良質の猪肉と骨で出汁をとったラーメンがめっちゃ美味しかったという自慢話。
「44」という名前のラーメンです。
「シシ」と読みます。
そうです、この作品のテーマは皆さんの予想そのものなんです。
スープは猪の肉、骨からなるもの。
トッピングにはたっぷりの猪の赤身とレバーでしょうか、そこにとろっとした餡とネギが添えられています。
私は間に合いませんでしたが、先着の数名にはお椀の倍近いサイズのスペアリブがどーーーんとトッピングされていました。
スープは肉出汁の味わいが柔らかな旨味をつくり、骨が旨味にコシを与える印象です。
豚ベースのスープに比べるとまろろんとした甘味が控えめな一方で、ぐいと噛みついてくるような骨太の旨味を覚えます。
平面的に馴染んでいく豚の個性よりもむしろ、肉の締まった野生の鶏にも通じるような、荒々しい立体感ある味わいが感じられるのです。
トッピングされた餡は甘辛さを感じさせ、これがスープにじわじわと干渉していきます。
スープには輪切り唐辛子などからの赤い辛味と黒胡椒の個性が重ねられており、この二種類の辛味と餡の辛味が良い意味でスープのジビエ感を強めます。
実際には臭みは感じられず、素材の良質さの伝わる猪でありますが、臭みを消すことに用いられる調味料を敢えて使用することで、「野性を喰らう一杯」という印象が加速的に高まって感じられます。
実際、この猪のラーメンを食べに来たお客さんの殆どは、食べ慣れない猪肉の野生的な表情を楽しみにしていると思います。
そしてそのニーズにズバッと剛速球を放ってくれるこの作品のアプローチに、なるほどこのお店らしい潔さ、気持ち良さを覚えるのです。
トッピングされた猪肉も美味でした。
しかも贅沢なことに、その量が多い、多い!!!!
着丼した瞬間に、肉が多いな~と思ったのですが、食べるとまた下からゴロゴロと・・・。
思わず顔がニヤケちゃいますよね(笑)
レバーと思われる部位は、レバーらしい旨味と癖を感じさせます。
しかしその力強い味わいにトッピングの餡が絶妙にマリアージュし、味わいの癖を色気へと変換します。
餡の力強い旨味がレバーの味わいを包容し、舌にゴロリと、喉にゴクリとその旨味に圧力と表情を加えます。
流石はこのお店の料理人様らしい、ラーメン以外の料理への精通具合が伝わるアレンジでありますね。
そして猪の赤身と思われる部位が・・・、めっちゃ美味い!!!!
これ、良質で新鮮なジビエであることを証明するような味わいですよ!!!!
箸を入れると、ほろほろっとその身を解く柔らかな質感に驚かされます。
そしてその味わいもしかり。
脂っぽさを無駄に感じさせずに赤身の旨味がしっとりと舌を包むのです。
肉らしい旨味に満ち溢れ、同時にべた付くことなくすっと口の中に馴染んでいくような味わい・・・
――これは美味い!!!!
猪のラーメンを食べるのは今回が二回目ですが(最初は別のお店の名物メニューで猪肉がトッピングされているのみのもの)、この作品はこれこそ限定ラーメンの強さを感じさせる一杯という内容でありました。
安定して提供しなくてはならないレギュラーメニューでは絶対に真似出来ない、瞬間最大風力的な風味の煌めきとライブ感、フレッシュ感がありました。
肉料理のスペシャリストと和食にも精通した包丁のスペシャリストを有するお店が良い猪を手に入れ、それがファンに向けたスペシャルな一杯として提供される・・・、その結果生まれた作品は、料理人と素材の本気の激突が、その味わいの向こう側に感じ取れるような、素材感と作家性、技巧美に満ち溢れた一杯であったのです。
麺は中太のストレート麺です。
餡のトロミを纏いながら、猪の肉の旨味を舌に転がし、もちっとした食感から穀物感を溢れさせます。
麺も猪スープにきちっと調和し、実に美味しかったです。
でもごめんなさい、ラーメンは間違いなく麺料理でありますが、今回の主役はやっぱり猪肉のトッピングと猪肉と骨によるスープにありました。
――だってこんなに貴重な経験、そうそうできるものではありませんから!!
これまでもこのお店には、様々な貴重食材を味あわせて頂いております。
そこには店主様の人柄が生み出した人脈、熱心なファンがいて、そのような方々の協力があったこともあるでしょう。
「鶏ガラより、豚ガラより、人柄」というラーメン屋さんの格言?があります。
その言葉の本質は材料よりも接客という意味ではなく、人柄によって全てがついてくるという意味だったのかもしれません。
今回の猪肉がどうかはわかりませんが、もしこれが仲間を通じた人脈により優先的に提供して貰うことができたものだったとしたら、突然これだけの良質な猪肉が入手できたことも理解できます。
一つのメニューに不器用に打ち込み続けるのも職人の姿ではありますが、新たな可能性に向けて常に新鮮な気持ちで全力を尽くし、同時に未来に向けて日々技を磨くのもまた職人の姿であります。
このお店の二人の料理人の方々は明らかに後者であると思いますが、こうした未来志向の方々が身近な存在としていることによって美味しいものに出会えることは、食の喜びだけではなく、自分自身の仕事への取り組み方にも良い影響を与えてくれます。
たった一杯のラーメンが、美味しい以上の教訓を授けてくれる・・・
この作品はまさに美食以上の存在でありました。
この作品に関わった皆さま、本当にありがとうございます!!!!
明日月曜日からの仕事に、いつも以上に頑張れる気がしています!!!!