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佐藤の指揮棒談義[入門編]

 佐藤でございます。先日はカルロス・クライバーの指揮棒について解説しましたが、そこでシャフトという言葉を繰り返し使っていました。しかしよく考えてみれば、シャフトってなんだよと思われてしまうこともあるのではないかと思いましたので、今回は指揮棒の基本的な部分を解説することにします。

構造

 指揮棒は一般的にグリップとシャフトの二つのパーツが組み合わされてできています。指揮棒の視覚効果を生む棒部分がシャフトで、握るなどする部分がグリップです。


 また、グリップとシャフトが一つの素材で作られた、つながった構造の指揮棒も存在します(例:PLAY WOOD BT-1W)。このタイプは数があまり多くなく、例外のように思われるかもしれませんが、そもそも指揮棒の変遷を調べるとこちらのタイプの指揮棒のほうが先にあったようです。

シャフト

 先ほども述べた通りシャフトは指揮棒における棒の部分です。
 この部分は視覚効果をより大きくするために、より見やすい白に塗られているといわれています。オペラなどでは奏者は暗い場所での指揮を見なければならないため、この必要性があるそうです。
 たいていの指揮棒は白く塗られているので、見分けるのは簡単ではありませんが、シャフトの材質は大きく次の3つに分けられます。

〇木(多くはメープル)
・木です。それ以上でもそれ以下でもありません。
・長いかな?と思ったときに簡単に長さが調節できるところが指揮者にやさしい点です。
・雑に扱うと曲がってしまうので注意が必要です。

〇グラスファイバー
・いわゆるガラス繊維を用いた繊維強化プラスチックです。傘や釣り竿にも使用されます。
・よくしなるので折れにくく、軽い素材です。
・折れにくいので長く使うことはできますが、縦に割れることもあります。割れても振ることはできますが、危険なので新しいものを買いましょう。

〇カーボングラファイト
・いわゆる黒鉛です。
・しなりにくいため、指揮のニュアンスがより素直に伝わるそうです。
・丈夫で折れにくく、長く使えます。
・が、とても高いです。場合によっては同じメーカーの木製の指揮棒が4本買えてしまいます。
・ので、私は持っていません。
・ちなみに私は、カーボングラファイトシャフトの棒を振っている指揮者は一人しか見たことがありません。

 以上がシャフトの主な素材です。グラスファイバーとカーボングラファイトは折れにくいことを売りにしているようですが、指揮棒は事故防止のために多少折れやすく作られているほうが望ましいといわれています。
 安くて安全なので、私は木製のシャフトを愛用していますし、購入を検討されている方にもこれをお勧めします。

グリップ

 グリップもシャフトと同様に、素材を3つに分けて紹介します。

〇木
・様々な種類の木が使われますが、見た目以外の差はほとんどありません。
・比較的重量があるものが多いため、グリップ側に重心のある棒になります。

〇コルク
・広義の木ですが区別します。
・木に比べて軽いので、シャフト側に重心のある棒になります。
・木よりも少し滑りにくいです。

〇プラスチック
・主にABS樹脂が用いられます。
・滑りやすい安物です。
・買わないほうが無難でしょう。

 市販の指揮棒でよく見るグリップは以上のとおりです。これら以外にも指揮者の好みによって改造された特殊なグリップなどもありますが、それは指揮者編で紹介します。

おわりに

 今回は指揮棒の基本的なつくりと材質について解説しました。今後の解説や、指揮棒購入の際の参考にしていただければ幸いです。

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