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病室という社交場日記(田舎篇①)


出勤途中、足元をロープにとられ派手に転んで3週間。
人生3回目の入院生活は左大腿回答筋断裂および筋内出血という立派な病名と激しい痛みとともに始まった。

入院したのはの鹿児島県南端の地元にある整形外科病院。代替わりし、幼いころの記憶にあった古い灰色の建物は様変わりして、クリニックも併設され、清潔で軽快な雰囲気。

初日は2人部屋の回復室にひとり。急患、とはいえ家族の車で来院してきた比較的のんきな患者。
ボルタレンの服用に加えて座薬も効いたのか、固められた左脚は痛みも弱まり、前日の夜、寝不足気味だったこともあってか、入院初日は爆睡。

翌日、80代の女性が同室に入院。予定していた入院らしく(腰の圧迫骨折)、急性期の患者がなかったのか回復室は2日ほど静かな2人暮らし。(人口2万人弱の街。交通事故は年間50~60件程度)
土曜日の朝、師長と思しき方(ここでは看護師等の自己紹介がない)より、部屋替えを申し渡される。

車いすを押され、新居に入ると4つのベッド。
ニコニコした(70代Yさん)ご婦人と、ガリガリに痩せ細りベッドに転がっているおばあちゃんが、ぎょろりとした目でこちらを見ている。こんにちは~と言っても聞こえていないのか、。(90代Sさん)

テレビ付きのロッカーやら荷物を運んでもらい整えていると
もう一人の住人が戻ってこられ。自己紹介すると
「怪我したの?」
「若いのに大変ね」
「家はどこ」
など次々に質問が。不思議なことにこのご婦人(80代、Dさん)の質問責めは全く嫌みがなく、するすると素直に、聞かれていない実年齢まで答えた。
(久しぶりに若いのにと言われて気をよくした)

病室というのは異空間だ。
まったくの他人が、同じ寝間着を着せられ、手首にリストバンドをはめられ
同じ部屋で、同じものを同じ時間に食べて、同じ時間に寝る。
病状によっては(私も数日は)トイレも部屋の中でたす。
あ、牢屋ってこんな感じなのかな。(入ったことはないが)
そしてここは整形外科であるせいか、なんしかの機械などをつけたり、点滴をごろごろひいて歩いたり、という病状の方はおらず、せいぜい車いすか歩行器を使う程度。(私の部屋にいたっては、歩けないのは一番年若の私だけ)。イタイイタイと唸りまくる人もおらず、
そのせいか、みんな暇を持て余している。
それがまた、異空間感(牢獄感なのか?)を増している。

そしてこの異空間で繰り広げられるている日常がとても興味深く
退屈でしかたなはずの入院生活を、愉快なものにしてくれている。

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