障がい者サーフィンが教えてくれたこと
先日、サーフセラピーのキャンプについて書いたら、その前の週に大会があったアダプティブサーフィンのことも書きたくなりました。
アダプティブサーフィンとは障がい者サーフィン/パラサーフィンのことで、わたしがその存在を知ったのは2016年。サンディエゴで世界大会が開かれて、大会前のカンファレンスに日本チームも参加するのでボランティアで通訳してくれる人を探している、という話がわたしのところに回ってきたことがきっかけでした。
その時に知り合ったのがアダプティブサーファーの伊藤健史郎さんと小林征郁さん、そして、日本サーフィン連盟の故Yさん。
カンファレンスに顔を出せたことで、アダプティブサーフィンはハワイやブラジルなどでは民間団体が積極的に大会をやっていること、サーフィンがオリンピック種目になったので、障がい者サーフィンもパラリンピック種目になることを目指して国際サーフィン連盟が本腰を入れ始めたことなどを初めて知りました。
当時、わたしはサンディエゴの日本語情報誌の編集長をしていたので、大会前の発行号には間に合わないけどせめて大会後にレポート記事を載せたいなと考えて、カンファレンスの数日後に始まった第2回アダプティブサーフィン世界大会*の応援に行くことにしました。
*その後パラサーフィン世界大会に改名
そこでわたしは度肝を抜かれちゃったんです。
波は頭サイズくらいのダンパーで、流れも強く、ハードなコンディション。
本当にここでやるの!? これ、一般サーファーでもしんどくない? 体に麻痺がある人、両足がない人、手がない人に、このコンディションで海に入れって、無謀なんじゃ!?
ところが、大会は普通に行われて、選手たちは果敢に沖に出て波に乗って競っています…その光景を見たときに、わたしはそれはもうすごい衝撃を受けたんです。
みんな、与えられた条件の中で自身の最高のパフォーマンスをすることに本気。
その姿は完全にプロのアスリート。
さと子、ロックオンです。
逆にいうと、それまでのわたしは〈アダプティブサーファー=障がいを持って大変な思いをしたけど乗り越えてサーフィンを頑張っている人〉というような、上から目線というか、不必要なフィルターを持っていたんだと気づかされたのです。
以来すっかりアダプティブサーフィンの追っかけと化したわたしは、サンディエゴ界隈で大会が行われるときは可能な限り観戦に行くようになって今に至ります。
前述したように、以前は日本語情報誌の編集長をしていたので、日本人アダプティブサーファーのインタビューを掲載しようと思えばできる立場にあったのですが、結局やりませんでした。というか、できませんでした。
というのも、あの頃のわたしは、「こういう理由で障がい者になりました→すごくつらくて大変だったけど乗り越えてサーフィンをしています」程度の物語しか聞き出せないという自覚があったから。同時に、自分が伝えたいのはそれではない、という思いも強くあったのです。ただ、じゃあ何を伝えたいかがわからなかった…。
あれから8年が経ち、アダプティブサーファーの皆さんとの親睦も深まった今、ようやく何か少し掴みかけた、という気がしています。
今、言語化できることの一つは、「まずは知ることが大事」という、言葉にしてしまうと超当たり前のこと。
でも、ここで言いたい「知る」は、雑誌やテレビを通して「知る」のとはちょっと違うんです(それも大切だとは思ってるけれど)。
わたしは、身近に障がいを持つ人がいなかったから、知らなかった。
アダプティブサーフィンとの出会いがなければ、たぶん知ろうともしていなかった。
知らないものだから、障がいを持つ人と会ったとき、その人たちがどんなことに困っているのか、想像ができなかった。想像ができないから、何をしていいか、よくわからなかった。よくわからないから、近づかなかった。
だからといって、「障がいを持つ人と触れ合ってお互いを知ろう!」みたいな場は白けるというか、天邪鬼なわたしは「お互いを知ることが正義」的な圧を(勝手に)感じてどうも居心地がよくない…。
サーフィンという、共通の興味関心を通した出会いだったから、身構えることなく、自発的・自然発生的にもっと理解したい気持ちが出てきたんだと思うんです。
そこに気づいたとき、サーフィンに限らず、同じ興味関心を持つ人たちが集まる中に、障がいを持つ人とそうでない人が普通に一緒にいるという環境を増やすことが、多様性というものを知り、相互理解を促す理想の形なのでは、と考えるようになってきたのです。
じゃあ、自分はそれに向けて何ができるの?
今はまだアダプティブサーフィンというものの存在を皆さんに伝えることくらいしか思いついていません。
というわけで、最後、言わせてください。
サーフィンが好きな人、アダプティブサーフィン、一度見てみて。めちゃかっこいいから!
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