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|影山多栄子の小部屋|

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人形作家・影山多栄子が物語世界を旅しながら、共に時を刻んでゆく人形たちを発表します。
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#熊谷めぐみ

影山多栄子《2》|月光菓子クッキーセット

*  都会の街で、屋根裏部屋に暮らす若く貧しい画家の青年。でも、子どもの頃からの友達である月が、世界中で見た光景を夜ごとに語ってくれるから孤独ではありません。ディケンズとも深い親交のあった作家アンデルセンが紡いだ『絵のない絵本』は、そんな美しく不思議な物語。  第三夜、月はある女性のことを少女の頃から見つめ続けていました。バラよりも輝く少女のきらめきは儚くも美しいものでした。  第十七夜、世界の色々な光景に見てきた月も、とびきりのおしゃれに喜びを隠せない少女の姿には、思

影山多栄子《1》|月光菓子ケーキセット

*  都会の街で、屋根裏部屋に暮らす若く貧しい画家の青年。でも、子どもの頃からの友達である月が、世界中で見た光景を夜ごとに語ってくれるから孤独ではありません。ディケンズとも深い親交のあった作家アンデルセンが紡いだ『絵のない絵本』は、そんな美しく不思議な物語。  第七夜、月が自然に囲まれた石の塚を見下ろしていると、たくさんの人が通りかかります。しかし、本当にその美しさを理解しているのは貧しく祈りに満ちた少女だけでした。  第九夜、月はグリーンランドに光を伸ばし、人と自然の

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《5》|アリスとアリシアの物語

 これは7歳の女の子アリス・レインバードがつくった物語。  むかしむかし、あるところに王さまと王妃さまがいました。二人には19人(7歳から7ヶ月まで)の子どもたちがいて、長女のアリシア姫がみんなの面倒をみていました。  ある日、お仕事に行く途中に、王さまは妖精のおばあさんに出会います。おばあさんは、王さまが買った鮭をアリシアに食べさせるように言い、その骨はぴかぴかに磨いて、正しい時に願えば、願い事を一つだけかなえてくれる魔法の魚の骨であるとアリシアに伝えるようにと告げます。

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《6》|可憐で不思議なクリスマスの光

 クリスマスを祝う人々であふれるロンドン。だが、人間嫌いで強欲なスクルージにとってクリスマスはくだらないものでしかない。あるクリスマス・イブの夜、スクルージの前に七年前に死んだはずの相棒マーレイの亡霊が現れる。そしてマーレイの予告通り、過去・現在・未来の三人のクリスマスの精霊がスクルージのもとを訪れる。 *  クリスマスなんてくだらない! そう言ってクリスマスを、そしてクリスマスを祝う人々を強く拒絶するスクルージ。一方、ロンドンの街では、人々が、クリスマスの歓びを家族や大

二人展《空はシトリン》|影山多栄子&永井健一|誰もが一人の

 本記事では、影山多栄子と永井健一が、宮沢賢治の詩「春と修羅」をテーマに創作した4点の作品を紹介する。  自由な想像と創造の世界。両作家の感性を具現化する力には圧倒される。それぞれの個性にふれて、賢治の詩の世界にひたりたい。  気高さの中に反骨心を秘めた挑むようなまなざし。仕立ての良い服は身分の高さと揺るがない個性を示している。作家が「春と修羅」の詩から創り出したのは、意志の強さと繊細さが同居する孤高の王子。  表情に滲む余裕は、まだ本当の意味で世界を知らない恐れ知らず

二人展《空はシトリン》|DAY 2

本記事はオンライン展覧会《空はシトリン》DAY 2の配信記録です。明日8/2は配信お休みとなります。 Text霧とリボン  酷暑が続いていますが、皆様、お健やかにお過ごしでしょうか。水分補給をされながら、どうぞくれぐれもお気をつけてお暮らし下さいませ。  私たちの「観て読む」夏フェス、影山多栄子 & 永井健一 二人展DAY 2——本日も麗しのシトリン団が堂々と菫色のステージを飾りました。オンライン展覧会をお楽しみ下さいました皆様に深く感謝申し上げます。  本日最初のス

二人展《空はシトリン》|影山多栄子|穏やかな肯定

 本記事では、『春と修羅』の世界を縦横無尽に読み解きながらも、詩にとらわれすぎることなく、作家独自の視点が優しくきらめく4作品を紹介する。  どうやら丁寧に育まれた作品のひとつひとつから、また新しい物語が生まれているようだ。ちょっとだけ、覗いてみてみよう。  詩の世界からこの世に降り立ったのは、気高きナチラナトラのひいさま。二本のとがった耳と優美な羽根をもち、ふわりくるりと不思議へ誘う。  しゅっと真っ直ぐに伸びた脚もうるわしい。うっとりと浸っているうちに、夢の中に招か

二人展《空はシトリン》|DAY 4

本記事はオンライン展覧会《空はシトリン》DAY 4最終日の配信記録です。 Text霧とリボン  私たちの「観て読む」夏フェス、影山多栄子&永井健一 二人展は、本日をもって4日間の会期を無事終了致しました。  菫色のステージを鮮やかに過ったシトリン色の新しい風。お楽しみ頂けましたでしょうか。  フロントロウから、あるいは遠くからこっそりと、絵画と人形、エッセイが明滅する舞台をご高覧下さいました皆様に心より深く御礼申し上げます。皆様の静かな熱狂がここMAUVE CABINE