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毎年5月31日、私は決まっておすしを食べている。

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3歳で原因不明の病に冒され20歳まで生きられないと言われた兄にまつわる数々のストーリーをvol.1~vol.14まで連載していきます。読んでくださる皆さんとひとつの作品に仕上げて…
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#インド

Vol.1 おすし 【毎年5月31日、私は決まっておすしを食べている。】

兄の好物だった、おすし 。毎年5月31日、わたしは決まっておすしを食べている。 おすし発作が治まり、また束の間の穏やかな時間が流れ始めた。母は一息ついてソファに横になった。わたしはパイプ椅子に腰掛け、ぼんやりと兄を眺めている。いくら危篤と言われてもまるで実感がない。悲しくてその現実を受け入れられないのではない。きっとこの一時も笑い話のひとつになる日が来ると信じて疑わなかった。なまぬるい病院の個室に注ぐ柔らかな初夏の日差しが、平和な日常を思い出させてくれる。外はこんなに爽やか

Vol.10 インド【毎年5月31日、私は決まっておすしを食べている。】

20歳まで生きれないと言われた兄にまつわる数々のストーリ。幼少期から順に連載しています。毎週土曜日更新中。 突然の電話わたしは大学で地域福祉を専攻したものの、高校時代にタイタニック主演のレオナルド・ディカプリオにドハマりして以来、海外への興味も膨らんでいた。海外プログラムを見つけては参加し、オーストラリア、カナダ、バングラデシュに行かせてもらった。そして、ゼミでは途上国開発に名のある教授に出会い、ユネスコ派遣の一員としてインドに行くチャンスを手に入れた。 日本全国から10