も、堂々と休める!!
なんとも好都合な大義名分が
手に入ってしまったからには
ドキドキ よりも ワクワク 多め。
という私の内心は
誰にもバレていなかったはず?
その時は、父も入院中だったため
心配したお節介な担任が
家まで迎えに来てくれた。
わざわざ学校を抜け出して
送ってもらうような
距離でもなかったんだけどね。
生活保護を受けているような
家には、もちろん車なんてない。
病院に向かう途中で寄った
ガソリンスタンドで、
生まれて初めて嗅いだ
ガソリンの匂いに吐きそうになりながら
車内に刺す強い日差しもまぶしくて
目を細めていた。
「家の鍵はちゃんと閉めたか?」
「忘れ物ないか?」
「あっ!!
台所の排水溝のゴミ、
捨ててくるの、忘れたぁ!」
「どうする?戻るか?」
「いや、いいよ(笑)」
買ってもらったジュースを片手に
ちょっとしたドライブ気分。
この先生は、
基本、私の意思を尊重してくれた。
もちろん
勉強の成績がうんたら...
なぁんて話をしてきたこともなければ
必要以上に、「こっち側」に
近づいてくることもなかった。
ウチの事情をちゃんと理解してくれていた。
学校内における
私たちへのイロイロな特別ルールが
出来上がったのも、
きっとこの先生が
動いてくれたおかげだったと思う。
そして、何よりも!
決して、大人の正論を押し付けてこない。
だから私は、認めた。
少しだけ気を許していた。
病院到着後、入院の手続きを終え
病室に入ったところで
先生は学校に戻って行った。
さて、1人になって
まずやりだしたことは
荷物の設置だ。
使い勝手を考えて、
イロイロ置いていく。
ずいぶんと、こなれているのは
入院が初めてじゃないからだ。
実は、これで5回目。
1回目は
「遊具から突き落とされ足ポキッと事件」
2回目は
「自転車の車輪で足の親指スパーン事故」
3回目は
「足の親指移植手術」
4回目は
「股関節ツッパリ入院」
んで、今回は
「膝カックン手術」
と言ったところだろうか・・・
これらをネタにしないのは
この後に起こってしまう展開の方が、
遥かに濃厚だからだ。
入院2日目。
半月板損傷の内視鏡手術。
難易度は決して高くない。
命を落とすリスクも
限りなく0に近い。
嗅ぎ慣れた手術室フロアに
ほんのり残る麻酔独特の匂い。
懐かしいなぁ。。。
目が覚める時には、きっと病室だ。
「ぅ~~ん」
「ん~~っ」
もうろうとする意識の中で
自分がうなされているのがわかる。
喉が渇いていて
口の中に あの麻酔の
イヤな後味が残っていて
気持ちが悪い…
自分がうなっている声と
眉間にシワが寄っている
感覚だけはわかる。
「ん~~」
でも、その後すぐ、
温かくて大きな手が
そっと自分の額の上に
優しく置かれたのを感じた。
また来てくれた?のかな?
その手のぬくもりを感じながら
眉間の力が抜けていった。
心地よく眠りに戻り
朝まで起きなかった。
起きたら、病室で、
横には誰もいなかった。
あれは、
誰の手だったのだろう?