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通勤日記ー化粧は必須?ー

 ぼくの姉が若いころ、つけまつげを付け、目のまわりを黒く縁取ふちどりしていた。二十歳のころだから、昭和四十年代中頃なかごろだったと思う。

 奥村チヨという歌手の影響だと思っていたが、ここ最近そのような化粧が復活し驚いている。浜崎あゆみという歌手の影響だときき、テレビで確認してみると、たしかにお人形さんのような顔をした、素顔を感じさせない化粧美人な女性だった。

 今も昔も、ファッションリーダーの存在は大きいと言うことだろう。かくいうぼくも、青春時代はトラッドファッションが全盛で、紺のブレザーにグレイのパンツ、焦げ茶のスリップオンなんて格好をしていし、周りの女性は「ハマトラ」ファッションを競っていた。

 だが、昭和の時代とはすこし違う光景も目にする。それは、人目をはばからない化粧だ。バスや電車の中、ファーストフード店など、座れる環境さえあれば、どこでも目にすることができる。人前での化粧に一言いちごんある人も多いと思うが、いまは価値観の変化ととらえる方がいいのかもしれない。

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 志木駅へ向かうバスの中で、隣に座っている女性が化粧を始めた。最初は顔全体に何かを塗り込んでいたが、そのうちまつ毛をカールさせる道具(ビューラー)で折り目をつけ、最後に目の縁に沿って黒い線を書き込んでいた。駅までのおよそ十分間を、すべて化粧タイムに費やしていた。

 最近、男でも化粧をする人はいるが、まぁ一般的にいえば、化粧は女がするものである。だからぼくには化粧に関する効果や心理について、何もコメントすることはない。が、キレイに見せたいという気持ちは理解できる。

 美容師の資格を持つ妻によると、化粧をすることで容姿を美しく見せることも必要だが、欠点や見せたくない部分をかくすことで、心を解放する効果もあるそうだ。そう言えば、老人ホームで何年かぶりに化粧をしたおばあさんが、実に明るい笑顔に変わっていったというテレビ番組を観たことがある。

 ぼくも人生で一度だけ化粧をしたことがある。仲間でスキーに行ったとき、罰ゲームで化粧をさせられた。その時の写真が今でも残っている。好奇心もありそんなに悪い気分ではなかったが、キレイに見せるために肌を傷め、傷めた肌をケアするため様々な薬液やくえきで補うというサイクルには、とてもついて行けそうにない。これが心地よい気分になると、新宿二丁目あたりの世界に入ってゆくのだろうか? 幸いというか、ぼくはそれ以降、化粧をしたいと思ったことはない。

 これも聞いた話だが、化粧の結果がその日の行動を大きく左右する女性は多いらしい。化粧の乗りひとつでその日の気分が変わってしまい、外出の予定をキャンセルしたり、仮病けびょうで会社を休む人がいるそうだ。まぁ、会社まで休んでしまう人はそれほど多いとは思わないが。

 でも化粧ではないが、出かける段になって靴が気に入らないといって、服まで着替えて靴を履き替える人を知っている。そう言う意味では、服や化粧で自分の気分を盛り上げているのも事実のようだ。

 話はバスの女性に戻るが、おそらく寝坊をして化粧もせずに家を飛び出したのだろう。朝飯も食べていないかもしれない。女性が朝起きて出かけるまでの作業には、優先順位があるのだろう。ぼくが想像するに、どんなに時間がなくても実行するものは、顔を洗うこと、歯を磨くこと、髪の毛を整えること、トイレに行くなどで、朝食を食べる、化粧をするなどはプライオリティが低いのではないかと思われる。朝食は最悪食べなくても我慢できる。化粧も最悪バスか電車の中で、もしくは会社に着いてから化粧室でやればよい。

 でも男の立場からもの申せば、できれば化粧は見えないところでやって欲しい。昔は人まえで化粧するのは女郎じょろうだけといったそうだが、そんな例えを引き合いに出すまでもなく、なんか手品の仕掛けを見せられているようで、「それって違うんでないの」といいたくなる。使用前使用後を公開してしまうことにも、若干の抵抗がある。(個人の見解です)

 それにしても女性の化粧は、個人差があるにしても、それなりの時間がかかる。妻の場合は比較的短いそうで、十分以内には終わっているが、人によっては三十分以上かけることも珍しくないそうだ。この時間を毎日費やしていると考えると、実にもったいないと思ってしまうのは、ぼくが男だからだろうか?

 技術者の立場で言わせてもらえば、化粧品の成分などには技術の進歩は見られても、化粧をするという行為に関しては、昔も今もあまり変わっていないように思う。いっそ、顔に押し当てると数秒で化粧が終わってしまう機械を開発したら、爆発的なヒット商品になるのではないだろうか? 

 三次元デジタイザとNC(数値制御)加工技術を使い、その人にあった顔型を作れば、できそうな気もする。まあコストを低くおさえられれば、最近の若い女性の化粧が、のっぺらぼうに絵を描いたようであり、需要はあると思うのだが。

・・・つづく

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