骨が脆い人の人工股関節置換手術顛末
生物学的製剤(免疫抑制剤、持病で使用中)を打ったばかりだったので、感染症を恐れ2週間待った末、10月初め、骨折してから2週間と4日後に手術が叶いました。
人伝に聞いたのですが、最近長嶋一茂さんも人工股関節置換術を受けて1週間後にはテレビに復帰していたそうですね。たった1週間で退院できるなんてすごいです。
一般的には手術翌日から立って歩く練習が開始され、2〜3週間で退院できるみたいです。
私が初めて人工関節を入れたのは両膝で、今から30年も昔のことですが、持病がひどい炎症状態の中手術を受けたこともあって、退院まで1年近くかかりました。その後も右股関節や両肘などやりましたが、一つの関節に2〜3ヶ月はかかっていました。そんな時代は去ったようです。
歯が欠けるかもしれない
手術前には執刀医、麻酔科医、病棟看護師、手術室看護師など、様々な専門分野から説明を受けます。患者の不安や疑問を取り除くため懇切丁寧に説明し質問に答えてくださいます。
私が一番怖いのは麻酔です。麻酔の後、気持ち悪くて数日ご飯が食べられない経験を何度かしているので、これが心配。首が固まっているため呼吸の管を入れる時トラブルがないか心配。顎関節にも問題があるので、しっかり口を開けて挿管できるのか、終わった後顎に痛みが残らないかも心配。
全部話しました。
MRIで首は検査済み。先生はベストを尽くしますとのこと。
そうしたら主治医の先生がその後やてきて、「歯が欠けちゃうかもしれない」。
ぐらついている歯はないので、首と顎がカタくてやりにくいのだろうと察しました。
結果として、こんなに麻酔からスッキリ目覚められたのは初めてでした。
食べられない時に備えて、ポカリスエットやゼリーを用意しておいたものの、病院食をしっかり食べられました。
歯も無事、顎も無事。
懸念される傷の痛みはそれほどでもなく、ただ手術したあたりの硬さと重たさだけ。20分おきにしか作動しない痛み止めも、ほとんど使わないですみました。
麻酔科の先生とは接点がほとんどありませんが、先生、どうもありがとう! と感謝せずにはいられません。
90歳の人がする骨折です
一茂さんのスピード退院に比べ、今回、私の怪我した足に荷重を許可されたのは、術後1週間後のことでした。おそ。
手術終盤、傷を閉じたら脱臼してしまい、もう一度開けてやり直したそうです。ところが、やり直そうにも今度は骨が脆くてうまくくっつかず、先生はだいぶ苦労されたようでした。
人工物がしっかりした金属であるのに比べ、それを支える骨が弱く、ポロポロ崩れてしまうような状態、なのかなと想像します。
今回は大腿骨頚部骨折でしたが、膝と股関節が人工関節の場合、二つの金属に挟まれて自分の骨がちょっとした衝撃で真っ二つに折れた、そんな経験をした同病の友人もいます。私の骨も金属を支えるにはポロポロで弱かったのでしょう。
12時半に手術室に入り、15時半には戻れる予定だったのに19時過ぎまでかかってしまったそうです。
「また脱臼してしまう可能性があるから、その時は専門の先生を呼んでもう一度やり直します」と先生。ポロポロしない場所を探してくっつけたらしく、ベストポジションではなかったらしい…。
「何十例もやってきたけどこんなこと初めて」だそうで、あれほど持病と骨の脆さのことを説明したのにぃ…、先生だって「これは90歳のおばあちゃんがやる骨折です」なんて言って、骨が脆いのわかってたはずなのになぁ、と、がっかり。
輸血することは滅多にないからという話で、輸血使用にサインはしましたが、結局輸血したというし(かつての薬害事件を思い出し、いつでも輸血の同意書は躊躇してしまいます)、なんだかしゃっきりしない術後でした。
(※ 病変などで予定された人工関節置換術に対しては、あらかじめ自己血輸血用に貯血しておきます。骨折の場合は貯血はNGなのだそうです)
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、検査技師、患者、みんなで脱臼怖い
そういうわけで、『脱臼させない』が第一命題の術後。
初めの1週間はリハビリの先生2人がかりで、1人が必ず手術した足をそろーっと持って車イス移乗の練習。リハビリそのものも脱臼しない肢位を取ったままで運動。それ以外の時間は足枕に固定。体位変換というほど動かせないなりにも、看護師さんは足を持ってそろっとそろっと。放射線検査も、技師さん総出でそろっとそろっと。トイレはおしっこの管を入れたまま。
一般的に術後2、3日後には歩行器や杖による歩行訓練が始まり、もちろんそうなると早期に尿の管も取れます。
昔も、手術翌日からベッド上で曲げ伸ばしをして関節可動域を固まらせないリハビリをしてもらっていました。
そんな大切な手術直後の1週間が、固定、固定で過ぎていきました。
こんなにモタモタしていたら関節が曲がったまま固まってしまう、早く可動域を確保すべくリハビリをやってほしいけど、それは脱臼リスクが高くてできない、というジレンマの中、血圧は低いままだし熱は上がったり下がったり、ヘモグロビン値も低くてもう一度輸血と、術後の1週間はパッとしないまま過ぎてしまいました。
だけど癒しの1週間
とはいえ、脱臼怖いの最初の1週間で体から外されたのは、酸素(手術翌日)、首の留置針と腕の点滴(3日目)、腕の留置針(4日目)。
ちょっとずつ体が回復していくのが感じられました。
並行して、リハビリは車イス移乗・トイレ移乗の練習、ベッド上の運動とマッサージ。固定している足枕から解放されて、車イスに乗って起きていられる時間を午前午後に取ってもらえることがありがたかった。
車イスで談話室まで連れて行ってもらい、すっかり10月になってしまった外の風景を見て、「季節がずいぶん進みましたね」と、足をマッサージしていただきながらリハの先生方と話をする。
そんなひと時が楽しみの1週間でした。
一体何がぶっ詰まっているのかと訝るほど、お尻から膝まで腿がパンパンになっている感覚、傷周りのカチカチゴロゴロとした異物感は変わらず。
そんな中、2週目に入ると次は歩行器で歩く練習が始まります。
2週目に全てから解放
食事は手術翌日から取れていたものの、便秘がひどく、7日目にようやくお通じあり。同日、レントゲンを確認し荷重が許可されると、右足に巻いていた血栓防止のマッサージポンプも解除。
荷重のゴーサインで歩行練習も始まりました。同じ手術をした人から1週遅れのスタートです。
翌8日目におしっこの管も抜いてもらい、排泄しやすくなりました。オムツ生活、さようならです。
この日、術後初めてのシャワー浴で、それはもう気持ちよかった。血栓防止用の着圧ソックスも免除です(こいつのせいで足に水脹れがいくつかできてしまった、スッキリした)。
10日目のCTで足枕も外してよいことになり、やっと体にまとわりつくものが全て!なくなりました。
股関節を内転(内側に曲げる)伸展(伸ばす)させないよう、一定の角度を維持して固定する足枕、地獄の足枕、思い出とトラウマの足枕、さようなら。
あぁすっきりした。
たかが20メートルで激筋肉痛
平行棒で立つところから始まり適切な高さの歩行器を選び、それで10メートル、20メートル・・・歩く練習が始まりました。
はじめの2日で激烈な筋肉痛。山に行った時だってこんな筋肉痛にはならなかったのに。歩行器に必死で捕まるから、手も悪い私は肩がギシギシとしてこちらも痛み始めます。
傷周りの腿は相変わらず、いやマシマシで、カッチカチのパンパカリン。
病室に戻るとぐったりとして食事とトイレ以外は何もできず、気力も持ちません。
遠い道のりだなぁ。元のように戻るかなぁ・・。
そろそろ救急車でここにきてから1ヶ月。楽しみにしていた秋の連休は全てフイになり、たった1ヶ月で那須はもう冬支度に入ろうとするほどに季節が進んでいました。
入院した時はTシャツだった、暑かった、それなのにもう持ってきてもらった夏のパジャマは役に立たず、秋冬の着替えを持ってきてもらい・・・。
「今朝、ストーブ入れたよ」
キンちゃんは、淡々と過ぎてゆく家の様子をスマホで送ってくれます。
テツは涼しくなって体調がだいぶ良いようです。会社を休んだり時間休をとって週2回の点滴にテツを連れて行ってくれ、日曜日の面会は欠かさずきてくれます。
1日1日が、静かに過ぎていきました。
連休はリハビリなし
術後2週目の週末は3連休でした。
病院のリハビリは基本、日曜祝日が休みなので2連休。体に何も巻きついていない、リハビリもない、ただ病室にいるだけの連休です。
祝日の日に久しぶりにパソコンを開きました。溜まったメールを捌き、生協やヤクルトの注文を考え、先月の支出を確認し、そうそう、健康保険料の納付もやらないと・・・などなど。
その後noteをのぞいて、あ、こんなコメントをいただいていたのに見落としてる、こんなに何度も見にきてくださってる、など思いながらコメントに返信して・・・。
うむうむ、『いつも』のリズムが戻りつつあるぞ。
2日間で足も休まったようで、少しずつパンパカリンの腿にゆるみが出てきて、立つことが苦痛ではなくなってきました。
よしよし
主治医の先生は、術後しばらくは良いのか悪いのか見当がつかない物言いでした。
レントゲンやCT検査室に現れて「その姿勢はダメダメ、こうこう」と技師の方々に指示を飛ばし、一緒になって私の足をそろっと持ち上げ、脱臼しないように見守ってくださいました。
そんな術後の一週間が、功を奏したのでしょう。
二週目のある日、リハビリ中に現れて「よし、よしよし、いいですね」。
3週目に入ったその日の採血結果を見て
「良過ぎて怖い」。
どんだけ最悪ケースを想定していたんだろうかと思います。生物製剤を使っている人は血液検査に体の反応が素直に現れないそうで、全てが正常値になりがちなんだとか。でもま、結果オーライということで。
これだけ何事もなく過ぎれば、そろそろ脱臼リスクは横に置いておいていいんじゃないでしょうか(素人の私の見解)。
脱臼を回避できた代わりに、少し股関節が曲がったままになりそうですが、もうちょいここで、しっかりリハビリしていきます。
☆ ☆ ☆
多くの方々にご心配いただいたのに、何週間も音沙汰なくしてしまったこと、申し訳ありません。
いただいたコメントとスキに元気付けられています。近況報告が長くなってしまいましたが、お立ち寄りくださって、どうもありがとうございました。
こんな感じで、のんびり、那須の空を眺めながらリハビリに励んでおります! 談話室からの眺めはとっても素敵なんですよ。
☆ ☆ ☆
股関節や膝が痛くて、でも怖くて手術に踏み切れない方もいらっしゃると思いますが、一般的に人工関節の手術はこの私の事例より軽く、歩けるようになるのもずっと早いはずです。
痛みが無くなる、それはあらゆることを好転させます。お悩みの方の、多少の慰めになれば幸いです。