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|影山多栄子の小部屋|

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人形作家・影山多栄子が物語世界を旅しながら、共に時を刻んでゆく人形たちを発表します。
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2022年7月の記事一覧

二人展《空はシトリン》|巻頭エッセイ|森 大那|曲がり角へと歩いてゆくだけ

 宮沢賢治は鈍い。それは彼の武器だった。  これまで宮沢賢治は、その作品群が無数の観点から読解されてきた。のみならず、遺された膨大なテクストは後世の人々の創造の源泉となり、あらゆる芸術ジャンルで派生作品が創られている。  彼に匹敵するほどのフォロワーを生み出せた作家は世界規模でも例がほぼ見当たらず、わずかにアメリカのエドガー・アラン・ポーが思い浮かぶだけだ。  しかしそれは、彼が時代のなかで先進的であろうとしたからではなかった。反対に古くあろうとしたのでもなかった。  宮沢

二人展《空はシトリン》|永井健一&影山多栄子|春から生まれしもの

 初夏は幻のように過ぎ去り——まるで生きとし生けるものすべてがじっとわたしたちを見つめているような暑さのなか、本展は幕を上げる。  この熱暑はまぎれもなく、今は遠き〈春〉が産み落としたものである。春は、冬の間ねむっていた生命がいちどきに噴出する季節であって、そこで生まれた命は一直線に、だが静かに夏へと向かってゆく。  本展メインヴィジュアルのひとつ《私の知らない林》に描かれている、煙る記憶のなかに通り過ぎる子どもたち。その幻想は、汽車の窓から眺める景色のように、あっという

二人展《空はシトリン》|永井健一|光彩を纏う空

 淡い色合いを用い、風景にきらめく生命の瞬きを描く永井健一さまの作品が、宮沢賢治の詩群と溶け合います。  最初の作品は、企画展のタイトルともなった「空はシトリン」が含まれた詩に捧げる一作。何度も口ずさみたくなるような繰り返しによるリズムが楽しくもせつないこの詩を、絵画の中の幾層もの重なりが連想させます。  シトリンが降り注ぐ空。地平線が幾重にも交わり、すれ違い、繰り返していく。動物、人間、植物がそれぞれ運命に揺れながら生きる。それぞれ異なる地平を生きながらも、安らぎに満ち

二人展《空はシトリン》|DAY 1

本記事はオンライン展覧会《空はシトリン》DAY 1の配信記録です。 Text|霧とリボン  コントラストの強い陰影が空気を刻む盛夏の頃、翻って菫色の小部屋には、霧けぶる淡やかな色彩世界が広がっています。  私たちの夏フェス、影山多栄子 & 永井健一 二人展「空はシトリン〜宮沢賢治『春と修羅』に寄せて」が本日開幕致しました。初日の今日、オンライン・ギャラリーを訪れて下さいました皆様に厚く御礼申し上げます。  霧とリボンで長くご活躍頂いてきた二人のアーティストが『春と修羅』

影山多栄子 & 永井健一二人展《空はシトリン》 |展覧会のご案内

オンライン開催 at MAUVE CABINET * 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません  無国籍な美意識と民芸の伝統が交差する人形作家・影山多栄子さまと、鉱物的感性で人物や事象を夢想する画家・永井健一さま。宮沢賢治『春と修羅』から着想した、具象と抽象が明滅するふたりの作品世界をお届けします。  人形作品全20点、絵画作品全16点に加えて、ポプリブランド・Du Vert au Violetを交えた3組のコラボレーション作品1種(限定数販売)をお披露

影山多栄子 & 永井健一二人展《空はシトリン》 |開催方法と作品販売

オンライン開催 at MAUVE CABINET 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません 霧とリボン 実店舗「Private Cabinet」に作品を展示、会場の様子や各作品の紹介を写真と文章で、会期中、ここMAUVE CABINET(note)にてオンライン配信、アーティスト作品を順番にご紹介します(8/2休)。尚、配信予定の事前告知は行っておりません。会期当日、霧とリボン ツイッターにてお知らせします。 [お昼頃]霧とリボン ツイッターにてその日