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【記憶を刺激する写真5】フランス・リールのパン屋PAUL
パンを焼いて、パン屋になりたい。そう思ったのは、小学2年生の社会見学で町の大きなパン工場を訪れたとき。たくさんのパンが作られる工程に「すごいなぁ」とただ感心し、菓子パンの甘い香りに、すっかり参ってしまった。
私が育った家では朝ごはんも米飯だったから、家でパンを食べることは、それほど多くはなかった。それだから、パンを買ってきて食べるというのは少し特別なことだった。
成長するにつれ、家でパンを食べる機会は増えた。
学校の近くにあったパン屋さんでは、友だちとパンを買って分けあったことを覚えている。
大きなスーパーの一角に構えていたパン屋では、チョココロネがお気に入りだった。
店内が鏡張りでキラキラ輝いていたお洒落なパン屋では、食パンを買うことが多かった。
駅前の小さなパン屋さんは、種類は少なかったけれど開店時間が長いのがよかった。
町のあちこちにあったパン屋さんはすべて、いまは私の心象だ。田舎に帰ると、パン屋がなくて寂しい。
いや寂しいのは、たくさんの住民が都会へ出ていって、この町でパンを買う人が減ったことのほうだ。