【Vol.684】相手を”褒める”のではなく”認める”
【本のタイトル】
誰もが人を動かせる!あなたの人生を変えるリーダーシップ革命
【著者】
森岡毅
【引用文章】
褒めるという行為は、人を動かすための非常に強力な麻薬であるがゆえに、その麻薬性に気をつけなければなりません。もしもあなたが短期的な成果を自分に都合よく、できるだけ早くかき集めたいのであれば、もう叱ったり小言を言ったりするのは一切やめて、人の顔を見るたびに褒めて褒めて褒めちぎれば良いでしょう。その代わり、褒め方は表層的ではダメです。ご自身にどんな腹黒い動機があったとしても、相手を褒めるのであれば、本気で心底ほめてください。心にもないことを口先だけで語っても、相手は褒められたとは感じません。本気で「褒める」ことができるならば、短期的にはその方が高確率で成果を最大化させます。
しかしながら、もしもあなたが、持続可能な組織を作ることにコミットしているのであれば、やはりその麻薬に頼りすぎてはダメだと私は考えます。褒めることであなたの奴隷を増やすのではなく、認めることで自立したプロを育てるように相手を尊重し、それぞれのポイントが違うとも言えるでしょう。結果を褒めるのではなく、結果をもたらす確率を高めるその人の特徴を”慈しむ”ということです。私の中ではそもそも「褒める」というよりも「愛する」とか「感謝する」という言葉に近いのですが、その人の持っている「仏の部分」にありがたく手を合わせる感覚です。まあ、だから昔から”仏”の部分というなんとも変な表現になっています。そこの強い想いを仏という言葉にこめているのですが、どうでしょう。。。伝わるでしょうか?
そして、相手を認めるということは、相手にとっては時として厳しいことにもなります。相手の役割と特徴を認めるということは、あなたの中には相手に対する低くはない期待値が同時に設定されるからです。そのことは相手にとっては大きなやりがいでもあり、同時に大きなプレッシャーでもあります。もしも相手が目的を共有してモチベーションに主体性がある人でないならば、あるいはもしその相手が”目的思考の人”ではないならば、あるいは最悪、その相手が両方とも欠けているならば、そのプレッシャーはその人を潰してしまうリスクを孕んでいますから注意が必要です。
相手の「仏の部分」を見つけて、尊重する。できるだけ対等な関係のまま、強固な信頼で結ばれる。だからこそ、相手はあなたと共有する目的を、自分のやりたいこととして主体性を持って必死に追いかけてくれるようになります。それは、あなたの命令で”動かされた”場合よりもはるかにパワフルなリーダーシップを、その相手自身が発揮してくれる未来を作ることに等しいのです。その人は、あなたがその人に対して行ったやり方を覚え、その先でさらに主体的に動けるリーダーシップの強い人をどんどん増やしていってくれるようにもなります。人を動かすとは、そうやって主体性を持って自分ごととして動く「本気になる人の連鎖」を仕掛けていくことだと私は考えています。
実際には、自分に従順な人たちに囲まれることが気持ちの良い権力者が、飴と鞭による上下関係で支配する組織がほとんどです。特に強烈な創業カリスマが”健在”の組織はほぼ全てそうなっているのではないでしょうか?その結果、次世代リーダーが育たず、その創業者が去った後に組織はどうなるのか?という課題に直面している大企業は山ほどあります。だから、かつて中内功が興した巨大な企業体「ダイエーグループ」のように、実質一代で潰えていく会社が、規模に関係なくほとんどなのです。
だからこそ、この本気の連鎖を仕掛ける技術は輝くのです。私は、新時代の組織のあり方の実験として、刀の持続可能性に最初からこだわっています。私でないと操縦できないマシンは設計したくありません。そこで悩むのは、第一世代のある意味クレイジーな個人技に依存している”習慣”を、どうすれば組織として継承可能な”伝統”に転換できるのか?という点です。そこでの最大テーマも、人を本気にして主体性を持たせるリーダーシップの力の伝承であり、組織の未来はまさにそこにかかっているのです。
【具体的アクション】
人を動かすために、相手を”褒める”のではなく”認める”