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自分の理想像✖️過度な期待≠実現可能(私の場合)

書店に入ると、平置きされている最新書籍は自己啓発本が大半を占めていた。デジタル版をポチッとすることが増えたため、書店に足を運ぶのは久々だった。思わず見回した。3分の1がその要素を含む本に見える。身につまされる攻撃的なタイトルに足を止め、見入ってしまう。以前、その類の本を購入した際、そのノウハウは我が身に良い効果を与えてくれただろうか。心許ないと思い元の位置に戻した。「私はどうなりたいんだ」。苦笑する。

買い求めたのは車いすバスケットで東京パラリンピック銀メダリストの鳥海連志選手の本『異なれ』だ。この日、同選手によるサイン会が書店主催で行われており、そのサイン欲しさの購入である。別用で訪れたショッピングモールでイベントポスターを見たのがことの発端だ。ミーハーであることは否定できないが、画面越しの緊迫したプレイシーンでは見ることができない選手の素の表情を見ることができ満足した。

サイン会場で鳥海選手の脇に置かれていた東京パラの銀メダル


意図せず読むことになった『異なれ』だか、こちらも面白かった。鳥海選手の強みについての項目を5つの章に分類した構成で、例えば“自分を整える“、“俯瞰力を身につける“といった章立てだ。項目ではそれぞれ4ページ程度に端的にまとめているので読みやすい。一種の自己啓発本だが、鳥海選手の生き様を読んでいるようでもあり、その域に留まらない。プレイでの眼差しが文章の中にも表れていて、項目の一つひとつを読みながら選手がうちに秘めているスピリッツを垣間見るようだった。

その中に“ハードルを低く設定する”という項目がある。世界で戦う選手が設定するハードルがそもそも低いはずがない……ということはさておき参考にする。同書によると「試合に負けたり、思うようなパフォーマンスができなかったとしても落ち込みはしない」「反省点だけチェックしてあとはすべて忘れる」のだそうだ。その心は、高い目標は疲弊するし、未達成の際に自己肯定感が下がり辛くなるから、とある。

なるほど、、、、。我が身を顧みる。自己啓発本を買うたびに高くなる目標と、それに伴わない非成長ぶりは諦めの域に入っている。かといって自身に絶望しているわけではなく、前を向いているからこそ未だにその手の本に手が伸びるのだとは思う(その点に関しては評価したい)。

鳥海選手はさらにこんな文を続けている。「今日発揮できる100%を出せればいい」「毎日きちんと超えられるハードルを設定している」。世界の難敵と対峙し、日本中の注目を浴びて、その背にのしかかるプレッシャーは凡人には計り知れない。それゆえ余計なストレスは元から遠ざけ、ベストな体調、精神力を維持することが必要なのか、と勝手に納得した。参考点としては、自分に多くを求めず、目の前の課題に全力で当たる。普段の姿勢からのスタートという、実にシンプル且つ基本的な目標に至った。

自己啓発本は、我が身に落とし込めなければ意味をなさない。本との付き合い方についても考える機会となった。貴重な自己啓発本になったのは、私に宛てたサインを入れてもらったからだけではない。

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