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日記 2020年7月 漠然とした不安の中で考える、青春と愛と性欲について。

 7月某日。

 夜、眠れなくなることが時々あります。
 そういう時の僕は漠然とした将来に対する不安について考えています。具体的なものもあるし、漠然としたものもあって、我ながら呆れるほど多くの不安が溜まっています。

 昼間であれば、そういう考えが頭をよぎっても無視したり、身を捻って真正面から考えないようにするのですが、夜という時間はなぜか、それができません。
 夜、眠れなくなる時、良く分からない不安の塊にぶつかって、あーでもない、こーでもないと考えはじめてしまいます。

 そういう時にスマホをいじって、ツイッターのタイムラインなどを見ると余計に眠れなくなるのは分かっています。
 深夜の三時を過ぎた頃、仕方なく電気をつけて短編を一つだけ読もうと思って本棚を漁りました。
 結果、読んだのは村上春樹の「とんがり焼の盛衰」でした。

 この短編は以下のように終わります。

 賞金の二百万円は推しかったけれど、この先の長い人生をあんな鴉たちの相手をしながら生きていくなんてまっぴらだ。
 僕は自分の食べたいものだけを作って、自分で食べる。鴉なんかお互いにつつきあって死んでしまえばいいんだ。

 まず、とんがり焼というのはお菓子だとされていますが、現実に照らし合わせると、おそらく「文学」で、その文学を食べる鴉(評論家)たちがいます。
 鴉が食べたがるとんがり焼(文学)を作って、生きていくよりも、自分が食べたい(書きたい)ものを作っていきたい。
 と解釈できるように「とんがり焼の盛衰」は書かれています。

 初期の村上春樹って、雑文集とかインタビューとか読んでいると、尖っていたよなぁと思うことが多々あります。
 その尖ってんなぁ感が「とんがり焼の盛衰」は強くて、僕は好きです。

この先の長い人生を」僕は誰を相手にしながら生きるべきなんだろうか。
 そんなことを考えていると、自然と眠ることができました。

 7月某日。

 カクヨムの「南風に背中を押されて触れる」に黒須友香さんからレビューをいただいた。
 ありがとうございます。
 もの凄く嬉しい内容で、カクヨムを一緒にやっている倉木さとしにLINEで報告しました。

 許可は取っていませんが、こちらでレビューを引用させてください。

姫を支える用心棒が、一歩踏み出して共に並んで歩こうとするまでの物語

 同作者の作品、
「あの海に落ちた月に触れる」
「眠る少女」
 の次に本作を読ませていただきました。
 前作それぞれの登場人物が多数登場し、絡み合ったり意外な面を見せたり…と、作品の枠を超えて楽しめる、「岩田屋町」青春群像劇の中の一作です。
 
 登場人物は多数いるんですが、それぞれが他者との関わりや自分自身に向き合って進んでいく方向が、互いに織りあって大きな物語を形成していく様が、実に凄いんです。
「ここでそう絡んでくるのか!」と、嬉しい驚きを何度も味わえます。
 
 本作の主人公は、「あの海?」でも主人公だった少年、行人。
まだ中学生だった彼が、六年経って、一番好きな女の子に会いに行くまでの物語。
 
 そこへ至るまでの数々の出来事、行人の心の紆余曲折は「とにかく読んで!」としか言えません。
 時にほっこり笑い、時にサスペンスドラマのようなハラハラを味わいながら、行人と共に心豊かな旅を楽しめます。
 
 私もすっかりハマり中です。
「岩田屋町」の魅力、一度ハマると抜け出せなくなりますよ!



「あの海に落ちた月に触れる」「眠る少女」を読んでいただいた上で、「南風に背中を押されて触れる」に触れていただけていることが本当に嬉しいです。

 話は変わるのですが、カクヨムの仕様が少し前から変わっていて、フォローしている方が書いたレビューも通知が来るようになりました。
 その中で、黒須友香さんがレビューを書かれていると、それを読むようになりました。
 黒須友香さんが書いてくださるレビューが、とても丁寧で、作品の魅力を的確に拾い上げてらっしゃる為、他の作品はどうなんだろう? と思って読むようになりました。

 その中で、てつひろさんという方の「龍の町に星が降る」と出会いました。これが一つの町を舞台に使った青春群像劇で、すごく好みな話でした。

 (※誰にも許可を取っていませんが、勝手にURLを貼らせてください)

 そんな読者として優れた黒須友香さんは小説も書かれています。

コード・オリヅル~超常現象スパイ組織で楽しいバイト生活!」という作品で、こちらはバディもので、キャッチコピーには「ジャージ少年コンビ」と書かれています。
 キャッチーだなぁ。

 そんなジャージ少年コンビはそれぞれに超能力を有していて、ひょんなことからスパイ組織に属して、世界各地にいる超能力者を保護することになっていく、というのが物語の筋です。
 個人的に、良いなぁと思ったのが本当に世界各地に行くことです。

「ストーンヘンジ」のあるイギリス、イタリア・シチリア島――よりもさらにアフリカ寄りにある、ランペドゥーザ島、アメリカ・インディアナ州の州都、インディアナポリス、オーストラリア・シドニー……。

 小説を読んでいると、ちょっとした旅行気分も味わえる良作ですので、よろしければ読んでみてください。

 7月某日。

 今日、たまたま同い年の作家の小説に関するインタビューを読んでいて、そこでアラサー男子が恋愛をできない理由として「学生時代に“青春”できなかったせいで自己肯定感が低いこと」と書いていました。
 いわゆる灰色の青春(もはや死語)の結果、男の子は三十歳近くになっても恋愛ができないの? まじで? と僕は思ってしまった次第です。

 確かに僕は学生時代に“青春”ができなかったタイプの人間で、本棚には小谷野敦の「もてない男――恋愛論を超えて」と杉田俊介「非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か」という本が手に届く場所に並んで置かれていて、今でも時々読み返します。
 僕は自分で、もてない男(非モテ)だと思っていますが、恋愛をまったくせずに今に至っている訳ではありません。
 青春ができなくても、恋愛はできるんじゃないかな。

 と思うけれど、他の人からすれば、恋愛ができている時点で僕は“青春”ができなかった側の人間ではない、ということになるのかも知れません。
 雑な区分けですが。


 少し話は変わるのですが、高校生直木賞で彩瀬まるの「くちなし」が受賞した時の、彩瀬まるがおこなった講演会がレポートとして特設サイトに残っていて、それを読んだ。

 そこで高校生から「愛と性欲ってどういう関係性にあるのかいつも疑問に思うのですが、彩瀬さんはどう思いますか。」という質問がありました。
 答えは以下のようなものでした。

彩瀬 それについては同年代の作家さん達ともよく話題に上がります。愛情を追求する物語が、時に性欲を否定するような文脈になってしまっている気がする。愛情の対象に性的なアプローチをしない人の方が、良い人のように受け取られることがある。過去に性的な体験があるという設定にするだけで、そのキャラクターがまるで特別に性に奔放であるかのようなフィルターがかかってしまう。書き手も読み手も、「性欲」をどこか後ろめたく悪いものとして扱いがちというか……そうではなく、取り扱いに注意は必要でも、性欲がもっと楽しく明るい、他者へと向かう生きた心の動きの一つとして豊かな形で愛情に抱合されたらいい、そういう話をお互いに書けたらいいね、とよく話し合っています。

 この回答は、すごく良いなぁと思いました。
 僕の周囲には同じ年で今まで恋愛をしてこず、とくにこれからもするつもりはない同性の友人がいます。
 それはそれで良いと思います。
 なんか、日常とか楽しそうですし。

 ただ、そういう友人の話を聞いていると、「「性欲」をどこか後ろめたく悪いものとして扱」っているんですよね。
 実際、男性の性欲というのは、暴力に成り得るし、それを綺麗なものと言うことは難しい。ドロドロした不気味なものです。
 時と場合によっては、それに振り回されて、操作できなりそうな瞬間もあります。
 
 そういう面倒なものと常に同居することに、どう折り合いをつければ良いのか、というのは一時期の男の子にとっての命題です。
 その命題には同時に「愛」というものも付き纏ってきます。
 好きな人に性欲を向けるって、物凄く罪深いことなのではないか、と頭を抱えて蹲ってしまいたくなります。

 作品名を忘れてしまったのですが、中学生だか、高校生だかの男の子が主人公の青春小説で、好きな女の子を想像してオナニーをする度に、自分の大好きなゲームの大切なアイテムを捨てていって「自分に差し出せるものは、これしかない」って思う作品がありました。
 性欲って、ある種の罪悪感とセットで付き纏う時期があるんですよね。そして、その罪悪感に折り合いをつけるか、開き直るか、した男の子だけが、大手を振って恋愛をしているような気がします。

 最初に戻って、「学生時代に“青春”できなかったせいで自己肯定感が低いこと」で三十歳の男の子が恋愛できないのであれば、そこには性欲と愛の位置がズレていることも原因の一つなんじゃないかな、と思ったりしました。

 7月某日。

 というか、これって日記という感じしないなぁ。
 一日で一気に書いているので、思いついた順になっています。
 すみません。

 ちなみに、僕は眼鏡をかけているんですが、新しい眼鏡を買いました。
「眼鏡変えた?」
 と、指摘してくれたのは理髪店で働いている飲み友達だけでした。
 職場の人達は総スルーでした。
 いや、良いんですけど。
 
 あと、七月に何かあったかなぁ。
 なんか、ずっと雨が降っていましたね。
 大阪で突然の雷雨があって、職場の窓から外を見て「おぉ……」ってなることがありましたね。

 あー、あと、あれです。
 コロナ。
 大阪の人数が凄いことになっていて、お盆に実家へ帰る予定だったのですが、流石にやめよう、という話になりました。
 珍しく、そう言ってきたのは父親でした。

 いつもなら、母親なのに。
 と思ってLINEしたら、僕の想像の2倍くらい凹んでいて、更に「コロナストレスから早く開放されたい」と返事が返ってきました。
 母親の仕事的に、コロナの影響を強く影響を受けているんだと考えれば分かることを改めて実感しました。

 言いにくいことや、しんどい時は母親はちゃんと父親を頼るので、個人的に夫婦として二人は良い関係なんだろうなと思うことがあります。

 さて、物理的に集まることは難しいので「お盆はオンライン飲み会をしましょう」と誘ってみました。
 父親は「おー、やろうやろう。スマホのやり方は教えてな」で、母親は「オンライン飲み会!! やったことないけどやってみたい」ときて、思いの他乗り気でした。
 弟は冷めた感じの返事でした。

 ということで、家族での初のオンライン飲み会(?)をやることになりました。
 これに託けて、僕はちょっと高いお酒を買おうと思います。
 今から何を買うか楽しみです。


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さとくら
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