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通勤日記ータバコはいかが?ー

 ぼくはたばこをたしなまないが、吸う友人はたくさんいる。たばこが身体からだに悪いことは百も承知だが、やめて長生きするくらいなら、吸い続けて短命に終わってもいいとまで言う。まあ、その人の人生観なんだろうが、他人に健康被害と迷惑がかからないなら、たばこも酒と同じようにあつかっていいと思う。

 酒だって迷惑なときはある。とくに残業で遅くなった帰りの電車は、素面しらふの人間には耐えられない臭いだ。たばこに喫煙室があるように、車輌にも素面専用をつくって欲しいと思ってしまう。

 まあ、それはさておき。酒も煙草も、日本の法律では、二十歳にならないと楽しんではならない。だが、実際に酒やたばこを楽しんでいる人で、二十歳以前にはいちども試さなかったひとが、どれだけいるだろうか? これは推測だが、九割くらいのひとはフライングしていると思う。ただそれは、人知れず密かに、である。

     ☆     ☆     ☆

 ある日の朝、電車が朝霞あさか駅に到着したときのこと。ふと反対側の下りホームを見ると、ブレザータイプの学生服を着たひとりの高校生が、誰はばかることなくたばこを吸っていた。柱にもたれるような姿で煙を吐き出す姿は、まるで人生に疲れた中年サラリーマンといった雰囲気ふんいきで、最近の高校生もオヤジ化しているのかと思わせる。

 最近は、駅のホームに限らず、どこにでもこのような光景を見ることができる。冗談じゃないが、犬も歩けば喫煙高校生に当たる、といった感じである。中年男性に、健康志向から非喫煙者が増えているというのに、高校生の喫煙人口は増えているのではないだろうか? データを持ち合わせないので断言はできないが、印象としてそんな気がする。

 高校生が喫煙をしてはいけない、と主張するつもりはない。我々の時代にも、たばこを吸う高校生はいたし、事実ぼくも誘惑にられたことがある。ぼくの場合は、なんど吸っても旨いと感じられなかったので、若いころ数百本吸った段階で、自分に合わない嗜好品しこうひんだと結論づけた。

 ぼくがいいたいのは、いちおう日本の法律では、二十才未満はたばこを吸ってはいけないわけで、高校生がたばこを吸うのはルール違反であるということ。だから、当然のよう顔して吸ってはいけない。法治国家で安全に暮らす人間は、法に違反する行為をあえて行うのなら、悪いことをしているという認識を持つべきで、最近の高校生の喫煙態度を見ていると、物事の善悪さえ判らなくなっているのかと思ってしまう。

 話は飛ぶが、ある同僚の女性によれば、会社の女子トイレで、時々たばこの臭いがするそうだ。たばこを吸いたいが、会社の中では吸いにくいため、トイレで吸っているらしい。そういわれて考えると、デスクでたばこを吸っている女性を見たことがない。やはり周りの見る目を気にしているのだろう。

 事実、会社帰りに飲み屋に入り、近くで女性がたばこを吸っていると、「女のくせに」みたいな言い方をする人がいる。特に年配になればなるほど、その傾向は高くなるような気がする。まだまだ日本の社会は、女性に開放されていない部分があるのだと思う。断っておくが、ぼくはフェミニズムの活動家ではない。

 二十才を過ぎても喫煙に苦労している女性がいることを思えば、高校生はあと数年経てば堂々と吸えるわけで、それまでは我慢するのが良いと思う。もしどうしても吸いたいなら、人知れず隠れて吸いなさい。ただし、たばこが人体にどのような影響を及ぼすか、そのメリットとデメリットや、リスクというものをしっかり理解することが前提である。まだ君たちは、柔軟な発想ができる脳みそを持っているのだから。

【おまけの話】
 ぼくが以前勤めていた会社の同僚は、男性課員が十三名いたのだが、全員が非喫煙者だった。唯一喫煙するのは、庶務の女性。年に何度か、課で宴会などが開かれると、その女性だけがたばこを燻らせ、周りの男性は煙を気にするという構図で、実に可笑しかった。

 その女性も、結婚を機にたばこは止めたと聞いた。

・・・つづく

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