東京スイーツ部
東京スイーツ、みんなで食べれば怖くない。
そう、一人だとためらってしまうこともみんなでやれば怖くない。
三人も集まれば無敵だ。
都内のチョコレートパフェが有名なお店。
店の外には女子の行列。
店内も女子で溢れかえっている。
その中で一番注目を浴びているのが制服を着た男子高校生3人。
お洒落イケメンの風人、眼鏡インテリの健太、巨漢の優平。
この3人の共通点は2年B組であること、そしてスイーツをこよなく愛することだ。
3人の前にチョコレートパフェが運ばれてくる。
優平がすぐに食べようとする。優平の手を掴む健太。
健太「まてまてまて、まずはこの造形美を楽しまなくては」
風人「そうだぞ、このチョコレートの層は今この瞬間しか楽しめない。そう、今の僕たちのかけがえのない時間と同じなんだよ」
優平「いやいや、できた瞬間から劣化するんだよ。だから早く食べないと失礼やん」
健太「まぁいい。ゆっくり味わいたまえ」
優平「なんでやねん、健ちゃんがシェフじゃないやろ」
いろんな角度から写真を撮る風人。
風人「優平のエセ関西弁がいちいち気になるな」
健太「僕は風人に見とれてる女どもが気になるな」
周囲の客が熱い視線で風人を見る。
と同時にあの3人の組み合わせ謎なんだけど、という視線も送る。
優平「チョコレートおいしー。これは校庭の色、これは体育館の床の色」
健太「その独特な表現控えていただけないかな」
風人「これは初恋の味、これは2番目の彼女の味、これは3番目」
健太「気色悪いな」
風人「じゃあ、健太のお手本見せてよ」
健太「これはプラリネのチョコレートムース、とても舌触りがなめらかでまるでシルクのよう、その下の層は・・・」
風人「相変わらず凄いな、将来パフェ評論家になりなよ」
健太「そんなんじゃ生活できないよ。将来は公務員になるんだ」
風人「公務員ねぇ、健太らしいね。優平は?」
優平「僕は実家の和菓子屋を継ぐよ、本当は洋菓子が好きなんやけどな」
風人「2人ともすごいな、高2でやりたいことが決まってて」
優平「風人はどうするの?高校卒業したら」
風人「俺は、どうしよう。毎日が楽しければそれでいいんだけどな」
優平「僕のお店で働く?」
風人「優人の言うこと聞かなきゃきけないんでしょ、それは嫌だな。
葵先生と結婚でもするかな」
健太「早まるな。男子校の中での唯一の女性だから魅力的に見えるのかもしれないが、世間は広いぞ」
優平「でも綺麗やん」
健太「期末試験、aがdに見えたって理由で英語は赤点ギリギリだったんだ。酷くないか?融通の利かない人とみた」
風人「じゃあ、やめておこうかな」
優平「なんでやねん」
風人「風人と書いて風のように流されながら生きる人なんだよ俺は」
健太「違うよ、新しい風を巻き起こしたり人の背中を押すような風だろ」
優平「健ちゃん・・・」
健太「前プリンアラモード食べてるときに風人が自分で言ってたから」
店員が優平のコップに水を注ぐ。
健太「優平、もう水飲むなよ」
コップに伸ばした手を引っ込める優平。
健太「この人、何回水飲むの?食べ終わってるなら早く出て行って欲しいわって思われるだろ」
風人「食べ盛りの高校生だから許してくれるよ、な、優平」
優平「そうだよ、ていうか健太が食べるの遅すぎや」
健太のパフェは残り半分。
健太「2人とももっと味わって食べなよ。フランススイーツ界の巨匠がこのパフェに込めた想いも想像すると味に深みが出るんだ」
風人「健太の味の表現は分かりそうで分からないから、もっと俺たちに伝わるように言ってくれよ」
健太がコーヒーゼリーの層を食べる。
健太「渋さの中に苦みがある、葵ちゃんに告白した時のような苦み。そして失恋の痛みを知った分、大人の渋みが増した」
驚く風人と優平。
風人「え?健太、葵先生に告白したの?いつどこで?」
優平「おもろいなー、墓穴掘ってやんの」
赤面する健太。
健太「いや、風人が告白した時を想像しての食リポだから。世間は甘くないぞって教えてやってんの」
風人「そうかそうか、健太は優しいな。俺のためにありがとう」
優平「健太より風人の方が大人だな」
優平が店員を呼びイチゴパフェを注文する。
健太「チョコレートパフェの有名店なのに邪道だぞ」
優平の前にイチゴパフェが置かれる。
ゴクリと唾を飲む健太と風人。
優平「期間限定のイチゴパフェおいしいなぁ。一人じゃこんな女の子の多いお店でスイーツ食べれないやん。食べたいときに食べれるだけ食べる。これ僕のモットーやで」
風人「そうだな、あと1年で俺たちバラバラになるんだもんな。今しかこういうことできないもんな」
風人が店員にイチゴパフェを注文する。
健太「君たち、自分の欲望に理由をつけてスイーツ部の掟を破ったな。イチ店舗イチスイーツだろ。それに高校を卒業してもスイーツ部は続くからな。彼女作ってスイーツ食べに行ったら破門だ」
風人「スイーツ部は体育会系だな」
優平「健太が公務員になったら奢ってもらおう」
健太「これからも俺たちで東京のスイーツを食べつくすぞ」
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