No Music No Life ♪♪ 第3回
誰にでも、想い出の音楽がありますよね。
あなたの心に刻まれている音楽は何ですか❓
ここでは、僕の心に残っている音楽を
皆さまに紹介していきます。
若いころ、ミニサイクルでローマ市街地の路地から路地へと走り巡っていた時期がありました。
その頃、お気に入りの日本料理店が
Hasekura Ristorante Giapponese
ローマの観光地「コロッセオ」から北に進路を取り、細い路地をかっ飛んでくるイタ車に注意しながらセルベンティ通りに辿り着くと、左右のお店に挟まれたそのお店は窮屈そうに姿を現します。
店名の「支倉(はせくら)」は、仙台藩士 支倉常長からいただいたと、オーナーから聞かされました。
支倉常長は、伊達政宗の命を受け、遣欧使節団として日本人で初めて大西洋を渡り、ローマを訪れた人物です。
その人物に肖り(あやかり)、その大志を引き継ごうと、お店の名前を「支倉」と決めたそうです。
その支倉で、お気に入りの天ぷらそばをいただき、お寿司を手土産にして、自転車のハンドルにぶら下げて帰る…それが何よりの愉しみでした。
ちょうどその日も、ハンドルに”それ”をぶら下げて、ふらふらと自転車をこいでいると、路地の先に小さな公園が見えてきたので、 そこでひと休みすることにしました。
その小さな公園の真ん中では、小さな屋台が営業しています。
その屋台から、ホットサンドの良い香りが漂ってきました。
公園のベンチの脇に自転車を止めて、ベンチに座って、ぼんやりとその香りを愉しんでいると、小さな男の子がこちらに近づいてきました。
僕の目の前で立ち止まった男の子は、その横に止めた自転車に興味津々です。
「坊や、ちょっと待ってて」
こう言って、僕はミニサイクルのサドルレバーを解除し、サドルを一番下まで下げました。
「ほら、乗ってみな」
こう言って、手で合図すると、その男の子は、満面の笑みでくしゃくしゃにした顔をこちらに向けて、自転車を跨ぎました。
それ!
その子が乗った自転車のサドルを押してやると、自転車は弾かれたように飛び出していきます。
小さな公園では、その子の叫び声と共に
自転車がクルクル回っています。
それが、3周目に入ろうとした瞬間、公園の中央から怒鳴り声が聞こえました。
“Francesco! Il pane è bruciato.”
その子は、その怒鳴り声をきいた瞬間、肩をビクッとさせ、直ぐに自転車を降りると、僕のところにやって来てこう言いました。
「お父ちゃんに怒られちゃった」
「仕事に戻らなくっちゃ..」
その子の澄んだ瞳は、とても哀しげな表情に変わっていました。
・・・
あれから、数十年の月日が流れました。
あの時の、あの男の子は
今、いったい何処で
何をしているんでしょうか?
ひょっとしたら、あの小さな公園で
寂しそうな瞳のまま
空を見上げているかもしれない…
そんな気がするこの曲です。
和楽器なのに、その音色は
ローマの空の青色を思い起こさせます。
New Cinema Paradise 東儀秀樹