Kew Gardensのハロウィンとクリスマス のライトアップは幻想的な美しさ
世界遺産に認定された広大な植物園で、四季折々の自然が楽しめるキューガーデンですが、紅葉の美しい秋もおすすめの季節です。特に日本庭園エリアやキューガーデンのシンボル「メタセコイア並木」は赤やオレンジに染まり、秋らしい風景が広がり、カメラを持って散策したくなるスポットが多数あります。
今回は秋から冬にかけて楽しめるキューガーデンの見どころをご紹介します。
キューガーデンの歴史:王室の庭園から世界遺産へ
キューガーデンは1759年に王室宮殿に附属する植物園として開園しました。オーガスタ妃がキュー王宮の庭園内で植物の収集を始めたことがその起源で、彼女の息子ジョージ3世も植物収集に興味を持ち、庭園は世界中から植物を集める拠点として発展していきました。やがて、1773年にジョージェフ・バンクス(1743-1820)が責任者に就任すると、ジョージ3世の支援を受けてプラントハンターを世界に派遣して各地から植物を集め、それらの園芸・庭園植物、食料、薬用、生活資材としての活用を試みたのです。バンクスが在任中に集めた新しい植物の数は7000種といわれ、それによってイギリスの植物学、園芸、造園界は活況を呈した。その後、南米からゴムノキやマラリヤの特効薬キニーネの取れるキナノキなどがキューガーデンに持ち込まれ、増殖して植民地であったセイロンやマレー半島で運ばれてプランテーションとして栽培され、イギリスに莫大な利益をもたらしました。キューガーデンは世界に広がるイギリスの植民地における植物経営の要となっていったのです。第二次大戦後、イギリスが植民地を失った後も、世界の植物学の要としての役割を担い続け、植物に関わる情報を世界に発信しています。
2003年には「文化的景観」としてユネスコ世界遺産に登録され、キューガーデンの植物学と園芸学への貢献が世界的に認められました。広大な敷地内には、温室や日本庭園、18世紀のパゴダ(中国式の塔)など歴史的な建造物が点在しているため、私は、その日の気分とインフォメーションデスクの方からその日の見所を聞いてどのエリアで過ごすのかを決めています。
今では、5万種以上の植物が育てられ、キューガーデンの科学者たちが植物の進化や薬学に関する研究を行っています。キューガーデンのYouTubeチャンネルも、様々な最新情報が満載なので、聞いてみて下さい。中には、私たちが身近に感じている野菜について詳しく解説しているものもあります。例えば、以下は、ハロウィンが近いのでパンプキンについてです。
ハロウィン・トレイル:「Halloween at Kew」
今年は、10月18日から11月3日まで、ハロウィン・トレイル「Halloween at Kew」が開催されています。キューガーデンは、夜になると幻想的な光に包まれ、まるで魔法にかけられたような雰囲気に変わります。ハロウィンらしい装飾が施されたトレイルを歩いていくと、様々なスポットで不思議なオブジェやキャラクターに出会えます。迫力満点の火の庭、ニヤニヤ顔のパンプキン、不気味なネオンのクモの巣、恐ろしい悪霊や邪悪な魔女、巨大なクモやコウモリなども。光と影を巧みに利用した装飾が森や庭園内に点在し、オレンジ色や紫のライトアップがハロウィンのミステリアスな空間を演出します。また、ファミリー向けのアクティビティも豊富に用意され、子どもたちも楽しめる内容です。ホットチョコレートを飲みながら、夜のキューガーデンをじっくりと散策し、魔法のようなひとときを味わってみてはいかがでしょう?
Halloween at Kewには時間指定のチケットが必要です。入場時間により3つのカテゴリーに分かれており、時間が遅くなるほど、よりスリリングな雰囲気が楽しめます。
デイライト - 午後6時までのセッション。早めのご帰宅が必要な小さなお子様に最適。
トワイライト - 午後6時から7時30分までのセッション。少し怖さが増します。
ムーンライト - 午後7時30分以降のセッション。最もスリリングな時間帯。
早めの予約がおすすめ!「Christmas at Kew」
ハロウィンが終わると、キューガーデンはクリスマスシーズンの準備に入ります。2024年の「Christmas at Kew」は11月15日からスタートし、1月7日まで続きます。
こちらのイベントは、毎年大人気のため早めの予約がおすすめです。冬の夜空の下、キューガーデンの広大な敷地がきらびやかなイルミネーションに包まれ、まるで絵本の中に入り込んだかのような美しい世界が広がります。
イルミネーションの見どころは「イルミネーション・トレイル」で、園内を歩きながら、煌びやかに輝く光のトンネルや、宝石のような色に染まった木々、水辺を彩るライトアップなど幻想的なスポットを次々と楽しめます。
特に人気のスポットは、ファイヤーガーデン。今年は、どんな装飾になるのでしょう。以前、ファイアーガーデンで、フランキンセンスの香りがしたことがあり、とても素敵な演出だなと思ったことがあります。温かな炎の光が冬の夜の冷えた空気を包み込み、心がほっとする瞬間を味わえます。
キューガーデンのライトアップは、生態系も配慮しながら計画されているので、ライトアップが連続してないことも特徴です。
トレイルの途中でいただく、ジンジャーブレッドやモルドワインは格別です。モルドワイン(mulled wine)の赤ワインに加えられているスパイスはクリスマスにはつきものの、聖書に登場する東方からの三博士が贈ったキリストのお祝いの品、乳香、没薬、金の象徴であるシナモン、クローブ、ナツメグのスパイスなど。イギリスではクリスマスケーキやクリスマスプディングにも、中に焼き込むミンスミートと呼ばれるドライフルーツのラム酒漬けにこれらのスパイスがふんだんに使われるなど、クリスマスとは縁の深いスパイスなのです。
ウェイクハーストのGlow Wild は手作りランタンが
キューガーデンはロンドン西部の本園だけでなく、サセックスに位置するウェイクハースト(Wakehurst)という別園も持っています。ウェイクハーストではクリスマスシーズンに人気のクリスマスランタン・トレイル「Glow Wild」 が開催され、本園とは異なる魅力が体験できる場所で、毎年11月下旬から12月末にかけて開催されます。このイベントでは、美しいランタンや幻想的なライトアップが夜のウェイクハーストを彩り、クリスマスシーズンにぴったりの特別な雰囲気を演出します。 ウェイクハーストは、約2平方キロメートルの広大な敷地を持つ自然保護エリアで、季節ごとに異なる風景が楽しめますが、冬の「Glow Wild」は地元の方たちやアーティストが協力して作ったランタンが勢揃い。光のインスタレーションが夜の森や小径を美しく照らし、特に木々にかかる光のディスプレイや、植物の美しさを活かした装飾が目を引きます。
夜の散策がいつもとは違う特別なものに感じられたのは、 ランタンを手に持って歩けたことも大きいと思います。たくさんのカラーがある中で、私はピンクを選びました。
何千もの手作りランタンからは、人の温かさも感じます。伝統的なランタンとモダンなデザインが融合した光のトレイルを楽しめますが、ランタンは毎年異なるテーマでデザインされるため、訪れるたびに新しい発見があります。 2024年はどんな装飾を見ることができるのか、今から楽しみです。
キューガーデンの本園で開催される「Christmas at Kew」がイルミネーションで植物園を彩るのに対し、ウェイクハーストの「Glow Wild」は、手作りランタンと自然を活かした温かみあるディスプレイが特徴です。広大な自然の中で落ち着いたクリスマス体験がしたい方にぴったりです。
2024年11月28日から2025年1月1日まで
https://glowwild.seetickets.com/content/ticket-options
キューガーデンのサステイナビリティへの取り組み
キューガーデンは、植物保護や環境保全を先導する施設として、持続可能な未来に向けた様々な取り組みを行っています。気候変動の影響が進む中、絶滅のリスクが高まる植物種を保護し、次世代に伝えるために「ミレニアム・シード・バンク」という世界最大級の種子保存施設を設け、遺伝資源保存のために種子を集めて保存しています。また、園内の温室や施設には再生可能エネルギーを活用し、廃棄物の削減やリサイクルを推進。キューガーデン内のカフェでは、持続可能な食材を使用したメニューも提供されます。
まとめ
秋から冬にかけてのキューガーデンは、紅葉やハロウィン、そしてクリスマスのイルミネーションと、季節の変化を満喫できるスポットが満載です。歴史的な価値ばかりでなく、植物学と環境保全に貢献する世界的施設としての役割も果たしているキューガーデン。特にハロウィンやクリスマスシーズンは、自然と光の魔法に包まれた特別な夜をお過ごしください。
【キューガーデン公式サイト】https://www.kew.org/