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イラストの二次利用ってどこまでOKなの?
こんにちは。イラストレーターのセキサトコです。
先日、お客さまからこんな質問をいただきました。
「描いてもらったイラストがステキだから他にも色んなものに使いたいんだけど、イラストの二次利用ってどこまで許されるの?」
※二次利用…当初の使用目的以外で制作物を使用すること
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広告に携わるお仕事の方でもない限り、二次利用に関することってよく分からないのが普通ですよね。
というわけで私の考えをまとめてみました。
▼簡単に結論をまとめると
時間のない方向けに、まずは私なりの結論を簡単に。
■基本的に当初の目的以外への二次利用は別途料金が発生すると考えておいた方が良い
■制作者の知らないところで制作物を勝手に使うと【制作者にとって取り返しのつかない事態】になってしまうことも
■依頼を受けて制作したものでも、著作権は制作者が保有している
■「ちょっとしたことなので追加料金はいいですよ」と言われた等、制作者の厚意で二次利用時に別途料金が発生しないとしても、二次利用する場合はその旨を制作者に伝えるべき
もう少し詳しく聞きたいという方はさらに続きをどうぞ。
▼当初の目的以外への「二次利用」は別途料金が発生する
プロイラストレーター団体「イラストレーターズ通信」さんのこちらの記事がとても分かりやすいです。↓
※「著作権譲渡」=「無断での二次利用」に置き換えて読んでもらって良いと思います。無断での二次利用でもほぼ同じようなトラブルが起こりうると思います。
私が特に重要だと思うポイントはこちらです↓
著作権譲渡の仕事をたくさんしていると、いつか知らないところで、自分の意思で受けた広告の仕事とバッティングしてしまうケースが出てくる可能性が出てくるわけです。
そうなると、イラストレーターは多額の賠償金を支払わなければならないかもしれません。
拡散されたイラストレーションは、アダルト系のゲームに使われるかもしれないし、カルト宗教団体や悪徳商法の企業が使う可能性だってゼロではありません。
一度でも著作権を売り渡したイラストレーターは、その後様々なリスクを抱えて活動していかねばならなくなるのです。
イラストを買うことを「お店のモノを買うこと」と同じような認識で考えていると、依頼者は
「依頼して作ってもらったんだからこれはずっと自分のものだ〜♪ 好きなときに使おう♪」
と考えてしまいそうなものですが、
×…依頼して作ってもらったんだからこれはずっと自分のもの!好きなときに使える
○…依頼時に「使用目的・使用媒体・使用期間」を定めておき、それ以外での使用は二次利用にあたるので本来料金が発生するし別途契約が必要である
というのが本来の認識だと思っています。
▼無断で二次利用するとどんなデメリットがあるの?
もちろん制作者にとっては「本来いただけるはずの二次利用料がいただけない」というデメリットは大きいですが、それ以上に恐ろしいのはやはり【制作者本人の知らないところで使われる可能性があること】だと思います!
イラストレーターの茅根美代子さんのこちらの記事が大変分かりやすいです。↓
世の中には【競合バッティング制限のある案件】があるので(私もそのようなお仕事をいただいたことがあります)、自分の知らないところでイラストが使われていると【制作者にとって取り返しのつかない事態】になってしまうことがあるのです!
イラスト=タレントさんに置き換えて考えてもらうとイメージしやすいかもしれません。
例えば同じ化粧品で、A社の化粧品広告にもB社の化粧品広告にも同じタレントさんが起用されていたら「ん?」と思いますよね。消費者目線に立ってみても、A社の商品とB社の商品を混同する原因になりかねません。
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イラストにも同じことが言えます。競合であるA社の広告にもB社の広告にも同じテイストのイラストが起用されていたら「ん?」と思いますよね。
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そのようなことを防ぐために「競合バッティング制限」を設けたお仕事というものがあります。A社での契約を結んだら、競合他社とのお仕事は一定期間受けられないよ〜というものです。
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ここを曖昧にしてしまうと【制作者本人の知らないところで制作物が使われる→競合バッティング制限のある案件と知らずのうちに使用範囲が被ってしまう→制作者にとって取り返しのつかない事態に!】ということが起こりかねないのです。
お金も大切ですが、制作者にとってもっと怖いのは信頼を失うこと。
二次利用って軽く考えてしまいがちですが、制作者本人の知らないところで制作物が使われる可能性を残してしまうと、制作者のさらなる活躍の機会を奪ってしまうことにもなるのです。
誰かにイラスト制作を発注された方は
「制作物そのものを買った」という認識ではなく、
正しくは「制作物を◎◎に使わせてもらう権利を買った(期間限定)」という認識が正しいのです!
イラストレーションの料金は制作にかかった労力の代金ではなく、使用料だからです。
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▼依頼を受けて制作されたものでも、著作権は制作者が保有している
「ちゃんと依頼してお金を払ったんだから、このイラストを自由に使う権利があるはずだ!」と考えてしまうかもしれません。
しかし、例え依頼を受けて制作されたものであっても著作権は制作者が保有しています。
よほど特別な契約を交わしていない限り、お金を払って制作依頼したものでも「自由に二次利用する権利」は依頼者側にはありません。
▼「二次利用料はいりません」と制作者から言われたら?
本当にごく個人的且つ些細なことへの二次利用の場合や、制作者自身が二次利用への認識を深めていない場合等に
「ちょっとしたことなので追加料金はいいですよ」
などと言ってもらえて、制作者の厚意で二次利用時に別途料金が発生しない場合があるかもしれません。
もしそのように言われたとしても、二次利用する場合はその旨を制作者に伝えるべきです。
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前述の通り、二次利用料の有無に関わらず【制作者本人の知らないところで制作物が使われる→競合バッティング制限のある案件と知らずのうちに使用範囲が被ってしまう→制作者にとって取り返しのつかない事態に!】ということを防ぐためです。
制作者は自分の制作物がどこに使われているかを把握しておくべきなのです。
本来なら小さなことでも二次利用料は請求すべきところなんですが、「ちょっとしたことなら二次利用料いちいち請求してないよ〜」という制作者さんもいらっしゃるのではないかと思います。
依頼者さんは、もしそのような制作者さんに出会った場合でも「二次利用する場合はその旨を制作者に伝えるべきである」という前提でいていただけるとありがたいなと思います。
▼まとめ/無断での二次利用はやめましょう
■基本的に当初の目的以外への二次利用は別途料金が発生すると考えておいた方が良い
■制作者の知らないところで制作物を勝手に使うと【制作者にとって取り返しのつかない事態】になってしまうことも
■依頼を受けて制作したものでも、著作権は制作者が保有している
■「ちょっとしたことなので追加料金はいいですよ」と言われた等、制作者の厚意で二次利用時に別途料金が発生しないとしても、二次利用する場合はその旨を制作者に伝えるべき
「作ってもらったものを二次利用したい…」という場合はまずは制作者さんにご相談いただけると幸いです。
依頼者さんも制作者さんも双方にとってハッピーな未来であるために!
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よろしくお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
▼あわせて読みたい:(9/3追記)どうすれば無断の二次利用を防げるのか、どんな合意をしておけばこの思いを法的に実現できるのか、を「デザイナー法務小僧」さんが弁護士の目線から解説してくださいました!
クリエイターさんによる純粋な作品への思い、特に「無断の二次利用を止めてほしい」という思いは、法的な観点からみると、きちんと事前に合意しておかないと実現できないこととなります。
▼あわせて読みたい:二次利用に関する契約を曖昧にしてしまったために機会損失してしまったお話が綴られています(サタケシュンスケさん)
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