熊本のデザイナーがニューヨークADC賞を獲るためにやった3つのこと。
熊本の北の方、山に囲まれた小さな町「南関町」。この地で長年竹の箸だけを作り続ける小さなメーカーさんがあります。「ヤマチク」さんです。
「ヤマチク」の三代目、山崎彰悟さんにご相談を受けたのが、2017年6月でした。BtoBの拡充のため、営業ツールとしての会社案内やウェブサイトのリニューアル、ロゴのリデザインを進めていきました。2018年に入った頃から、プライベートブランドの開発が始まりました。幾度も打ち合わせを重ね「日本のお箸の原点回帰」をコンセプトに「okaeri」が生まれました。
その「okaeri」の第一弾「おかえりの箸」が、第100回ニューヨークADCのパッケージデザイン部門で入賞しました。
※2021年6月9日が授賞式でその日まで「何賞」かわかりません。
「ニューヨークADC賞」は、1920年に創立されたアート・ディレクターズ・クラブ(ADC)が、商業広告やデザインを美術品と同様の評価軸で表彰する世界で最も歴史のある広告賞です。
https://www.adcawards.org/
ニューヨークADCは夢のまた夢。しかも記念すべき100年目!自分が関わった仕事で、まさか受賞できる日が来るなんて(喜びの文章は死ぬほど書けるのですが、そんなもん誰も読みたくないと思うので、ここはサラッと終わらせます)。
というわけで、地方在住であっても、決して大きいとは言えない仕事だとしても、みんなの思いのこもった仕事なら、ニューヨークADCを受賞できることを証明できたので、受賞するためにやったことをご紹介したいと思います。
その1/とことんまで話し合う
クリエイティブの源泉は「言葉」だと思っています。ぼくたちは神様ではないので、言語化できてはじめて形を作ることが出来るんだと思います。山崎さんやヤマチクの社員さんと、何度も打ち合わせを重ね、山崎さんとはSNS やチャットを通じて、それこそブランディングの話からくだらない話まで、無数のキャッチボールを繰り返してきました。そこで生まれた言葉に「okaeri」もあります。「誰が言ったか、誰が考えたかすら定かではない」レベルまで議論して、砂金のように沈んでいる言葉をすくい上げて、いっしょにブランディングを進めていきました。
その2/チームをつくる
ぼくの仕事で一番重要なのは、チーム編成です。議論の中で生まれた世界観を目に見えるものとして表現できる人たちは誰か。まずは、会社案内のデザインからずっとヤマチクのデザインを作り続けてくれた、デザイナーの杉村武則くんにパッケージデザインをお願いしました。数少ない努力もできる天才タイプです。いずれ九州を代表するアートディレクターになると思います。
設計・印刷を熊本の印刷会社「池田紙器」の吉永洋一さんにお願いしました。
デザイナーの感性と印刷会社の設計技術が合わさって初めてパッケージになります。時には製箱・印刷の専門家としての視点で、吉永さんから逆提案もらうなど、デザイナーと設計の良いところがぶつかりあって、ユニークなデザインへと昇華していきました。紙に使う素材選びや、箔の色をどうするか、東京での展示会にも足を運び、みんなで議論を深めました。もちろん、コストも考えながらです。
その3/応募する
身も蓋もないですが、応募しないと受賞できません。みんなで作りあげた素晴らしいプロダクトを、「世界中の人たちに見てもらいたい」と思ったっていいですよね。英語なんて翻訳ツールでどうにでもなります。エントリーフィーも数万円しますが、英語の勉強代と思えば安いものです。ビリー・アイリッシュも良いこと言ってます。ちょっと分野も意味も違いますが、表現は外に出さないと何も始まらないという意味では、根っこは同じです。ぼくもこれまでいろんなコンテストに何度も何度も落ちてきました。その都度ムカついたし、心が折れますが、何度でも出さないと獲れません。
まとめ
デザインについての話や、写真についてとか、語りたいことはもっともっとあるのですが、それはまた別の機会に。このnoteで言いたいことは、高卒でも、田舎でも、ビッグバジェットじゃなくても、ナショナルクライアントじゃなくても、有名クリエイターじゃなくても、「ニューヨークADCは獲れるよ!」ってことです!断言しますが、ぼくらでも獲れたんだから、だれでも獲れる可能性はあります!
というわけで、今日も楽しくデザインしましょう!
もし、このnoteを読んでくれたひとの中に、若いデザイナーさんがいたら、↓からウェブ会員登録しちゃいましょう。最新のクリエイティブに触れるだけでも価値ありますよ。
■ニューヨークADCのサイト
https://www.adcawards.org/
【追記】※2021年6月1日
株式会社かつあきでは、ローカルから世界に挑む仲間を募集しています!
■マークアップエンジニア1名
おもしろいウェブ案件が増えているのと自社コンテンツ拡充・発信のため。
詳細・応募はこちらから!
https://forms.gle/S9Rtb27Sh24kAesW7
【追記】※2021年6月2日
調子乗ったついでにこんな検証もはじめました。
【追記】※2021年6月3日
ヤマチクの山崎さんもアンサーnote書いてくれました。併せてどうぞ!