新しい価値を和えて 伝統を受け継ぐ
”日常で、日本の伝統工芸に触れる機会はどれほどあるだろう。”
数日前、有田焼を友人からプレゼントされ生まれて始めて手に触れたときふとそんなことが頭をよぎりました。
こんなにも美しく、スタイリッシュで、馴染みやすい工芸品から、私たちはあまりにも縁遠い生活を送っていることに少し寂しい気持ちにもなっていました。
そして先月、また、この伝統工芸と存分に触れ合う機会がありました。
webメディアmilieu(ミリュー)さんで特集され強烈に惹きつけられた「aeru」さんの東京直営店へ訪れたのです。
(株式会社 和える さんのホームページはこちらhttps://a-eru.co.jp/story/)
しっとりとした静けさに包まれた店内には、伝統工芸の品ものたちがお行儀よく並べられていて、入店者を温かく見守っているようでした。
店内に足を踏み入れると、なにやらチリーンという音色が響いています。
明珍火箸 と呼ばれる火箸をまるで楽器のように鳴り合わせているところでした。
かのスティービー・ワンダーさんが”東洋の神秘”と讃えたその音色。心に染み入るような透明感、それでいて居を正させるような鋭さもあります。
対応して下さった店員さんはメグミさんと、つっちーさんという方。
おふたりとも伝統工芸に関する造詣が深く、
ついつい時を忘れて説明やお話に引き込まれていっていました。
”漆の香りは今まで経験したことありますか?”
そういって運んできてくださったのは、漆器に入れられた白湯。一口頂きました。
嗅覚を研ぎ澄ませてみるとなるほど確かに、ふんわりと懐かしいような奥ゆかしいような香りがします。
何よりも驚いたのは、漆器の口当たりの良さ。唇に吸い付くような滑らかさです。
”接触障がいがあり、ご飯が自由に食べられなかった小さな子どもでも漆器を使用したら食べられるようになった”
とのこと。魔法みたいです。
こちらは、手を切らない木製のはさみ。
数ミリの隙間もないように調整した木同士を合わせて作る事で、摩擦だけで紙を切る事ができるのです。
こちらは、陶器でできたボタン。
あかちゃんの前掛けや、ストールの留めボタンにも応用できるそう。
陶器は触ると、ひんやり冷たいことを知りました。
こちらは私の出身地三重県から、伊勢型紙を使った紙風船。
こどもの頃に戻ったように、ポンポンと楽しく弾ませて遊んでしまいました。ちょっとやそっとじゃ破れないそう。
他にもまだまださまざまな品があります。
さて、
漆器の器でも、木製のはさみも
aeruにある品々は子供だけでなく、どんな人にとっても一貫して優しいデザインになっているということに気づかされます
ちいさな子供、ちょっと不器用な人、肌が敏感なひと。
どんな”弱さ”を持つ人にとっても優しい。
aeruで扱われている伝統工芸は、
そんなユニバーサルデザインのような特徴があるようです。
伝統、というものは、悲しいことですがきっと
その時代背景に合わないものから順に排除されていくでしょう。
私たちが生きている今、当たり前のように存在しているものもいつか消えてなくなっているかもしれません。
それでも、後世に末永く伝えるべき価値のある伝統や文化が
日本にあることもまた真です。
それらに、時代が求める価値を掛け合わせることによってまた新しくなる。
私たちが死んでしまった後にも、確かなものとしてこの世に文化や伝統が引き継がれていけば、それはこの上なく素晴らしいことですし
その中で継承の担い手となる職人さん、またaeruのようなサービスに関わる方々が果たす役割はとても大きいと思うのです。
その後入ったスタバの目黒店でも工芸品のマグカップと出会いました。
こころなしか、コーヒー一杯の価値がぐぐっと引きあがったように感じました。
伝統工芸 モノ作り デザイン サステナビリティなどのキーワードに引っかかる方はぜひ訪れてみてくださいね。