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|影山多栄子の小部屋|

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人形作家・影山多栄子が物語世界を旅しながら、共に時を刻んでゆく人形たちを発表します。
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#レース

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《1》|図書室の精霊

Text|KIRI to RIBBON  クレマチス・アーマンディの白い香気が過ぎ、花水木の開花と共に草花が煌めきを増す頃——鬱蒼の緑の奥にひとときひらかれる図書室があります。そこは一風変わった図書室。書物と一緒に、書物と暮らしてきた少女たちの営みが、レース模様に編まれて並んでいます。精霊たちも住んでいるようです。  1年の時を経て、ふたたび扉の前に立ちました。あの日と同じように、小鳥の囀りが聞こえてきます。  季節は巡り、様々な物事が移ろい、変化を余儀なくされる中、少女

レース模様の図書室、再訪|影山多栄子《2》|誰かのお人形、誰かの忘れ物

TextKIRI to RIBBON  雨の一日になりました。  図書室の菫色はいっそうグレイッシュに落ち着き、時間もゆったり流れています。いつも聞こえる少女たちの囁き声もなく、図書室には雨音だけが響いています。  少女たちのいない図書室を訪ねてみましょう。 * * *  英国文学の書架に置かれたままのお人形がありました。  いつ、誰が置いたのか、誰の持ち物なのか——ある時ひとりの司書が持ち主を探すべく、古い関係者にもあたって調査したことがありました。しかし、お

レース模様の図書室|影山多栄子さまのご紹介

影山多栄子 Taeko Kageyama | 人形作家 →Blog  山吉由利子(球体関節人形)、宮崎優人(市松人形)に人形制作を学ぶ。石粉粘土と布を中心に様々な素材を使い、ひとりひとり違うお話を感じさせるような可愛らしさと不思議さを持った人形作りを心がけています。 [個展]2003年 「うきわ」(ギャラリー古桑庵)、2004年 「まくら」ギャラリーNonc Platz。以後数年おきに個展を開催。ほか企画展、グループ展など多数。2007年創作人形専門誌「Doll Foru