【着物コラム】アンティーク着物は何故小さいのか?
こんにちは、着物コーディネーターさとです。
私は「アンティーク着物」と呼ばれる着物が好きです。
平たく言えば年代物の着物の事です。
こんな感じで、柄が大きかったり、色が派手な着物が多いです。
戦前の着物=アンティーク着物、戦後の着物=リサイクル着物
という呼び方が定着していたように思います。
が、最近はちょっとバラバラ、と言うか、
アンティーク着物は商品として分類すると「古物」「中古品」で、
「呉服」とはまた別なので、
あまり一定のルールがないのが現状かもしれません。
「アンティーク着物」という品名で販売されていても、
比較的新しい着物であるケースも多々あります。
この「年代物の着物」、サイズが小さい事が多いんです。
よく「昔の人は体格が小さかったから着物のサイズも小さい」と説明されるのですが、
日本人女性の身長って戦前・戦後でどのくらい違うと思いますか??
少し調べてみました。
他にも統計サイトは色々あったのですが、
今回は、1番信頼できそうな政府統計ポータルサイトの数字を見て比較してみました。
成人女性のデータは無かったので、17歳のデータを見てみました。
1番古いデータの1907年(明治40年)の時点で、身長が148.5cm
太平洋戦争開戦に1番近い年の存在するデータの1939年(昭和14年)は152.5cm、
終戦の年1945年(昭和20年)は流石にデータがないのですが、
1番近い1948年(昭和23年)は152.1cmです。
で1番最近のデータ、2015年だと157.9cmでした。
確かに、日本人女性の平均身長は高くなってきているのは事実のようですね!
しかし、戦前と戦後でそこまで開きもなく、
戦後から現代まで、5cm程度しか変化がありませんでした。
みなさんはどう思いましたか?
私はもっと差があると思っていたので、ちょっと意外でした。
統計を見ながら、私は自分の祖母の事をちょっと思い出していました。
母方の祖母は私と身長が同じくらいだったのですが、
随分前に貰った着物を着たら結構小さかったんですよね。
(鏡に映してるので左右が反転しています、すみません)
もらったときは特に何も思いませんでしたが、
着物って「身長±5センチくらいなら着られる」ってよく言うんですけど、
上記の身長データを鵜呑みにした上で、身長±5センチルールを適用したら、
「昔の着物が小さすぎるから、着るのが不可能」なんて事はないと思うんですよね。
しかし現実には、本当に不可能なくらい小さい着物も多いんですよ…笑
多分、説明しやすいから「身長差」が理由として挙げられるだけで、
実際はもう少し違う要因があるんだな、と私は感じました。
以前もnoteに載せたことがあった気もするのですが、
私の祖母の若い頃の写真です。
祖母は大正生まれなので、昭和20~30年の間くらいの写真かな?
と思うのですが、
写真館で撮影しているにも関わらず、着付けが結構ラフだと思いませんか?
自分で着付けをしたり、人に着付けてもらっている時に見ていた方は分かると思うのですが、
現代の着付けってタオルなどで補正をして、体をなるべく平面的にします。
あのスタイルが確立したのは、
恐らくタオルの量産がスタートした1960年代くらいからだと思うのですが、
(まだちゃんと調べてないので「仮説」です)
補正のタオルを入れないで、ラフに着付けをすると、もちろん仕上がりの形も変わりますよね。
現代の着物のサイズ展開って、
「なるべく平面的に仕上げる」スタイルの着付けにかなり特化していると思うんです。
身幅が大きいと襟も深く合わせられます。
身丈が大きいとおはしょりを織り上げてまっすぐに着付けができます。
その時代によって「是」とされている着物の着付け、
つまり見せ方に変化があったとも解釈できるのではないでしょうか?
手持ちの古書で調べてみたところ、
平成元年に京都きもの学院から出版された着付けのテキストでも、
おはしょりは地面に対して水平ではなく、
「舟底」と呼ばれる斜めのおはしょりでした。
同じような話をTwitterに投稿したところ、
フォロワーさんから「素材となる布の供給量の問題もあるのでは?」
とご指摘もいただきました。
確かに、紡績業の発展とも、きっと関連がありますよね。
まだちゃんと調べていないのですが、商業からの観点でも分析してみたいと思いました。
サイズ展開の変化ひとつでも、きっと色々な要因があるのだと思います。
「昔の人が小柄だったから着物もサイズが小さい」
それもきっと要因のひとつなのですが、
それだけで説明が完了するとは限らないんじゃないかな?と私は思います。
ファッションと社会はやっぱり関連が深いです。