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終わらない線香花火

彼女と別れ、帰宅する。
時刻は朝5時。
仕事もあるのによくやるものだ、と我ながら呆れる。
でもしょうがない、それほどの魅力が彼女にはある。

彼女に会うのに車で一時間。
もちろん帰るのにも同じ時間がかかる。

車から降りる前に、運転中にとどいた彼女からのLINEに目を落とす。
凄く気になったが、理性で家に着くまで見なかった。

彼女からは

「楽しかった」
「幸せだった」
「気をつけて帰ってほしい」

とのメッセージ。

よかった。
今日も楽しんでくれていた。

彼女はもう寝ているだろうが、返信してしまう。
何故ならは彼女が起きたら返事をくれるから。

「おはよう」
「お疲れ様」

なんでもいい。
その言葉を楽しみに、メッセージを送る。
まだ知り合って一月もたっていない。
会ったのも三回目。
なのに確信を持って、待つことができる。
そんなことを思わせてくれる彼女がたまらなく愛おしい。

そして、もう一つ。
LINEを見て先程のことを思い出してほしいから。

仮眠して、数時間後の仕事中。
思った通り、彼女からの返信。

「お疲れ様」
「眠いけどいっしょにがんばろー」

自然と緩む口元。

返事を返していると、どちらからか自然と先程の話題になる。
そして熱冷めやらぬまま、2人で繋がっていた思い出を、感想を伝える。

気持ちよかったこと、興奮したこと、もっとしたかったこと、次会った時にしたいこと。
そして完全に再熱する。

お互いに朝まで交わっていたので、その日の夜は寝落ちてしまった。
ただ、翌朝確認すると、2人とも昨日のことを思い出して1人でしてしまった、という話になる。

もう止まれない。
彼女が無理をして時間を作ってくれることになった。
2日後、朝から夕方まで。

彼女との行為は、会う前から始まっている。
メッセージという長い長い前戯。
そこで火がつくが、会ってもすぐには交わらない。

唇を重ね、首筋に唇を這わせる。
言葉でどんなに魅力的であるか伝える。
ゆっくりと火が燃え盛る。

直接肌に触れる時、交わる時、火は音を立てて燃え盛る。

どちらかが果てた後、火は緩やかに収まる。
しかし消えない。
果てた後でも触れたい欲求は衰えず、腕枕をしつつ、頬に手を触れ、額に唇を落とす。

彼女との行為はまるで線香花火。
火がつき徐々に拡大する。
徐々に火花をあげ燃え盛り、ピークを迎えた後は穏やかに鎮火していく。

ただ、そこにひとつ違いがあるとするのならば、一度ついた火が消えることを知らない。

そう、僕と彼女は、
終わらない線香花火を続けている。

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