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【出光美術館】 物、ものを呼ぶ

出光美術館の「物、ものを呼ぶ」を観てきました

出光美術館とは

「海賊とよばれた男」出光興産の創業者・出光佐三氏が70数年の歳月をかけて蒐集したコレクションを公開するため、1966年に開館。日本の書画、日本や中国の陶磁器など古美術を中心に収蔵し、テーマごとに展覧会を企画して紹介している美術館。丸の内にある帝劇ビル9階にあり、出光専用エレベーターで9階まで上がります。

今回の企画「物、ものを呼ぶ」

出光美術館は帝劇ビルの建替計画にともない、2024年12月をもってしばらく休館することが決まっています。休館までのラストイヤーとなる今年は「出光美術館の軌跡 ここから、さきへ」と題した展覧会が4期にわけて開催されています。「物、ものを呼ぶ」とは、陶芸家の板谷波山が出光佐三に対して語った言葉に由来し、「なんらかの理由で別れ別れになっている作品でも、そのうちのひとつに愛情を注いでいれば、残りはおのずと集まってくる」という、蒐集家が持つべき心得を述べたものだそうです。

心に残った展示物をご紹介します

『鳥獣花木図屏風』伊藤若冲

出光美術館HPより

会場に入るとまず、どどーんと伊藤若冲の『鳥獣花木図屏風』がお出迎え。
「升目書き」と言われる技法で描かれた象が、ででーんと存在感を放つ有名作品です。
升目書きとは、約1センチ四方のマス目を無数に描き、その中を同色の濃淡や別色の2色で塗りつぶす技法で、規則正しく並べられた升目はまるで現代のデジタルアートのよう。鳥獣花木図屏風の升目は約8万6000個!Excelやパソコンのない時代にどうやって描いたのか、想像がつきません。

屏風は一双屏風で、右側には大小さまざまな動物(日本猿、虎、兎、熊、猪、ラクダ、リス、象など)、左側には南国や想像上の鳥(マガモ、ガチョウ、オシドリ、孔雀、雷鳥、鳩、インコなど)が描かれ、まるで南国の楽園の風景のようです。きっと若冲が夢見た楽園だったのでしょうか?

『風神雷神図屏風』酒井抱一

出光美術館HPより

宗達の国宝「風神雷神図屏風」を光琳が模写し、さらにその光琳の模写を坂井抱一が再び模写した作品だそうです。
ダイナミックに描かれた風神雷神は、恐ろしい存在であるはずですが、どこか人間的で親しみやすい表情をしています。

若冲の鳥獣花木図屏風の向こう正面にこの風神雷神図屏風が展示されているという太っ腹!

『伴大納言絵巻』(三巻のうち上巻)

出光美術館HPより

出光美術館を代表するコレクション 国宝「伴大納言絵巻」。
応天門の変を描いた絵巻で、上巻には炎上する応天門というドラマチックな場面が描かれています。
赤々と燃える応天門、バラバラに逃げ惑う庶民たちと、高みの見物をする貴族たちとの対比が絶妙。今も昔も、格差は変わらず存在しているものですね。

祇園祭礼図屏風

出光美術館HPより

祇園祭礼を主題にした屏風絵として最古の作品。
内裏から松原通までの祇園祭の賑わいが描かれています。
お祭りでありながら、行列はお行儀よく進み、神事としての厳粛さが伺えます。

江戸名所図屏風

出光美術館HPより

こちらは一転、品川から上野に至る江戸の街並みが描かれています。
増上寺、神田明神、日本橋、浅草寺など、馴染みのある地名が描かれ、親しみやすさが感じられます。
吉原、歌舞伎、湯女風呂などの歓楽街、往来する人々、川遊びをする人々、お祭りの様子、さまざまな店などが生き生きと描かれ、この時代の人々も、現代と同様に楽しみを見つけて生活していたのだろうと想像しながら、楽しく観ることができました。

出光美術館のよさ

10数年前に関西から東京に引っ越してきた際、同級生に「出光美術館はオススメよ」と教えてもらって以来、足繁く通い、たくさんのコレクションを鑑賞してきました。
コレクションのクオリティはもちろん、国立博物館ほど混雑していないため、好きな作品を心ゆくまでゆっくりと楽しむことができます。
また、作品との距離も近く、若冲の『鳥獣花木図屏風』の細かい升目書きまで手に取るように鑑賞できるのも魅力です。
さらに、鑑賞後には皇居を眺めながらお茶を楽しむことができ、いたせり尽せりの体験です。心ゆくまでゆっくりと楽しむことができます。

しばらくのお別れ

冒頭に書いた通り、帝劇ビルの建て替えのため、今年の12月末をもって一旦休館となる出光美術館。ニュースを聞いた時は衝撃でした。
「しばらくってどれくらい?」
これが残念ながらまだ決まっていないようです。
それでも、数年後には必ず「新生 出光美術館」として再開されることを信じ、素晴らしい美術館として生まれ変わる日を首を長くしてお待ちしています。

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彩花サトコ
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