『ゲーム・オブ・スローンズ』(今、ですか?)
『ゲーム・オブ・スローンズ』(原題:Game of Thrones、略称GOT)。
今ごろになって見たのだが、かなり面白かったのでnoteに書いてみます。
全部で8シーズン。1シーズンが大体10話(10話ない章もある)で、1話約60分前後(最終章はほぼ80分だった気がする)。
アメリカで2011年から放送が始まり終わったのは2019年らしいので、10年近く続いた大大河ドラマになる。子役が大人になるまで続くドラマは、私にとっては『渡る世間は鬼ばかり』以来だ。
ジャンルはファンタジーだが、骨格は中世の王位をめぐる時代劇。日本の時代劇がすっぽり当てはまるような忠義と奸計渦巻く設定だ。
込み入った人間関係と登場人物の多さに加えて、架空の生物ドラゴン、巨人、そしてゾンビ(本編中はホワイトウォーカーと呼ぶ、人間に襲いかかる死者たち。噛まれてもゾンビにはならないのでほっとして見られる)、魔術師(祭司)が加わり、物語は非常に複雑、そして抜群におもしろい。
多分イギリスの地理と歴史をベースにしているとしても、東洋以外世界各地の歴史や文化が編み込まれている感じで奥行き深い。
宮殿、街並みなど世界遺産クラスのロケーションで撮影されているのかな、、CGで作り上げたのかな。。とにかく映画館のスクリーンではなくテレビドラマなのがもったいないほど背景映像が美しい。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のロケ地巡り、なるツアーもあるみたい。
また、戦のシーンはリアリティに徹していて圧倒される。喉を切れば血飛沫、腹を切り裂けば内臓が飛び出、頭はかち割られ顔が崩れる。殺し合いの凄まじい残酷が映像化されている。
他、以下に私なりの鑑賞ポイントを書いてみたのだけれど、ごめんなさい長くなっちゃった。
☆ ☆ ☆
異形の者(または障害者)が物語の鍵
この物語で最も魅力的なキャラクター(だと私は思う)、ティリオンは極端に身長が低く、名家の男子ながら親兄弟に『怪物』と呼ばれ、蔑まれ憎まれて育った。家臣はじめ周囲の者にも馬鹿にされ嘲笑されているが、大胆で知力に富んだ政治的センスは、凡庸な諸侯に抜きん出ており、どの統治者の元においても必要不可欠な人材になる。だからこそ、低身長すぎて戦えない男は、生き延びることができたようなもの。
役者は軟骨無形成症による低身長症だそうだが、美男美女の俳優陣の中で抜群の魅力を発揮している。
生まれながらにして差別の中で生きた者の苦悩が、私をはじめ障害視聴者の(もちろん健常者も、いじめを受けている人、何らかのコンプレックスを抱えている人全ての)共感をよんだのではないかと思う(のだが、そうでもないかな)。
もう1人。
前半から出てきて中盤以降で活躍するホーダーという大男。事故か何かで脳に障害を負ったのか、五体満足で怪力を有してはいても言葉が自分の名前しか話せない。
ホーダーがなぜ「ホーダー」しか話せなくなったのか。
少年期の受傷(というより発作)によるところが物語後半で明らかになるが、現在が過去に繋がるというSF的要素と、未来で守るべき人を守るため、過去で障害を負ってしまうという宿命の描き方が見事で、ホーダーの意味(=Hold the Door)に視聴者は愕然とすると思う。
また、物語には2人の両下肢機能全廃者が出てくる(時代劇だけど車イス使用)。障害ゆえ、戦闘能力皆無だが、それぞれが指導的立場に位置、または最終的にそう求められることになる。
障害をテーマとした障害者主役の話ではなくて、主人公ではないただの障害者が出て来る物語は、障害者的に共感しやすい。
毒親たちは子供どころか国をも歪める
領主諸家は毒親が多く、時代的に仕方ないが、強権的、封建的で子供の自由を全く許さない父親ばかり。
毒親の息子や娘は、彼らが受けた差別と暴力をより残酷で非道なものにして下々へと力を及ぼす、または親殺しへと発展する。
母親もとんでもない毒親が2人ほど。
そのうち1人がサーセイ。ある意味主役じゃない?というくらい、ほぼ全ての章で強烈な黒いカリスマを放ち続けている。悪女なのだがとても魅力があるのだ。でも悪いやつゆえ、多分多くの視聴者がサーセイの死に様を、こうやって死んでほしいああやって死んでくれと、あれこれ想像したに違いない。
演じた女優さんの力もあるのだろうか、そのくらい、強烈な存在感だ。
女性たちは男たちの道具にとどまってはいない
いつの時代もどこの国でも、どんな名家の生まれであっても女は男の道具なのである。と、多くの物語が描き、GoTでもそれは同じ。
スターク家の長女サンサ。そういう意味では彼女がこの物語で象徴的な描かれ方をしている。父が謀反の嫌疑をかけられ、彼の無罪のために奔走するが叶わず、謀反人の娘として散々に利用される。
王家では味方が誰1人おらず、本心を隠し抜く。サイコパスな元婚約者の王やその母にいたぶられ、その後は望まぬ結婚、レイプ同然の新婚初夜など恐ろしい経験を経て、やがて北の領主にまで成長、独立を宣言するに至る。
騎士として主人を守り通す女性、仇討ちを誓い過酷な旅を経て、一流の剣士に成長する女性。そしてその女性たちが、周囲の獰猛な男の人間性を引き出してゆく様子も描かれおもしろい。
個々の女性の描き出しも素敵なのだが、群像としても、実は女が政治を動かしている、そんなエピソードへと物語は変わってゆく。
男たちは戦に明け暮れお互いに殺し合った末、物語の中盤をすぎると指導的地位には、ほぼ女しか生き残っていない。
物語は、サーセイ女王vsデナーリス女王という構造になっていくが、サーセイ女王を倒すためデナーリス女王の下に諸家の女性の長が3名参じている。最後に北を治めることになるサンサ含め、女は世継ぎを産む道具などと、男どもの思惑通りにならないところは、ある意味でファンタジーかもしれない。
獣たちの存在感
最も賢いのはドラゴンだ、というメッセージは最終章で描かれている。人間たちが殺し合い奪い合った鉄の玉座を、人間のために戦い兄弟と母を殺された最後のドラゴンが、炎で溶かしてしまう。
そして母の亡骸を抱いてどこかへ飛んでゆく。このシーンは一番切なかった。
馬たちは戦で殺され続ける。
戦の巻き添え(供出)で死ぬ動物の話は、日本でも第二次世界大戦等で枚挙にいとまがない。モノ言えぬ動物が利用されて死んでしまうのは、フィクションかどうかに関わらず当然のこととして描かれている。
またスターク家の紋章にもなっているダイヤウルフの子犬6匹を、スターク家の子供達が1頭ずつ育てるシーンがあるが、この狼たちも、主人によって生死を分ける。生き残るのは2頭。あとは主人と共に殺され、または主人を守るために死んでしまうのだ。
動物が死ぬのは、物語の中でも嫌だなぁ。
ラストの大虐殺
ドラゴンが火を吹き街一つを壊滅させてしまうのは、その母デナーリスが、共に歩んできた側近女性を殺された恨みによる。
大切な人を殺される。
そのことは人を鬼にし、復讐は次の報復へと連鎖して戦争へ。戦は恨む相手の属性全てをぶち壊すまで終わらない。
ドラゴンが焼き尽くした廃墟シーンで私が彷彿したのは、原爆投下後の広島だ。製作陣にその意図があったのかどうかは知らないが、戦争の悲惨、大虐殺の酷さを象徴していてとても印象的だった。
最後にご注意
殺し合いや処刑シーンなど残酷さのリアリティはまぁ仕方ないとしても、しとねを共にする男女のシーンのリアルさはどうだろう。
このドラマ、やたらと女が(男も)裸になる。裸で絡み合うシーンが多すぎる。お尻とおっぱいを出さなくてもそのシーンは撮れるだろうと思うが、リアリティに徹している、ということかしら。
家族で見ると、かなり気恥ずかしい。いや、親とか、子供とかとは一緒に見ない方がいい。。。
最後におまけ
エド・シーランが、しれっとドラマに出演していてちょっとウケた。中盤の後ろの方くらいだったろうか。吟遊詩人の役かと思ったら普通の一兵卒として、歌ってた。あまりに平和すぎるシーンで、歌ってる最中に喉を掻き切られたりしないかハラハラしてしまった。
※ 人物写真:https://wallpaper.mob.gr.jp/pc/ から拝借
※ ストーリーや名前等に誤りがありましたら、私の記憶違いです。ごめんなさい、ご指摘よろしくお願いいたします。