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日記 2020年5月 コインロッカー・ベイビーの憂鬱。

 5月20日(水)

 明日の21日に関西の緊急事態宣言が解除されるとのこと。
 僕が所属している部署は現在クローズされているが、再開されるかも知れないと上司に言われる。
 更に、出勤日時の調整の相談を受ける。
 今まで僕たちに割り振られていた仕事はあってないようなものだった為、部署が再開されることで仕事をしていると言う実感は持てる。

 ただ、いろんなことが上の方針で場当たり的に決定されていく現状に戸惑うのも真実だった。一週間後の自分が何をしているのか、ぼんやりとしか掴めない不安定さに慣れるべきなのかも分からない。
 持った違和感はとりあえず持ち続けて、考えられるだけ考えておこうと思う。
 仕事帰りに「ハイキュー!!」の43巻を買う。

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 作者のコメント欄に以下のように書いてある。

 2030年にこの本を開いた人!!見てるー!?
 2020年の人たちみんながんばったよー!!元気ー!!?

 2030年にこの文章を読んでいる人はいないだろうけれど、もし万が一読まれることがあるのなら、「がんばったよー!!」と胸を張って言えるような生活を送りたい。

 5月21日(木)

 緊急事態宣言が解除され、正式に僕らが所属する部署の再開が決定した。
 ということで、出勤していた後輩と共にクローズしていた間の穴埋め作業を行う。具体的に明日から自分たちが何をするのかが決まると心は軽くなった。

 都知事選に堀江貴文が出馬するというニュースを見る。少し前に日記に書いた幻冬舎の編集者、箕輪厚介が堀江貴文の本に携わっていて、仲が良い印象がある。
 東浩紀が使っていて知ったのだけれど「カリフォルニア・イデオロギー」という言葉がある。
 ネットがあれば皆が金持ちで平等になれるという幻想を「カリフォルニア・イデオロギー」と呼ぶんだとか。

 箕輪厚介や堀江貴文は、ネットによってお金を稼いできた方たちという印象を僕は持っている。大雑把に新時代という文脈で語られるのを見かけたこともある。
 そんな彼らを「カリフォルニア・イデオロギー」とまとめるつもりはないけれど、彼らがやってきたことの中心にはインターネットがある。

 僕は箕輪厚介や堀江貴文がどんなものを築き、後の世代に何を残すのだろう? という点に興味があって眺めている部分があった。
 今のところの結果は、箕輪厚介はテレビに出てコメンタリーをしていて、フリーのライターの女性に不倫を迫る。
 堀江貴文は都知事選に出馬する。

 僕が知らない文脈で彼らはもっと偉大なことをしているのかも知れないので、安易にまとめたくないけど、最近のニュースを見ていると、こんな感じになってしまう。
 性欲と権力?
 なんか切ないなぁ。

 後輩と再放送されている「野ブタをプロデュース」の話をして、僕が野ブタは少女漫画として優れているよね、という話をして、へぇという興味がない返事をいただく。
 あ、すみません。

 後輩の話を聞いていると、オススメのユーチューバ―を教えてもらう。
 僕は何度も彼からユーチューバ―をオススメされているのだけれど、ラジオを聞く時間がある為、後回しにしていた。
 今日は結構な熱量で勧めてくる。
 明日からクローズしていた業務が再開される為、自分の好きな話ができる相手を増やしておきたいのかも知れない。
 そして、大変申し訳ないことに僕は明日、明後日と休みだった。ごめんね。
 
 緊急事態宣言の解除は一応、おめでたい話? だと思って、友人に連絡し、仕事終わりに僕の部屋でお酒を飲むことに。
 オフライン飲み会と言われて、そりゃあそうだろ、と思う。

 5月22日(金)

 朝、起きると友人がソファーで寝ている。
 緊急事態宣言が解除された途端、友人と酒を飲んでいるのは世間的に良くないんだろうなぁと思う。

 昼過ぎまでぐだぐだして、昼食なのか朝食なのか分からない食事の準備をする。焼き鳥の缶詰と卵で作る親子トーストというのを以前、作って美味しかったので、それを作る。
 焼き鳥の缶詰はポピュラーなたれ味が良いんだろうけれど、僕の部屋にあったのは先日、母親が送ってくれていた柚子こしょう味しかなかった。
 自分で食べる分には気にしないけれど、友人の分もだしなぁと思いつつ、とりあえず作ってみる。
 結構、美味しくできて友人にも好評だった。
 昼から缶ビールを開けて、何の意味もなく乾杯をした。
 冷凍のハッシュドポテトもあったので、それも焼いて食べた。
 友人を見送って、スーパーに寄り、部屋に帰った。
 どっと疲れが出て、シャワーを浴びた後に眠る。
 夜に起きて皿洗いをし、部屋の片づけをした。

「BANANA FISH」のアニメを見る。ほとんど終盤だった為、途中で止めどころが分からず、最後まで見る。
 むちゃくちゃ面白く、見て良かったと思う。
 けれど、これはどういう風に解釈すべき物語なんだろう? と考えてしまう。

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 いつだったかにnoteの記事で「BANANA FISH」の主人公、アッシュを永遠のヒーローだと書いている方の文章を読んだ。
 とても個人的な経験から、その方はアッシュをヒーローとして自分の気持ちを投影している方だった。

 僕としては、いろんな側面から読み解くことができる物語であると同時に、自分の力不足を痛感する作品でもあった。
 おそらく、僕が読み解くことで零れる文脈があって、それを拾う為の知識が今の僕にはない。

 どうするか考えて、「BANANA FISH」を見ている間に浮かんだ小説があったことに気がつく。
 村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」。

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 新装版の解説で金原ひとみが以下のように書いている。

 ずっと憂鬱だった。この生きづらい中で何を信じどう生きるべきなのか悩み、迷っていた。生きやすい選択肢もあった。テレビドラマやバラエティーやオリンピックを楽しんだり、家族と仲良くしたり、学校に行って先生に右を向けと言われて右を向いたり、猫を可愛いと言ってみたり低反発の枕を買ってみたり、そういう事を繰り返す事で得ていく生き方だ。キクとハシはでも、そういう生き方を選択しなかった。彼らはコインロッカーの中できちんと泣き声をあげたし、吐き戻したし、音を探したし、歌を歌ったし、母親を殺して母親を認めたし、ダチュラを追い求めたし、東京を破壊しようとした。コインロッカーを破壊しようと目的に向かって動き続けた。
 彼らはここがコインロッカーの中であると教えてくれたのかもしれない。暑苦しく狭苦しいコインロッカーの中で、お前は目を覚ましていないんだと、仮死状態で眠っているんだと焚きつけてくれたのかもしれない。

 コインロッカー・ベイビーズのキクとハシはコインロッカーに捨てられた赤子だった。そんな彼らが狭い世界を壊し、広い世界へと向かおうとするのが、コインロッカー・ベイビーズという物語だった。
 いわば、コインロッカーは一つの世界で、その世界を破壊しても、もう一回り大きなコインロッカーに囲われるだけ。
 だからキクとハシは最後、東京を破壊しようとする。

 この物語と「BANANA FISH」は構造として似ていると感じていた。アッシュは何度も狭いコインロッカーを破壊しても、更に大きくて厄介なコインロッカーに囲われてしまう。
 そんな彼がキクとハシのように東京を破壊しようとしなかった理由は、奥村英二という無償の愛を注いでくれる存在に出会ったからなのだろう。
 愛を世界を救うのかも知れない。
 少なくとも、アッシュ・リンクスという人間の世界は救われた。

 などなどと「BANANA FISH」について考え込んだあと、最近の癒しであるよるさんのブログを読みにいく。
 昨日は友人がいたので、ゆっくり読むことができなかった。
 一つ前の日記の感想を書いてくださっていて、よるさんという呼び名は、大丈夫だったみたいだ。
 良かった、良かった。
 
 5月23日(土)

 久しぶりの連休の二日目だった。
 明日から仕事だと思うと、朝から憂鬱になる。朝食にトーストを焼いて、食べた。洗濯物をしてから、少し文章を書く。
 一日中籠って文章を書く日にしようかと悩むも、昨日「払渡希望金融機関届」というのが届いていて、調べたところ失業保険の受け取った金額が少なかった場合に届くものらしかった。
 失業保険を貰っていたのも三年ほど前だけれども。
 ひとまず、その届をポストに投函する必要がある為、昼過ぎに外へ出る。

 自然と足は近くの古本屋へ向いて、漫画を何冊か買う。
 鳥飼茜の「おんなのいえ」を三巻まで買う。個人的に鳥飼茜の「おはようおかえり」という漫画を二巻までしか持っていないので続きを探したが、なかった。残念。

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 スーパーに寄って、コーラを買った。
 なぜか、お酒よりもコーラが飲みたかった。コーラを飲みながら「おんなのいえ」を読む。
 江國香織のような空気がある。姉妹とその母親。そんなモチーフが江國香織小説では何度か繰り返されてきた印象を僕は持っている。

 夕食に生姜焼きを作る。それなりに美味しくできた。
 佐久間宣行のラジオを聞いていて、『スピッツ 横浜サンセット2013 -劇場版-』というスピッツのライブ映像がyoutubeに公開されていると知る。
 それを聞きながら、noteで「【掌編】感情だけで繋がっている僕らは、だからこそ、感情で人を殺してしまう。」を更新する。
 妊娠して堕胎したことを黙っていた彼女とそれを知った彼氏の話。


 しばらく文章を書いて、深夜二時頃に事切れたように眠る。

 5月24日(日)

 圧倒的に眠りが足りないと思いつつ、いつもの時間に目を覚ます。
 解部学者の養老孟司が自然から学ぶことの大切さを説く記事があり、そこで

 自分の体は自然の一部なんですね。たとえば朝起きる。自分の意識が目覚めさせていますか? そうではなく、体が起きるから意識が戻るのです。眠るのもそう。意識して眠ることはできません。私たちは体という自然に従って生きているにすぎない。

 と書かれていた。
 体は起きたけれど、まだ眠るべきだと言っている気がした。自然に従って生きるのなら、今日はもう少し眠るべきだ。
 と思ったところで、体は勝手に動いて仕事へ行く準備をはじめた。習慣は時に自然に逆らうものらしい。
 できれば自然に従って生きていきたいのだけれど。

 電車の中でスマホを確認すると昨日、更新した「【掌編】感情だけで繋がっている僕らは、だからこそ、感情で人を殺してしまう。」をツイッターで雨宮眠夜さん紹介してくれていた。
 有難い。
 ツイートの中で「カクヨムに掲載されているのも時間があったら読もう」と書かれていた。
 大真面目にその言葉を受け取って、カクヨムで郷倉四季の作品を読んでもらうとしたら、何が良いんだろう? と考える。

「眠る少女」か「あの海に落ちた月に触れる」かな?
 一行ほどのあらすじを書かせていただくと、

「眠る少女」
 受験で訪れた高校で音楽プレイヤーを拾った男の子とガールズバンドの青春小説

「あの海に落ちた月に触れる」
 夏休みが明けても学校に登校して来ない幼馴染の女の子と夏休みの宿題をやっていなかった男の子の青春小説

 となる。

 ちなみに、「あの海に落ちた月に触れる」の数年後の話もあるので、こちらも合わせて紹介させてください。

 ご興味湧いたものがあれば、読んでいただければ幸いです。

 日曜日の仕事はあってないようなもので、終始雑談となる。25日に緊急事態宣言が残りの県が解除されるらしい、と言う話になる。
 その中で、「政府から配られるマスクは届きました?」と尋ねた。
 同期以外の方たちは届いたと口々に言っていて、「え? 私だけ届いてないんだけど?」と同期は戸惑っていた。
 彼女だけ都会に住んでいるから、その辺が理由なのではない? という話でまとまる。

「シティーガールってことだね!」と言ってみる。
 あ、滑った。
 と思ったが、「そっか、私シティーガールだもんね」と胸を張ったので、軽い笑いが取れた。
 有難い。

 仕事終わり、ポストを開けると10万円の特別定額給付金の封筒が届いていた。
 夕飯の後に書いて、送ろうと思うも身分証明書と通帳のコピーが必要とあって、とりあえず書けるところだけ書いておく。
 部屋にいても汗ばむようになった為、アイスコーヒーを作って飲む。そういえば、最近ウィスキーを飲んでいない。
 23時過ぎに眠気が襲ってきて、そのまま眠る。

 5月25日(月)

 本日からクローズしていた僕が属する部署が再開される。
 更に、全国的に緊急事態宣言の解除もされる。
 ということは、この日記も今日までにしようと思う。

 毎日、日記を書く日常は楽しかった。
 毎週エッセイを書いていた頃とはまた違った脳の使い方ができていた気もする。

 日記を書いての反省というか、次回があるならしたいこととしては料理の写真とか載せたい。
 なんかブログっぽいから。
 あと、読んで下さった方から、しめじと豚肉多めですね。
 と言っていただいて、確かに! となる。
 おすすめの野菜とかも聞いたので、これから色々料理をしてレパートリーを増やしたい。
 そして、料理に合うお酒にもこだわっていくスタイルで行きたい(という言い訳で、お酒を買いたい)。 

 毎日の僕の癒し、よるさんのブログで本日、掌編が載せられていて、これが超面白かった。
 恋人とのキスから中学時代に告白された男の子との思い出を回想していく、という作りで、終わってしまった青春に対する哀愁が混ざっていて非常に好きでした(ここでURLを貼り付けられないのが本当に残念)。

「女による女のためのR-18文学賞」の系列の空気がよるさんの作品にはあって、良いなぁとなる。
 僕が勝手に感じているだけかも知れないけれど、新人賞の中で最も独特な空気感を持っているのが「女による女のためのR-18文学賞」で、僕はそういう空気を孕んだ小説を書ければなぁとある時期からよく思っている。

 では最後に本来、noteをはじめようと思ったきっかけを書かせて下さい。僕は小説とは関係のない友人を題材にしたエッセイを書いたり、インタビューしてみたかったためにnoteのアカウントを作りました。
 現在エッセイやインタビューしたいと思っている友人は、日記の中で「みな美やっべ」「みな美と結婚したい」「みな美と結婚するためにいまからプロサッカー選手になるわ俺」と言ってた彼です。
 
 そういったエッセイやインタビューを更新しましたら、読んでいただけたら嬉しいです。
 また毎日、日記を書くことはやめるのですが、何か書きたいことが溜まったら「日記」として更新するかも知れません。
 その時は、またよろしくお願い致します。

 最後に、これを読んでくださっている方が心身ともに健康であることを祈っています。

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さとくら
サポートいただけたら、夢かな?と思うくらい嬉しいです。