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|熊谷めぐみの小部屋|ART & ESSAY

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ディケンズの小説を題材に、気鋭のアーティスト達が作品を制作。熊谷めぐみによる小説案内、作品紹介エッセイとの競演により、ディケンズと現代作家が時を超えて出会います。
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#クリスマス

熊谷めぐみ & 横井まい子|ART & ESSAY《10》|螺旋にとらわれて

 貧乏な田舎牧師の娘として生まれた、若い女性である「私」は、マイルズとフローラという幼い兄妹の家庭教師の仕事を得る。不安を押し切り屋敷に赴いた「私」は、兄妹の美しさに魔法にかかったように魅了される。家政婦のグロースの協力も得て、「私」の仕事は順調に見えた。ある日、幽霊の姿を見るまでは。  ヘンリー・ジェイムズが書いた『ねじの回転』は様々な解釈を許容する。作品のほとんどを占めるのは、家庭教師である「私」の一人称の語りである。若く、美しく、雇い主に憧れを抱きながらも、大きな不安

熊谷めぐみ & 優|ART & ESSAY《9》|美しき兄妹

 貧乏な田舎牧師の娘として生まれた、若い女性である「私」は、マイルズとフローラという幼い兄妹の家庭教師の仕事を得る。不安を押し切り屋敷に赴いた「私」は、兄妹の美しさに魔法にかかったように魅了される。家政婦のグロースの協力も得て、「私」の仕事は順調に見えた。ある日、幽霊の姿を見るまでは。  『ねじの回転』は1898年に発表されたヘンリー・ジェイムズによる小説。田舎から出てきた若い女性が、後に雇い主となる紳士に憧れの気持ちを抱き、エセックスにあるお屋敷で、彼の甥と姪にあたる少年

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《6》|可憐で不思議なクリスマスの光

 クリスマスを祝う人々であふれるロンドン。だが、人間嫌いで強欲なスクルージにとってクリスマスはくだらないものでしかない。あるクリスマス・イブの夜、スクルージの前に七年前に死んだはずの相棒マーレイの亡霊が現れる。そしてマーレイの予告通り、過去・現在・未来の三人のクリスマスの精霊がスクルージのもとを訪れる。 *  クリスマスなんてくだらない! そう言ってクリスマスを、そしてクリスマスを祝う人々を強く拒絶するスクルージ。一方、ロンドンの街では、人々が、クリスマスの歓びを家族や大

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《5》|アリスとアリシアの物語

 これは7歳の女の子アリス・レインバードがつくった物語。  むかしむかし、あるところに王さまと王妃さまがいました。二人には19人(7歳から7ヶ月まで)の子どもたちがいて、長女のアリシア姫がみんなの面倒をみていました。  ある日、お仕事に行く途中に、王さまは妖精のおばあさんに出会います。おばあさんは、王さまが買った鮭をアリシアに食べさせるように言い、その骨はぴかぴかに磨いて、正しい時に願えば、願い事を一つだけかなえてくれる魔法の魚の骨であるとアリシアに伝えるようにと告げます。

ART & ESSAY《2》|熊谷めぐみ & 横井まい子|記憶の引き出し

Text|熊谷めぐみ  クリスマスを祝う人々であふれるロンドン。だが、人間嫌いで強欲なスクルージにとってクリスマスはくだらないものでしかない。あるクリスマス・イブの夜、スクルージの前に七年前に死んだはずの相棒マーレイの亡霊が現れる。そしてマーレイの予告通り、過去・現在・未来の三人のクリスマスの精霊がスクルージのもとを訪れる。  クリスマス、それは奇跡が起こる季節。クリスマスを毛嫌いするスクルージにも、ある奇跡が忍び寄っていた。  スクルージを知る誰もが、彼のことを心の冷

ART & ESSAY《1》|熊谷めぐみ & 横井まい子|幸せがそよぐ季節

Text|熊谷めぐみ  「チャールズ・ディケンズ&ヴィクトリア朝文化研究室」として活動中のモーヴ街5番地・サティス荘。本イベントより新たに「ART & ESSAY」のシリーズがスタートします。  気鋭のアーティストを迎え、ディケンズの小説を題材にした作品を発表。小説のあらすじと小説案内、アート作品解説を熊谷めぐみが担当いたします。  記念すべき初回は、画家・横井まい子様を迎え、ディケンズの二つの小説をテーマに繊細を極める美しい水彩画をお披露目します。  クリスマスの時期、