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宣材写真を撮る時のこと

宣材写真を撮る時のことを話してみようと思う。

宣材写真を撮れるようになろう、と思い立った数年前、どう撮るのが良いのかを調べたり人に聞いてみたりしたのだけど、分かったのはどうやら「明確な答えを持っている人はいない」らしいということだけだった。

ならばどんな写真でもいいのかと言えばそうでもないようで、写ってる本人は「とりあえずポートレートで撮った写真を使ってるけど、これでいいのか分からない」と言っていたり、宣材を見る側の人は「送られてくる写真のほとんどは相手のことがよく分からない」と言っていて、じゃあどうしたいの、どうして欲しいの、と問うてもまた「分からない」が出てくる無限地獄なのであった。

もう君たちは…と途方に暮れそうにもなったのだけど、この状態を逆手に取れば「私がどう撮ってもルール違反にはならんのでは?」と思うに至った。だって誰もルールを知らないんだもん。

それなら、私にもやれることがひとつだけ残っている。せめて私だけでも「分からない」を言わないこと。その為には、「分かろうとする努力」を重ねてみることだ。

という訳で、私は依頼されたらまず、お客さんを「分かる」ことから始める。何かひとつ分かれば、少なくともさせてはならないことくらいは分かるし、「こうしてあげたい」が出てくることもある。

例えば役者さんなら、どんな役をやりたいか。いつかピーターパンをやりたい人なら、辛気臭い顔をさせてはならない。

自分の持ち味は何か。長身を売りにしてる人なら、しゃがんで全身が見えなくなるようなポージングをさせてはならない。

映画を中心に活動したい人なら、好きな監督を聞き、その監督の映画に合わせた色味で仕上げてもいいかもしれない。

なんでも演じられる人になりたいなら、白背景でシンプルなライティングと衣装で撮り、余計な先入観はできる限り削いだ方がいい。時間に余裕があるなら、思い切り個性的な衣装に着替えて化けれる自分を見せつけるのも良いだろう。

その他にもお客さんのSNSや活動歴を拝見したり、私から質問攻めをしたりして、分かったことから撮り方を提案する。予算やスケジュールに限りがあったり、事務所の規定があったりで、全てがこのように自由になるとは限らないが、概ねこうした努力を重ねていく。

そうして撮らせてもらった写真が正解であるかは分からない。私がどう努力しても、結局宣材写真にルールがないことには変わりないからだ。私は「少なくとも、私から見たあなたはこうです」という写真を撮ってるに過ぎない。

けれど、不思議と同じ感想を頂くことが多い。

「これが私という感じがします」

「これでオーディションに落ちたら相手に見る目がないんです」とまで言ってくれる方もいた。

正解ではないかもしれない。でもきっと次の点では合格だと思う。

「これが私」と胸を張らせてあげること。

これをクリアして、初めて宣材写真と言えるのかな、と思う。

少なくとも、私が守るべき唯一絶対のルール。

トップ画はミュージカルで活動したいという方の宣材写真を撮った時のオフショ。noteのトップ画、縦位置の写真も載せられたらいいのにな

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